
精神の不調が続いて、うつ病や双極性障害と診断されると、どうしても頭をよぎる言葉があります。
「これって本当に病気なのかな?」
「自分が弱いだけ、甘えているだけなんじゃないか?」
そして、障害年金の制度を知ったときにも、同じ気持ちが顔を出します。
「自分なんかまだマシな方だし、こんな程度で障害年金なんて請求したら、甘えていると思われないだろうか?」
このブログを書いている私は、春日井市を拠点に愛知県全域で障害年金請求を専門にしている社会保険労務士の渡邊智宏(わたなべ ともひろ)と申します。
そして、もうひとつ大切なことがあります。
私は自分自身、双極性障害(躁うつ病)を経験し、現在も障害厚生年金3級を受給しています。
- 仕事がまったくできないというわけではありません。
- 「全く動けない」という一番ひどい時期は、正直なところ、峠を越えています。
- 今は、良い日も悪い日もある「波のある状態」です。
- 仕事はしていますが、仕事量は意識してセーブしています。
- そして、日常生活のいろいろな場面で、家族に助けてもらいながら暮らしています。
そんな状況で、医師としっかり意思疎通し、生活の実態がきちんと伝わるように工夫しながら、障害厚生年金3級の受給が認められている、そんな立場です。
この記事では、「自分は甘えているだけでは?」と迷っているあなたに向けて、
- なぜ「甘えだ」と思ってしまうのか
- 障害年金の基準は、どこをどう見ているのか
- 「一番ひどい時期」を過ぎても、なぜ対象になり得るのか
- 実際に双極性障害の社労士である私が、どのような状態で3級を受給しているのか
- どうやって医師に実態を伝え、診断書に落とし込んでいるのか
を、できるだけ正直にお話ししていきます。
なぜ「甘えでは?」と思ってしまうのかーー真面目な人ほど陥るワナ
まず、「甘えでは?」という感覚そのものを、少し分解してみましょう。
日本的な“我慢文化”の中で育ってきた私たち
日本には、
- 「みんな頑張っている」
- 「人に迷惑をかけてはいけない」
- 「我慢することが美徳」
という価値観が、かなり強く根づいています。
学校や職場でも、
- 多少しんどくても頑張る人
- 弱音を吐かない人
の方が「えらい」とされがちです。
そんな中で、うつ病や双極性障害のような“見えにくい病気”になると、どうしても自分を厳しく評価してしまいます。
「周りの人だって大変なのに、自分だけ休んでいいのか」
「病気だと言っても、立って歩けるじゃないか」
「もっとひどい人がいるのに、自分なんて…」
こうして、病気の影響と、自分の性格や努力不足がごちゃごちゃになってしまうのです。
「できるときがある」ということが、逆に自分を苦しめる
うつ病や双極性障害には、「波」があります。
- どん底のような時期もあれば、
- そこから少し回復して、「まあまあ動ける日」も出てくる。
この「まあまあ動ける日」があることが、実はやっかいです。
調子の良い日にある程度動けてしまうと、逆に調子の悪い日に動けない自分に対して、「あの日はできたのだから、本当はできるはずだ」「今日はサボっているだけなのでは」と、どんどん自分を責めてしまいます。
でも、障害年金の世界では、「できる日が一切ない」という状態だけが対象ではありません。
むしろ、
- 日によってできたりできなかったりする
- 波が激しくて、生活や仕事が安定しない
という状態も、きちんと評価されるべき「障害の状態」です。
障害年金の視点:「一番ひどい時期」だけが判断材料ではない
次に、障害年金の考え方を、ざっくり整理してみましょう。
よくある誤解:「一番ひどかった時期は過ぎたから、自分は対象外」
ご相談を受けていると、よくこんな声を聞きます。
「前は本当に何もできなかったんですけど、今は多少は動けるようになったので、もう対象外ですよね?」「寝込んでばかりの時期は終わったし、不調は残っているけれど、障害年金までは考えなくていいかな…と思ってしまいます。」
たしかに、
- 初診から現在までの経過
- 一番ひどかった時期
は、障害年金の診断書でも大事なポイントです。
でも、それだけで決まるわけではありません。
今もどれだけ生活・仕事に支障が残っているか
障害年金で見られるのは、
「過去にどれだけつらかったか」だけでなく、「今もどれだけ生活に支障が残っているか」
です。
具体的には、
- 体調の波が大きくて、生活リズムが安定しない
- 調子の悪い日は、ほとんど寝て過ごすしかない
- 家事・買い物・金銭管理など、日常生活のいろいろな場面で、人の助けを借りている
- 働いてはいるが、仕事量をかなりセーブしていないと続けられない
といった部分が、今でも続いているかどうかが重要です。
「寛解」ではなく、「波がありながらなんとかやっている状態」も評価の対象
完全に症状が消えて、薬もほとんど要らなくなり、生活も仕事も、ほぼ支障なく回るようになっている。
ここまで行けば、たしかに障害年金の対象から外れていく可能性が高いでしょう。
ですが、
- 一番ひどい時期よりはマシになった
- でも、波があり、調子の悪い日は今もかなりつらい
- 日常生活や仕事は、「工夫」と「周囲の支え」があってやっと成り立っている
という状態は、まだ「障害の状態」が続いていると評価されることが多いのです。
ケーススタディ:双極性障害の社労士が3級を受給している現状
ここで、少し具体的に、私自身のケースをお話します。
私の今の状態
冒頭でも少し触れましたが、あらためて整理すると、私は今こういう状態です。
- 仕事が全くできない、というわけではありません。
→ 社会保険労務士として、障害年金の相談・請求を業として行っています。 - 「全く動けない」「ベッドから一歩も出られない」という一番ひどい時期は、たしかに峠を越えたと感じています。
- しかし、今も良い日と悪い日の波がはっきりあります。
特に、
- 調子の悪い日は、
→ 頭も身体も重く、横になって過ごす時間が長くなります。
日常生活のいろいろな場面で、
→ 家族に助けてもらっている部分が、少なくありません。 - 仕事についても、
→ 元気なときの自分ならこなせるであろう量よりも、あえて仕事量をセーブしています。
→ 無理をすると、そのあと数日〜一週間、体調がガタッと崩れるからです。
プラスの要因と、「それでも受給している理由」
こう書くと、
「いや、それでも仕事してるんですよね?」
「一番ひどい時期は過ぎているなら、もういいんじゃないですか?」
と思われる方もいるかもしれません。
たしかに、
- 完全に動けないわけではない
- 仕事もしている
- 一番酷い時期は過ぎている
という点だけを見ると、プラスの要因に見えます。
でも、障害年金の判断はそこだけではありません。
私の場合、
- 調子の悪い日は、生活そのものがかなり制限される
- 家事・生活面で、家族の支えがなければ維持できない部分がある
- 仕事量を無理に増やすと、体調が大きく崩れて、長く休まざるを得なくなる
といった「マイナスの要因」が、いまだにはっきりと存在しているのです。
マイナスの要因を考えれば、十分に障害年金の対象になり得るのです。
そこで、障害年金を受給するためにやっているのは
こうしたプラスとマイナス両方の要素を、主治医にしっかり伝え、診断書に落とし込んでもらっている
という点です。
たとえば診察では、
- 「仕事はしていますが、量をかなり抑えています」
- 「調子が悪い日は、一日中横になっていることもあります」
- 「家のことは、これこれこういう部分を家族に手伝ってもらっています」
というように、「できている面」と「できていない面」の両方を具体的に話すようにしています。
そのうえで、医師が診断書に、
- 日常生活能力の項目ごとの評価
- 波の幅
- 支援がないと難しい部分
を反映してくださっているからこそ、障害厚生年金3級の受給につながっている、というのが実情です。
ここからお伝えしたいこと
この話から、私がお伝えしたいのは一つです。
「完全に動けない」「ずっと寝たきり」でなければ、障害年金の対象にならない、というわけではない。
- 仕事が少しでもできる
- 一番ひどい時期は過ぎた
- 日によっては、普通に見えることもある
そんな状態でも、
- 体調の波が大きく、調子の悪い日のダメージが大きい
- 日常生活のあちこちで、家族や周囲の支えがないと成り立たない
- 無理をするとガクッと崩れてしまう
といった現実があるなら、
それは十分、障害年金を「考えていいライン」にいる可能性が高いのです。
「自分は対象か?」を考えるためのチェックポイント
では、実際に「自分はどうだろう?」と考えるときの目安を、いくつか挙げてみます。
これは「これに当てはまれば必ず受給」というものではありませんが、複数当てはまるなら、一度は相談してほしいサインと考えてください。
1. 体調の波で、月のうちかなりの日数が制限されている
- 「この日はまったく動けなかった」という日が、月に何日もある
- その日はいわゆる「寝て過ごすしかない」状態になってしまう
2. 仕事の量や質を落としている
- 元気な時と同じようには働けなくなった
- 仕事の日はなんとか気合で出勤する
- その反動で、翌日以降何日も動けない
- 結果として、生活全体が「働く日」と「倒れる日」の繰り返しになっている
3. 家事や日常生活が、波によって全くできない日がある
- 買い物・料理・洗濯・掃除などが、悪い日にはほとんどできない
- その影響で、
- 食事が極端に偏る
- 部屋が荒れ放題になる
- 洗濯物が溜まり続ける
4. 予定や約束を、体調不良でキャンセルせざるを得ないことが多い
- 病院、友人との約束、仕事の予定などを、
体調の悪化で直前キャンセルしてしまうことが頻繁にある - それに対して、強い自己嫌悪や罪悪感を感じている
5. 「この状態がいつまで続くのか分からない」不安が強い
- 良い日があっても、「またすぐ落ちるのでは」と不安になる
- 将来の生活や仕事のイメージが持てず、常にどこか不安を抱えている
これらが「全部当てはまらないとダメ」というわけではありません。
ただ、
3つ以上当てはまるようであれば、
一度、障害年金という制度について話を聞いてみてもいいライン
にいるのではないか、と私は思います。
よくある「請求をやめてしまう理由」と、その裏側にある誤解
ここまで読んで、「ひょっとして、自分も対象かもしれない」と感じた方もいるかもしれません。
一方で、同時にこんな気持ちも出てくると思います。
- 「いや、自分よりもっと大変な人がいる…」
- 「枠を取ってしまったら申し訳ない」
- 「障害年金なんて、まだ早いんじゃないか」
「もっと重い人に悪い」という考え方
障害年金は、「困っている人を支えるための制度」です。
誰かが受給したら、誰か別の人の枠がなくなる、という“椅子取りゲーム”ではありません。
あなたが困っていることと、あなたに利用する権利のある制度かどうかは、本来は別の問題です。
「もっとひどい人がいるから、私は我慢すべき」という考え方で、自分を追い込まないでほしいな、と思います。
「一生もらい続けてしまうのが怖い」
これもよく聞くお気持ちです。
- 「もらい始めたら、一生抜け出せなくなりそう」
- 「復帰したくても、障害年金をもらっていることでブレーキになりそう」
ただ、実際の制度としては、
- 障害年金には「更新」があります。
- 一生固定ではなく、状態に応じて見直されていく仕組みです。
良くなったら見直される。
悪くなったら、また必要な支援を考える。
本来はそれくらい柔らかく、「その時その時の状態を支えるための制度」として考えてよいのです。
「請求したら、『もう働けない人』と決めつけられそう」
障害年金を請求する=「もう働かない」と宣言すること、だと思われている方もいます。
でも、本来の考え方は逆で、「治療や生活を支えながら、可能な範囲で働けるようにするための制度」という位置づけです。
- 働きながら受給している人もいます(私自身もその一人です)。
- 大事なのは、今の自分の体調と生活にとって、無理のないバランスを取ることです。
実際に障害年金を考えるときのステップ
「じゃあ、自分も一度考えてみようかな」と思ったとき、いきなり請求!…ではなく、まず「相談」と「整理」からで大丈夫です。
ステップ1:自分の状態をメモしてみる
いきなり完璧な記録でなくて構いません。
- 良い日と悪い日の違い
- 調子の悪い日にできないこと
- 家族に手伝ってもらっていること
などを、ざっくり書き出してみてください。
ステップ2:主治医と話してみる
診察のときに、勇気が要るかもしれませんが、「障害年金という制度があると聞いたのですが、今の自分の状態について、先生はどうお考えですか?」
と聞いてみてください。
その際、
- 「仕事が全くできないわけではないこと」
- 「一番酷い時期は過ぎたと思うこと」
- その一方で、
- 悪い日は寝て過ごすしかないこと
- 家族の支えがないと生活が回らない部分があること
- 仕事量をセーブしてなんとか続けていること
も、具体的に伝えてみてほしいのです。
ステップ3:社労士に相談してみる
そして、もし可能であれば、障害年金を専門にしている社労士に相談してみてください。
- 初診日や加入歴の整理
- 今の状態が制度上どう評価される可能性があるか
- 主治医にどう伝えればよいか
などを、一緒に整理していくことができます。
相談したからといって、必ず請求しなければならないわけではありません。
「やめておく」という選択も含めて、一緒に考えるための場だと思っていただければと思います。
「甘えかどうか」ではなく「どう生き延びるか」で考えてほしい
最後に、いち当事者であり社労士でもある私から、一番お伝えしたいことを。
障害年金を考えるときに、
「甘えかどうか」という物差しだけで自分を測らないでほしい。
- 仕事が全くできないわけではない
- 一番ひどい時期は過ぎた
- 良い日も悪い日もある
その状態で、私自身は今、障害厚生年金3級を受給しています。
これは、
- 私が特別「甘え上手」だからでもなく、
- 逆に、特別「重い」からでもありません。
自分の「できること」と「できないこと」、「支えがあればできること」と「支えがあっても難しいこと」を、主治医ときちんと共有し、それが診断書に反映されているからです。
あなたにも同じように、
- 自分を責めるためではなく、
- これから生活と治療を続けていくための「手段」として、
障害年金という制度を検討してみてほしいな、と思います。
春日井市・名古屋市、その他愛知県で「甘えかどうか」で悩んでいる方へ
もしあなたが今、
- 「自分はまだ軽い方だし…」とブレーキを踏んでしまっている
- 「一番ひどい時期は過ぎたから、もう考えなくていい」と自分に言い聞かせている
- 「甘えと思われるのが怖くて、誰にも相談できていない」
そんな状況なら、一度、あなたのお話を聞かせてください。
私は、春日井市を拠点に、愛知県全域からのご相談をお受けしています。
- 双極性障害(躁うつ病)を経験している当事者として
- 障害厚生年金3級を実際に受給している立場として
- そして、障害年金請求を専門としている社労士として
あなたの「甘えかどうか」という悩みを、「どうやってこれから生き延びるか」を一緒に考える材料に変えていければと思います。
請求するかどうかは、そのあとでゆっくり決めれば大丈夫です。
まずは一度、相談という形でお話ししてみませんか。

愛知県(名古屋・春日井等)を拠点に、岐阜・三重を含む地域で障害年金の請求をお手伝いしている社会保険労務士の渡邊智宏です。自身がそううつ病を経験したことから、病気による生きづらさや不安にも自然と目が向きます。その経験を活かし、一人ひとりの事情に耳を傾けながら、障害年金の手続きをサポートしています。初回の出張相談は無料ですので、「よくわからない」「不安がある」という方も、どうぞ気軽にご相談ください。

