障害年金の受給要件

○障害年金の基本的な考え方

・実は年金は「保険」制度

普段あまり意識した事がないかもしれませんが、障害年金に限らず、年金制度というのは「保険」制度なのです。生命保険や自動車の損害保険などと基本的な仕組みは同じです。公的な保険でもあるので、一般の保険とは少し違うところもあります。が、普段から保険料を支払って「いざという時」に備え、何か問題が起こったとき、いわゆる「保険事故」が起こってしまったとき保険金が支払われるという仕組みは変わりません。年金制度における保険事故、「いざという時」というのが、

  • 歳をとってしまって働けなくなってしまった状態
  • 配偶者が亡くなってしまって生活が立ちゆかなくなってしまった状態
  • 病気や怪我などの障害を負ってしまった状態

の3つなのです。

障害年金は三つ目の「いざという時」に支払われる保険という事になります。

 

・保険の種類や支払状況はどうなっているの?

基本的な考え方は「保険制度」という事はお分かりいただけたと思います。

ですから、

  1. どの保険に加入していたのか
  2. ちゃんと保険料を支払っていたか
  3. 保険がおりる程の状態なのか

という3つの事柄を確認すれば障害年金が受給されるかどうかが解るという事になります。

この中で、①の「加入していた保険の種類」と、②の「保険料の支払い」についてがちょっと複雑です。

年金にも種類があり、サラリーマンなどが加入する国民年金や、自営業の方などが加入する国民年金などがあります。年金の種類により、もらえる金額などが異なってくるため、どの年金が適用されるかは、とても重要になってきます。

例えば、サラリーマンだったAさんが、脱サラして自営業になった場合を考えてみましょう。サラリーマンであれば基本的に厚生年金に加入しています。一方、自営業の場合は国民年金になります。サラリーマン時代は、給料天引きで保険料は支払われていますが、自営業となると自分で納付しなければなりません。もしかすると自営業の時に保険料の支払いが滞っていた時期があるかも知れません。さて、このAさんの場合、①適用される保険は何なのか、②保険料の支払いはどうだったのか、をどう判断するのでしょうか。

ここで判断の基準となるのが「初診日」です。

 

・初診日が全てのキー

初診日とは、障害の原因となった病気や怪我について、初めて医療機関を受診した日の事をいいます。今まで見てきた、①どの保険を適用するのか、②保険料の支払いはどう判断するのかなどの基準となるのが初診日です。

まず、①のどの保険なのか、という点については、初診日において加入していた保険制度を適用する事になります。先ほどのAさんの場合、初めて病院にかかったのがサラリーマン時代だったとします。そうすると、今は自営業で国民年金加入中であっても、適用される障害年金は厚生年金という事になるのです。

②の保険料が払われていたかどうかをどう判断するのか、についても初診日が基準になります。厳密に言うと、初診日の前日の時点において判断します。初診日の前日の時点までの保険料の支払い状況を見ますので、初診日以降支払が滞っていても、障害年金が支給される可能性があるのです。Aさんの場合、脱サラ後、保険料が一時滞っていましたが、初診日がサラリーマン時代であれば、その前日時点まではしっかりとお給料から天引きされているので、支払はOKとなる可能性が高いという事になるのです。

では、初診日の前日時点において、どれくらい保険料を支払っていればよいのでしょうか。1回でも滞ったらアウトなのでしょうか。

ここで、ちょっと厳密な話をします。保険料の支払いの条件は、次の2つの条件のうちどちらかを満たせばよい、となっています。

  • a.初診日の属する日の前々月までの期間の被保険者期間のうち、保険料納付済み期間と免除期間を合計した期間が3分の2以上あること
  • b.初診日の属する月の前々月までの1年間に保険料未納期間がない

aが原則で、bは特例措置です。ですので、bは適用される期間が決まっていて、平成38年4月1日までとなっています。

ちょっと解りにくいですので、ざっくりと目安を言います。aは、全体の3分の2以上保険料を支払っていたらOKという事です。bは、直近1年間支払漏れがなければよいですよ、という事になります。ただし、この表現は厳密ではありません。あくまで目安です。しっかりと年金記録を参照して確認を取ることを忘れないで下さい。

 

・障害の程度は?

最後に、③障害の等級に該当するのか、という点について見ていきます。

実は、ここでもまた初診日が出てきます。

病気や怪我をしたその時点で判断するのではなく、少し経過を見てから判断する事になるのです。判断する日の事を「障害認定日」と言います。障害認定日は、初診日から1年6ヶ月経過した日の事を言います。病気になってから1年6ヶ月ではなく、初診日から1年6ヶ月というところを注意して下さい。病気になったと思っても、しばらく病院に行かなかった場合、それだけ年金が支給される日が遅くなるという事です。

又、この障害認定日にも例外規定があります。例えば、手足を切断した場合や心臓のペースメーカーの装着など、経過を見なくても解るケースは、その日が障害認定日になります。人工透析を開始した場合は、3ヶ月後が障害認定日になります。脳梗塞などの脳血管疾患の場合は、6ヶ月経過後、医学的に見て症状がそれ以上変わらないと認められた場合は、その日が障害認定日となります。

この様に、障害認定日と言ってもいろいろと例外がありますので注意する必要があります。

障害の程度を見る時期が解りました。それでは、どれくらいの障害があれば年金がもらえるようになるのでしょうか。

これについては、それぞれの病気や怪我について細かく「障害認定基準」というもので定められています。ここで全部お話しする事は難しいので、基本的事項をお話しします。

まず、障害年金には等級というものがあり、それにより支給される金額が異なってきます。

自営業の方などが加入する国民年金の場合は、1級と2級があります。サラリーマンの方が加入する厚生年金ではこれに加えて3級があります。1級が一番重症で、3級が一番軽い障害という事になります。

それでは、それぞれの等級はどのように決まるのでしょうか。

法律的には、

  • 1級 身体機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
  • 2級 身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるかまたは日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
  • 3級 傷病が治らないで、労働が著しい制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする程度のもの

となっています。

もう少し具体的に見ていきますと、1級の場合は、一人で日常生活を送る事が全くできない状態の事を言い、入院していて寝たきりのような状態をイメージして下さい。

2級の場合は、日常生活をひとりで送る事がかなり困難で、簡単な作業しか出来ない程度の状況です。又、労働によって収入を得られない程度の状態でもあります。

3級は、日常生活はなんとかこなせるが、仕事に支障が出ているような状況です。

非常に簡略化したイメージで言うならば、1級は寝たきり、2級は車いす、3級は杖をついている、そんなイメージです。

ただし、それぞれの病気、怪我について細かく規程があり、検査数値などの判定基準もありますので、詳しくはお問い合わせ下さい。

この様に、障害年金が受給できるかどうかには、複雑な条件がありますが、

  • 初診日がしっかり解っているか
  • 初診日の全日の時点までに保険料をある程度支払っていたか
  • 初診日から1年6ヶ月以上経過しているか
  • 障害等級に該当するくらいの障害の状態にあるか

と言ったところが基本になりますので、目安にして下さい。

 

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