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精神障害認定のガイドラインってどんなの?(2)

2016-07-28

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前回は、診断書裏面に記載される「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」という2つの項目を数値化したうえで、それを表に当てはめて等級判定の目安とする表について解説しました。ただし、この表だけで等級が決まってしまうのでは、個別の事情が全く反映されず、かえって不公平になってしまう事が考えられます。
そこで、今回は、この表以外に考慮すべき点として例示されているものがありますので、就労関係を中心にそれらを見ていきたいと思います。



◆考慮すべき要素とは

まず、考慮すべき要素の例として、以下の5つの項目が示されています。
①現在の病状又は状態像
②療養状況
③生活環境
④就労状況
⑤その他


この中で、④の「就労状況」は、障害年金の請求を考えている人にとってはとても関心の高い事項だと思いますので、今回は④の就労状況で考慮すべき要素について詳しく見ていきたいと思います。



◆仕事場で受けている支援について

まず、大切な事として、「労働に従事している事をもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず」とあり、働いている場合でも、「仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況」などを考慮する事になっています。

実際に就労している場合については、「その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する」事となっています。障害年金の請求に当たって、実際に働いているから諦める、というのではなく、どのような援助や配慮を受けているかを洗い出し、それをしっかりと申し立てる事が重要になります。



◆就労支援や障害者雇用で就労している場合

又、特筆すべき点として、就労支援A型・B型及び障害者雇用制度による就労については、1級又は2級の可能性を検討する、就労移行支援についても同様とする、とあります。

実際の就労があっても、それが就労移行支援制度や障害者雇用である場合には1、2級の可能性がある事が示されています。
実際には障害者雇用でなかったとしても、それに準じたような支援、配慮がされている場合は、それをしっかりと申し立てる事が大切です。単に就労をしているという事実だけをもって3級や下手をしたら等級不該当とされてしまうものが、そうした申し立てを行うことで2級に該当する可能性があると言う事になるからです。



◆就労と日常生活のバランス

「就労の影響により、就労以外の場面での日常生活能力が著しく低下していることが客観的に確認できる場合は、就労の場面及び就労以外の場面の両方の状況を考慮する」となっています。
障害があっても生活の為にはなんとしてでも働かなければならない境遇の人は沢山います。日常生活をほとんど犠牲にしながら必死に働いている人を沢山知っています。
働くことによっていかに日常生活がおろそかになっているのかという事を客観的に申し立てることで、働いていても障害年金がもらえる可能性があります。諦めずに、考えられることを全部申し立てるようにしましょう。



◆継続的に雇用している場合

精神疾患の場合、1年を超えて就労を続けていたとしても、就労の頻度や、就労を続けるために周りから受けている援助や配慮を考慮することになっています。発病後も継続雇用される場合も同様に援助の状態など考慮することとなっています。又、欠勤、早退、遅刻など出勤状況への影響も考慮に入れます。就労している場合は、こういった点に重点を置いて申し立てを行う事が大切になります。



◆まとめ

このように、実際に就労している場合でも、色々な要素について自ら発言していく事で、障害年金が受給される可能性が出てきます。
こうした内容を病歴・就労状況等申立書という自分の手で書ける申立書に盛り込むことは勿論大切な対策になりますが、これらの内容をお医者さんとも共有し、その内容を反映した診断書を作成してもらう事が障害年金受給成功への近道となります。


お医者さんに診断書を書いてもらうとき、単に「お願いします」と言って診断書を渡すだけではなく、就労はしているけれどもこういう状況です。それを診断書にも記載してくださると助かります、と言ったプラスアルファのお願いを入れる事が大切になります。


できるなら、そういった診断書には載らない個別の事情については、書面でお医者さんにお渡しできると情報の共有化ができて良いと思います。
自分の想いと同じ内容の診断書を書いてもらうのは非常に難しいものです。しかし、悔いの残る請求をするよりは、少し頑張って、できるだけ思いの通じる診断書を作ってほしいと思います。


当事務所でも、そういった個別の事情の聴き取りから書面化など、障害年金請求のサポートに力を入れております。ご不明な事があったり、ご相談がありましたら、是非ご遠慮なくお問い合わせください。

精神障害認定のガイドラインってどんなの?(1)

2016-07-26

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厚生労働省は「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を策定し、今年9月1日から実施する事を発表しました。


http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000130041.html


主な内容は、これまで「総合的」に認定していたものについて、一定のガイドラインを設け、等級判定の公正さを保つものとされています。


具体的には、診断書裏面に記載される「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」という2つの項目を数値化したうえで、それを表に当てはめて等級判定のガイドラインにしようというものです。又、これまで「総合的に判定」と抽象的だったそれぞれの事情について、項目を5つに整理し、それぞれどのような要素を考慮するのかという事を例示しています。



今回と次回の2回にわたり、この内容について解説していきたいと思います。
今回は、大きな枠組みである「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」の数値化についてお話しします。





まずは、等級判定の目安の表について見ていきましょう。
目安の表は下記の通りです。

精神障害認定表




この表の見方を説明します。
縦軸は、診断書裏面の「日常生活能力の判定」の評価の四段階評価の平均値、横軸は同じく診断書裏面の「日常生活能力の程度」の5段階評価の数値を当てはめます。


縦軸の「日常生活能力の判定」の対象は、下記の7項目です。
(1) 適切な食事
(2) 身辺の清潔保持
(3) 金銭管理と買い物
(4) 通院と服薬
(5) 他人との意思伝達及び対人関係
(6) 身辺の安全保持及び危機対応
(7) 社会性


又、この7項目それぞれについて、以下のような4段階の評価を行います。(評価の文言は、各項目によって若干違いがありますが、全て同じ4段階評価です。)
1 できる
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
3 助言や指導があればできる
4 助言や指導をしてもできない若しくは行わない


7項目について、各1~4点で評価するという事です。
そして、その平均値をとったものが、表の縦軸の数値という事です。


横軸の「日常生活能力の程度」とは、下記の5段階評価の数値です。
(1) 精神障害(知的障害)を認めるが、社会生活は普通にできる
(2) 精神障害(知的障害)を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。
(3) 精神障害(知的障害)を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
(4) 精神障害(知的障害)を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
(5) 精神障害(知的障害)を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。


この2つの数字が交わるところが等級の目安となります。




例を出してみましょう。

「日常生活能力の判定」
・適切な食事
 2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
・身辺の清潔保持
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
・金銭管理と買い物
1 できる
・通院と服薬
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
・他人との意思伝達及び対人関係
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
・身辺の安全保持及び危機対応
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
・社会性
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする


「日常生活能力の判定」
3 精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。




この場合、「日常生活能力の程度」の平均は1.85です。
表に当てはめると、縦軸は上から5番目の「1.5以上2.0未満」、横軸は左から3番目となり、等級は「3級」となることがわかります。




この様に、診断書を見ただけである程度の等級が解るという事が今回のガイドラインの大きな特徴となります。


ただし、この表だけで等級が決まってしまうのでは、個別の事情が全く反映されず、かえって不公平になってしまう事が考えられます。
次回は、この表以外に考慮すべき点として例示されているものがありますので、就労関係を中心にそれらを見ていきたいと思います。

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