厚生労働省は「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を策定し、今年9月1日から実施する事を発表しました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000130041.html
主な内容は、これまで「総合的」に認定していたものについて、一定のガイドラインを設け、等級判定の公正さを保つものとされています。
具体的には、診断書裏面に記載される「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」という2つの項目を数値化したうえで、それを表に当てはめて等級判定のガイドラインにしようというものです。又、これまで「総合的に判定」と抽象的だったそれぞれの事情について、項目を5つに整理し、それぞれどのような要素を考慮するのかという事を例示しています。
今回と次回の2回にわたり、この内容について解説していきたいと思います。
今回は、大きな枠組みである「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」の数値化についてお話しします。
まずは、等級判定の目安の表について見ていきましょう。
目安の表は下記の通りです。
この表の見方を説明します。
縦軸は、診断書裏面の「日常生活能力の判定」の評価の四段階評価の平均値、横軸は同じく診断書裏面の「日常生活能力の程度」の5段階評価の数値を当てはめます。
縦軸の「日常生活能力の判定」の対象は、下記の7項目です。
(1) 適切な食事
(2) 身辺の清潔保持
(3) 金銭管理と買い物
(4) 通院と服薬
(5) 他人との意思伝達及び対人関係
(6) 身辺の安全保持及び危機対応
(7) 社会性
又、この7項目それぞれについて、以下のような4段階の評価を行います。(評価の文言は、各項目によって若干違いがありますが、全て同じ4段階評価です。)
1 できる
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
3 助言や指導があればできる
4 助言や指導をしてもできない若しくは行わない
7項目について、各1~4点で評価するという事です。
そして、その平均値をとったものが、表の縦軸の数値という事です。
横軸の「日常生活能力の程度」とは、下記の5段階評価の数値です。
(1) 精神障害(知的障害)を認めるが、社会生活は普通にできる
(2) 精神障害(知的障害)を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。
(3) 精神障害(知的障害)を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
(4) 精神障害(知的障害)を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
(5) 精神障害(知的障害)を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。
この2つの数字が交わるところが等級の目安となります。
例を出してみましょう。
「日常生活能力の判定」
・適切な食事
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
・身辺の清潔保持
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
・金銭管理と買い物
1 できる
・通院と服薬
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
・他人との意思伝達及び対人関係
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
・身辺の安全保持及び危機対応
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
・社会性
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
「日常生活能力の判定」
3 精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
この場合、「日常生活能力の程度」の平均は1.85です。
表に当てはめると、縦軸は上から5番目の「1.5以上2.0未満」、横軸は左から3番目となり、等級は「3級」となることがわかります。
この様に、診断書を見ただけである程度の等級が解るという事が今回のガイドラインの大きな特徴となります。
ただし、この表だけで等級が決まってしまうのでは、個別の事情が全く反映されず、かえって不公平になってしまう事が考えられます。
次回は、この表以外に考慮すべき点として例示されているものがありますので、就労関係を中心にそれらを見ていきたいと思います。