エアコン29度設定は許されるのか?   熱中症対策との関係から

暑いですね・・・

ここ数日でいきなり暑くなってきました。
表に出ると溶けてしまいそうな熱気です。群馬県の館林では39.2度というとんでもない気温を記録しております。まだ7月中旬だと言うのに。

それでも節電が要請されている昨今、よく言われているのがエアコン28度設定です。
が、原発問題などもあって、さらに節電しようと思われる向きもあるかもしれません。
エアコン設定29度。
果たしてこれは許されるのか、というのが今日のお題です。

エアコン設定温度29度は違法なのか?

どういうことかと言うと、安全衛生法によるとエアコンの設定温度は28度以下でなければならないと書いてある。したがって29度では安全衛生法違反だ、という説があるのです。
安全衛生法というのは、仕事場で働く人たちの安全と健康を守るための基準を定めた法律です。あまりにも過酷な環境で働くと、熱中症や脱水症状など労働者の健康を害するという理由からそのような規定があるものと推察します。

法律にはなんて書いてあるの?

そうした疑問を解決すべく、まずは基本として、法律原文に当たることにしましょう。
そうすると、事務所衛生基準規則なる規則が出てきました。法律ではなく、安全衛生法に基づいて制定された規則に書いてあるんですね。
で、その該当箇所です。

事務所衛生基準規則 第二章 事務室の環境管理(第二条-第十二条)

第五条(空気調和設備等による調整)
3 事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない。



これを見ると、確かに空調設備がある事業所は、17度から28度にしろ、と書いてあります。じゃあ、やっぱり29度設定は法律違反か、というとそうでもないのです。
注意していただきたいのは、この法律の語尾、一番最後のところです。
「なるように努めなければならない。」と書いてあります。

いわゆる努力規定というものです。これはまさに文字通り「努力してね」ということです。
つまり、努力してがんばったけど駄目だった、はOK、通ります。
この場合、がんばって28度に設定しようとしたけれど、どうしても日本全国の電力需給を考えると夜も眠れず、つい29度にしてしまった、というのは法律違反ではない訳です。この法律・規則だけから判断すれば。

厚生労働省の言い分は・・・

しかし、この点については、やはり厚生労働省も関心を寄せていて、この事務所規則と節電要請の関係についての立場を表明しています。

平成24年6月6日付けで「今夏の電力需給対策を受けた事務所の室内温度等の取扱いについて」という通達です。
これによると、

電力抑制のため室温を引き上げる場合には、まずは、28 度とするよう努めること。さらに、電力抑制のための事業者の自主的な取組として室温を29度に引き上げることも考えられるが、その場合には、職場における熱中症を予防するため、平成21年6月 19日付け基発第0619001号「職場における熱中症の予防について」に基づく熱中症予防対策を、当該事業場において講じること。



となっています。やっぱり基本は28度でやってほしい。どうしても29度に引き上げるのなら、熱中症予防の対策をとってもらわないと困るよ、ということです。

熱中症対策

では、その熱中症対策って何でしょうか。
こちらも平成21年6月19日付けの通達「職場における熱中症の予防について」があります。
それによると、

【設備面】
・熱い機械と労働者を遮る遮蔽物を造れ
・屋外なら直射日光等を遮る屋根を造れ
散水するなら、その後の温度上昇にともなう湿度上昇に配慮せよ
・近くに冷房のある休憩所を用意しろ
氷、冷たいおしぼり、シャワーなど身体を冷やせるもの、水分、塩分補給のための飲料水を備え付けろ

【作業管理】
休憩時間を確保して連続作業を短縮し、作業強度の強いものを避けよ
熱への順化(慣れて適応すること)の期間を設けよ

【指導】
・本人の自覚症状の有無にかかわらず、水分、塩分の摂取を指導しろ
通気性の良い服を着るよう指導しろ
・屋外なら帽子着用を指導しろ
・熱中症をの兆候を発見するために頻繁に巡視しろ
・兆候があったら速やかに作業を中断させろ
睡眠不足、体調不良、前日の飲酒、朝食の未接種などの日常の健康管理の指導をしろ
作業開始前に健康状態を確認しろ
・あらかじめ病院等の所在地、連絡先を把握しろ
・熱中症の疑いがあったら、涼しい場所で身体を冷やし、水分、塩分を摂取させろ



といったことが長々と書いてあります。
もちろん、これらを守らず熱中症などで事故が起こった場合、会社は安全配慮義務違反で損害賠償請求を受ける可能性が出てきます。
29度設定にしなかったとしても、熱中症などの対策は必要かとは思います。が、29度設定にした場合はこれらの対策を講じろ、と名言している以上、なにかあった時にはより厳格に見られてしまうと予想されます。
そう考えると、29度設定というのは安全管理上、又、会社のリスク管理上全くオススメできないと思います。

梅雨から夏への変わり目は熱中症に大注意!!

また、上記の熱中症対策は、エアコンなどの設備がない作業所や、屋外作業などの場合は、問答無用で必要になってくると思います。
水や休憩スペースなどは随時確保するのでしょうが、事業主側の指導などはおろそかになりがちです。特に日常健康管理の指導をしっかりやるのは難しいかもしれません。
それでも、せめて朝、始業前に健康状態を確認しておくことは熱中症に限らず多くの事業場内災害を防ぐ有効な手立てだと思います。
また、現場のリーダーが折に触れて声をかける。こうしたことが社員の健康を守り、ひいては会社のリスクを低減させるものなのだと思います。

 

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