私は社会保険労務士であると同時に、双極性障害の当事者でもあります。
障害年金の相談を受けていると、ときどき、
「やっぱり、自分と同じように病気を経験している社労士の方が、話が分かってもらいやすいですか?」
と聞かれることがあります。
これについて、私は単純に、
「同じ病気だから、あなたの気持ちは分かります」
とは言いたくありません。
同じ双極性障害という診断名でも、症状は人によって違います。
生活環境も違いますし、家族構成も、仕事も、それまで歩んできた人生も違います。
ですから、私が双極性障害だからといって、相談者の方の苦しみをすべて理解できるわけではありません。
ただし。
それでも私は、病気の当事者であることが、障害年金の請求をサポートするうえで大きな強みになっていると感じています。
なぜなら、精神疾患になると日常生活の中でどんなことが起こるのかを、私は知識だけではなく、ある程度「体験として知っている」からです。
たとえば、
「お風呂に入れますか?」
と聞かれたとします。
答えは「はい」。
でも、その「はい」の中身を見てみると、実は家族がお風呂を用意してくれて、「入った方がいいよ」と声をかけてもらって、ようやく浴室まで行っているのかもしれません。
しかも湯船には入れても、そこから石けんをつけて身体を洗うだけの活力が残っていないこともあります。
それでも質問に対する答えは、
「お風呂には入れます」
です。
私は、こうした「YESの中身」があることを、病気の当事者として体験的に知っています。
また、
「こんなことを人に話すのは恥ずかしい」
という感覚も分かります。
・何日もお風呂に入れない。
・部屋を片付けられない。
・歯を磨けない。
・郵便物を開けられない。
・家族から言われなければ薬を飲めない。
こうしたことを他人に話すのは、かなり勇気がいります。
でも障害年金では、実はこうした誰にも言いたくないような日常の中に、その人の障害状態を伝える大切な事実が隠れていることがあります。
病気による困りごとを体験として知っている。
だから、その「YES」の中身を確認できる。
そして社労士として、そこから見えてきた生活実態を、障害年金の審査に伝わる「事実」に整理していく。
私は、そこに「双極性障害の当事者である社労士」だからこそできる障害年金サポートの一つの価値があると考えています。
この記事では、その理由を6つに分けてお話しします。
この記事で分かること
この記事では、主に次のことをお伝えします。
- 双極性障害の当事者である社労士に障害年金を相談する具体的なメリット
- 病気を「知識として知っていること」と「体験として知っていること」の違い
- なぜ「できています」という答えだけでは、本当の生活状態が分からないのか
- 私が大切にしている「YESの中身を見る」という考え方
- 病気の経験を診断書や病歴・就労状況等申立書の準備にどう活かすのか
- 病気の当事者である社労士だからといって、できないこと
第1章 私自身も「障害年金を請求する側」でした
私は社労士です。
仕事として見れば、障害年金は社会保険制度の一つです。
初診日があり、保険料納付要件があり、障害認定日があり、診断書や病歴・就労状況等申立書などの書類をそろえて請求する。
制度として説明するのであれば、こういう話になります。
しかし、私にはもう一つの立場があります。
私自身も病気の当事者として、障害年金を請求する側を経験していることです。
実際に自分が請求する側になると、「制度を知っている」というだけでは見えてこないものがあります。
たとえば、自分のできないことを説明する難しさです。
人は普通、自分のできることを話したがります。
仕事でも、
「これができます」
「これを経験しています」
と、自分の良いところを伝えます。
ところが障害年金では、かなり逆の作業をしなければなりません。
・自分が何をできないのか。
・どこで困っているのか。
・誰に助けてもらっているのか。
・どれくらい生活がうまく回っていないのか。
こうしたことを、一つ一つ言葉にしていく必要があります。
これは、やってみるとなかなか辛い作業です。
「自分はこんなこともできないのか」
と、書類を作りながら改めて突きつけられるような感覚になることもあります。
精神疾患の場合には、その書類を作る気力そのものがないこともあります。
・病院へ電話をする。
・昔の受診歴を思い出す。
・年金事務所へ予約をする。
・書類を読んで、何を書けばよいのか考える。
健康なときなら何でもない作業が、病気のときにはとてつもなく大きな壁になることがあります。
私は、社労士として制度を知るだけではなく、請求する本人から見ると、この制度がどう見えるのかを経験しました。
この二つの視点を持っていることが、現在の障害年金サポートにも大きく影響しています。
第2章 最大の強みは「分かる」ことより、「体験として知っている」こと
「病気の当事者だから、患者さんの気持ちが分かる」
という説明は、一見もっともらしく聞こえます。
でも私は、もう少し違う言い方をしたいと思っています。
私の強みは、
「病気による困りごとを、ある程度、体験として知っていること」
です。
「知識として知る」のと「体験として知る」のは、少し違います。
精神疾患について勉強すれば、
「意欲が低下することがある」
「身の回りのことができなくなることがある」
「入浴が困難になることがある」
ということは分かります。
しかし実際の生活では、もっと細かいことが起きています。
「風呂には入れる。でも身体は洗えない」ということがある
これは私自身の経験ですが、体調が悪いときでも「お風呂に入る」こと自体はできる場合があります。
家族がお風呂を用意してくれる。
そして、
「お風呂、入った方がいいよ」
と声をかけてくれる。
そうすると、何とか浴室へ行くことができる。
湯船に入るところまではできます。
では、
「入浴できますか?」
と聞かれたらどう答えるでしょう。
おそらく私は、
「はい」
と答えます。
ところが、その先があります。
湯船に入ったあと、
石けんをつける。
タオルやスポンジを持つ。
身体を洗う。
頭を洗う。
洗い流す。
こうしたことをするだけの気力が残っていないことがあるのです。
湯船に入っただけで力を使い果たしてしまう。
結果として、
「風呂には入った。でも身体は洗えていない」
という状態になります。
質問が、
「お風呂に入れますか?」
だけなら、答えは「YES」です。
しかしその「YES」を、
「一人で問題なく入浴できている」
と解釈してしまったら、実際の生活とはかなり違います。
しかも、この状態にはさらに別の要素があります。
そもそも家族が風呂を用意している。
家族が声をかけている。
つまり、完全に自発的に一人で行っているわけでもありません。
私は、こうしたことを病気の当事者として体験的に知っています。
だから私は、障害年金の聞き取りで「できます」という言葉が出てきたとき、その言葉だけで判断しないようにしています。
大切なのは、
「YESかNOか」ではなく、「そのYESは、どういう条件の上で成り立っているのか」
だからです。
私はこれを、
「YESの中身を見る」
と考えています。
第3章 メリット① 「こんなことを言うのは恥ずかしい」を減らせる
障害年金の相談では、とてもプライベートなことを聞く場合があります。
・何日くらいお風呂に入れないことがありますか。
・歯磨きは毎日できますか。
・部屋は片付いていますか。
・洗濯はできますか。
・食事は自分で作れますか。
・お金の管理はできますか。
・薬は誰が管理していますか。
・家族にどんなことをやってもらっていますか。
こうした質問は、聞かれる側からすると決して楽しいものではありません。
むしろ、
「そんなことまで話さないといけないの?」
と思う内容です。
特に、
・何日も風呂に入れなかった。
・部屋がひどく散らかっている。
・着替えをしない日が続く。
・食事が菓子パンやカップ麺だけになる。
・郵便物を何週間も開けられない。
・家族から言われなければ何もしない。
こういった話には、本人の中に強い恥ずかしさがあることがあります。
「だらしない人だと思われるんじゃないか」
「怠けているだけだと思われるんじゃないか」
「こんなこと、大人なのにできないなんて言いたくない」
そう感じるのは、不思議なことではありません。
私自身も病気の当事者ですから、似たことで困った経験があります。
ですから私は、
「少なくとも、私に対しては恥ずかしがらなくて大丈夫ですよ」
と伝えることができます。
もちろん、「私も同じだから全部分かります」と言うつもりはありません。
その方には、その方にしか分からない苦しさがあります。
ただ、
「病気になると、そういうことが起こることを私は知っています」
「それを聞いたからといって、あなたをだらしない人だとは思いません」
と伝えることはできます。
これは、ただ安心してもらうためだけではありません。
障害年金の請求という実務においても意味があります。
安心して話せることで、これまで誰にも話していなかった生活実態が初めて出てくることがあるからです。
そして、その中に障害状態を説明するうえで重要な事実が含まれている場合があります。
第4章 メリット② 本人が気づいていない困りごとを、こちらから聞ける
もう一つ、病気を経験していることの大きなメリットがあります。
それは、
相談者本人が「困りごと」だと思っていないことにも気づきやすい
という点です。
たとえば、
「食事はできますか?」
と聞いて、
「はい。食べています」
と答えたとします。
でも、そこで終わってはいけません。
誰が食事を作っていますか。
自分で献立を考えていますか。
冷蔵庫の中を確認して、必要なものを考えて買い物へ行けますか。
自分で調理していますか。
それとも、家族が作ったものを目の前に出してくれるから食べられているのでしょうか。
本人は、
「食べられている=食事は問題ない」
と思っているかもしれません。
でも実際には、
家族の援助がなければ食生活が成立していない
ということがあります。
服薬も同じです。
「薬は飲めます」
と言っていても、
家族が毎日薬を準備している。
「薬飲んだ?」と声をかけてもらっている。
薬を一包化してもらっているから何とか飲めている。
そういうことがあります。
通院についても同じです。
「一人で病院へ行けます」
と答えていても、
・通院の前日は何もできない。
・当日の朝は家族から何度も声をかけてもらう。
・何とか病院へ行くものの、帰宅したら疲れ切って寝込む。
・医師との会話が上手くできない。
ということもあります。
だから私は、
「できますか?」
という質問だけではなく、
「どうやってできていますか?」
と聞くことを大切にしています。
病気を経験しているからこそ、
「もしかして、ここにも誰かの援助が入っているのではないか」
「表面上はできていても、ものすごく無理をしているのではないか」
という視点を持つことができます。
第5章 メリット③ 「辛い」を「生活の事実」に翻訳できる
障害年金について相談される方は、当然ですが辛い状態にあります。
ですから、
「毎日とにかく辛いです」
「何もできません」
「仕事へ行くだけで精一杯です」
という話が出てきます。
私は、その「辛い」という言葉をとても大切にしています。
ただし、障害年金の請求書類を作る段階では、もう一歩先へ進む必要があります。
「辛い」という気持ちを否定するのではありません。
その辛さが、実際の生活の中でどんな事実として現れているのかを整理するのです。
たとえば、
「何もできない」
のであれば、
・何ができないのでしょう。
・料理でしょうか。
・掃除でしょうか。
・入浴でしょうか。
・外出でしょうか。
・何日くらいできない状態が続くのでしょう。
・誰かに言われればできますか。
・誰かが手伝えばできますか。
・無理をしてやった場合、その後どうなりますか。
「仕事へ行くだけで精一杯」
なのであれば、
・帰宅後はどうしているのでしょう。
・食事を作れますか。
・休日は何をしていますか。
・欠勤や遅刻はありますか。
・職場でどんな配慮を受けていますか。
つまり、
「辛い」という感情を、「頻度・時間・援助・結果」といった生活上の事実に変えていく。
これが障害年金の請求では非常に重要になります。
病気の当事者として、そして社労士として、私はこの「翻訳」を大切にしています。
≪もっと知りたい!!≫
第6章 メリット④ 「できています」の“YESの中身”を見る
ここまでのお話を、もう少し整理してみます。
障害年金の聞き取りでは、
「できる」
「できない」
という二択だけで生活能力を判断しないことが重要です。
私は特に、
「できています」というYESの中身を見る
ことを意識しています。
先ほどの入浴で考えてみましょう。
「お風呂には入れます」
という回答があったら、
そこで終わらず、
- 自分から入ろうと思って入れますか
- 誰かから声をかけてもらっていますか
- お風呂の準備は誰がしていますか
- 毎日入れていますか
- 湯船に入るだけではなく、身体も洗えていますか
- 髪まで洗えていますか
- 入浴したあとに疲れ切ってしまうことはありませんか
と、中身を確認していきます。
「食事できます」も同じです。
- 自分で用意できますか
- 買い物はできますか
- 調理できますか
- 栄養を考えられますか
- 家族がいなかった場合も同じように食べられますか
「買い物できます」も同じです。
- 一人で行けますか
- 必要なものを自分で判断できますか
- 衝動買いをしてしまいませんか
- 家族についてきてもらっていませんか
「薬は飲めます」も、
- 自分で時間を覚えていますか
- 薬を自分で整理できますか
- 誰かに声をかけてもらっていませんか
まで見ます。
ここで大切なのは、
相談者を疑っているわけではない
ということです。
むしろ逆です。
本人が「できます」と答えていること自体は事実です。
ただ、その人にとっては、
「家族に言われてできる」
ことも、
「一人で自然にできる」
ことも、どちらも「できる」に入ってしまっていることがあります。
病気が長くなるほど、家族の援助が日常になりすぎて、
本人自身が「助けてもらっている」と認識していない
ことすらあります。
だから「YESの中身」を見る必要があります。
障害年金で知りたいのは、単純なYES/NOではなく、
その人が実際にはどの程度自立して生活できているのか
だからです。
第7章 メリット⑤ 「診察室の自分」と「本当の生活」のズレを知っている
精神疾患の障害年金では、医師に日常生活の状態をどのように伝えるかも大切です。
ただ、ここにも難しい問題があります。
診察室にいる本人と、自宅にいる本人は、必ずしも同じではありません。
病院へ行く日は、何とかお風呂に入る。
久しぶりに髪を整える。
服を着替える。
予約時間に遅れないように、かなり前から準備する。
診察室では椅子に座って、
「こんにちは」
と挨拶する。
医師から、
「どうですか?」
と聞かれると、
「まあまあです」
「何とかやっています」
と答えてしまう。
診察時間が5分程度であれば、その間だけ普通に受け答えできる場合もあります。
すると医師から見えるのは、
「身なりを整えて、一人で病院へ来て、普通に会話できている人」
です。
でも、その人が家へ帰ったあとどうなるかは、診察室からは見えません。
帰宅した途端に寝込むかもしれない。
病院へ行くために前日から何もできなかったかもしれない。
普段は何日も同じ服を着ているかもしれない。
家では家族にかなり助けてもらっているかもしれない。
これは医師が悪いのではありません。
診察室からは見えないのです。
だからこそ、診断書をお願いするときには、普段の日常生活をきちんと医師に伝える必要があります。
病気を経験している社労士として、
「診察室で見えている状態と、家での生活にはズレがあるかもしれない」
という視点を持って聞き取りをすることができます。
そして、必要な生活状況を整理して、医師へ伝えるための材料を準備する。
これも障害年金サポートの重要な仕事だと考えています。
第8章 メリット⑥ 双極性障害の「波」を体験として知っている
私自身が双極性障害の当事者であることが、特に大きく影響しているのが、
調子の「波」をどう見るか
という点です。
精神疾患では状態が一定とは限りません。
今日は比較的普通に話せる。
昨日は何もできなかった。
ある時期は動ける。
その後、反動のように動けなくなる。
こうした変化があります。
ですから、
今日元気に話している=普段も元気
とは限りません。
これは相談の場面でも同じです。
相談の日に普通に話せていたからといって、
「この人はかなり元気そうだな」
とは判断しません。
逆に、一番調子の悪い日の状態だけで全部を説明するのも適切ではありません。
大切なのは、
- 普段はどの程度なのか
- 良い日と悪い日はどのくらいあるのか
- 状態が崩れたとき何ができなくなるのか
- 良い日に動いたあと、反動があるのか
- 家族の援助はどの程度必要なのか
を見ていくことです。
また双極性障害の場合、調子が上がっている時期に活動量が増えることがあります。
しかし、
「動けているから生活能力が高い」
と単純に考えられない場合があります。
動きすぎる。
予定を入れすぎる。
買い物が増える。
睡眠時間が減る。
その後に状態を大きく崩す。
そういったこともあります。
そのため私は、
「できたかどうか」だけでなく、その行動がどのような状態で行われ、その後どうなったのか
まで聞くことを大切にしています。
これも、病気を体験として知っていることが、聞き取りに活きている部分だと思います。
第9章 病気を知っていることを、診断書・申立書にどう活かすのか
ここまで6つのメリットをお話ししてきました。
ただし、ここで一つ大切なことがあります。
病気を経験しているだけでは、障害年金の請求サポートにはなりません。
相談者の方に、
「分かります。大変ですよね」
と言って終わってしまったら、もちろん障害年金の書類は完成しません。
私が大切にしているのは、
病気の経験から得た気づきを、社労士として障害年金の書類へつなげることです。
流れとしては、こうなります。
○病気による困りごとを体験として知っている。
↓
○相談者が言いづらいことにも気づく。
↓
○「できています」という回答のYESの中身を見る。
↓
○本人も気づいていなかった援助や生活上の問題を整理する。
↓
○「辛い」という感情を、頻度・時間・援助・結果などの事実へ変える。
↓
○必要な内容を医師に伝えられるよう整理する。
↓
○病歴・就労状況等申立書などの書類にも、生活の実態が伝わる形で反映する。
私は、この最後の「翻訳」こそが重要だと思っています。
相談者が話す言葉と、障害年金の審査で必要となる情報は、必ずしも同じ形ではありません。
たとえば、
「何とか仕事には行っています」
という一言の裏に、
毎朝家族に起こしてもらっている。
遅刻が多い。
仕事を減らしてもらっている。
帰宅後は何もできない。
休日は寝たきりに近い。
といった事情があるかもしれません。
それらを一つずつ拾って、
審査する側にも生活実態が分かる「事実」にする。
病気の当事者としての経験と、社労士としての知識の両方が必要になる部分です。
第10章 ただし、病気の当事者だから何でも分かるわけではありません
ここまで「病気の当事者であることのメリット」をお話ししてきました。
だからこそ、逆のことも明確にしておきたいと思います。
私は双極性障害の当事者ですが、あなたの苦しみをすべて理解できるわけではありません。
同じ双極性障害でも違います。
うつ病の方とも違います。
発達障害の方とも違います。
同じ診断名であっても、家族環境や仕事、症状、価値観は違います。
ですから、
「私も病気だから、あなたのことは全部分かります」
とは言いません。
また私は社労士であって、医師ではありません。
診断をすることも、治療方針を決めることもできません。
診断書を書くのも医師です。
障害年金の受給を保証することもできません。
そして、
「障害年金が通るように話を作りましょう」
ということもしません。
大切なのは、話を作ることではなく、
実際に起きている困りごとを、漏らさず、伝わる形に整理すること
です。
私が病気の当事者であることは、その作業のための一つの強みだと考えています。
第11章 「病気の経験」だけではない。3つがそろって初めて強みになる
私が障害年金をサポートするとき、必要になるのは「病気を経験したこと」だけではありません。
私は、3つの要素が組み合わさることが大切だと考えています。
一つ目は、
病気の当事者としての体験。
生活の中で起きる細かな困りごとや、言いにくさ、「YESの中身」を知っていること。
二つ目は、
社会保険労務士としての制度知識。
初診日や保険料納付要件、診断書、病歴・就労状況等申立書など、障害年金制度の仕組みを理解していること。
三つ目は、
生活実態を書類へ落とし込む技術。
聞き取った内容を、そのまま羅列するのではなく、審査する側が理解できる形に整理することです。
つまり、
病気の当事者としての体験 × 社労士としての制度知識 × 書類へ落とし込む技術
この3つが組み合わさって初めて、
本人の困りごとを、障害年金の審査に伝わる事実へ翻訳できる
のだと思います。
第12章 こんな方には、病気の当事者である社労士への相談が向いていると思います
すべての方が社労士に依頼する必要があるとは思っていません。
自分で調べて、自分で書類を準備できる方もいます。
一方で、次のような方は、一度専門家に相談する意味があると思います。
- 医師の前へ行くと、つい「大丈夫です」と答えてしまう
- 自分が何に困っているのか、うまく言葉にできない
- 「こんなことまで話すのは恥ずかしい」と感じている
- 家族からかなり助けてもらっているが、それを援助だと思っていなかった
- 「できる・できない」を聞かれると、つい「できます」と答えてしまう
- 働いているので障害年金は無理だと思っている
- 双極性障害の波を、どう説明したらよいのか分からない
- 病歴・就労状況等申立書を書こうとすると、しんどくなって止まってしまう
- 診断書を医師にお願いする前に、生活状況を整理しておきたい
- 自分の状態が障害年金でどう見られるのか、一度整理したい
特に、
「自分では大したことではないと思っているけれど、実は家族がいなければ生活が回らない」
というケースは少なくありません。
そうした部分を一緒に整理することも、障害年金サポートの重要な仕事です。
第13章 相談するなら、診断書を依頼する前がおすすめです
障害年金について社労士へ相談するのであれば、私はできるだけ、
医師に障害年金用の診断書を依頼する前
をおすすめしています。
理由はシンプルです。
診断書が完成してから、
「実際の生活より軽く書かれている気がする」
「家族から受けている援助が伝わっていない」
「普段の生活状態を先生にほとんど話していなかった」
と気づいても、そこから大きく修正するのは簡単ではないことがあるからです。
だから先に、
- 日常生活で何に困っているのか
- どんな援助を受けているのか
- 「できる」の中身はどうなっているのか
- 調子の波はどうなっているのか
- 働いている場合、どんな配慮や無理があるのか
を整理する。
そして、その内容を本人から医師へきちんと伝えてもらう。
社労士は診断書を書くことはできません。
しかし、
診断書を書く医師に、普段の生活実態を正確に伝えるための準備
はできます。
この順番が非常に重要だと私は考えています。
第14章 愛知・春日井・名古屋で障害年金を考えている方へ
障害年金の請求を考えているけれど、
「まず何から始めればよいのか分からない」
「初診日もよく分からない」
「どこへ相談すればよいのか分からない」
という方は、まず手続き全体を整理してみてください。
愛知県での障害年金手続きについては、地域別に入口となる記事を用意しています。
≪地域別ナビ≫
また、
「今の自分は、まず何を確認すればよい?」
という方は、無料チェックリストから整理していただく方法もあります。
≪もっと知りたい!!≫
第15章 まとめ|病気による困りごとを「体験として知っている」ことが、私の強みです
私が双極性障害の当事者であるからといって、障害年金の審査で特別扱いされるわけではありません。
病気の経験があるだけで、障害年金が通りやすくなるわけでもありません。
それでも私は、病気の当事者であることが、障害年金をサポートするうえで大きな意味を持っていると感じています。
相談者の方が、
「できます」
と答えたとき。
その一言だけで終わらず、
「そのYESの中身は、どうなっているのだろう?」
と考えることができます。
「お風呂には入れる」
でも、家族に促されなければ入れない。
しかも湯船には入れても、身体までは洗えない。
「食事はできる」
でも、自分で用意しているわけではなく、家族が作って目の前に置いてくれている。
「薬は飲める」
でも、家族が薬を管理して、「飲んだ?」と毎日声をかけている。
「病院には一人で行ける」
でも、その日のためにかなりのエネルギーを使い、帰宅したら何時間も寝込んでしまう。
表面だけを見れば、全部「YES」です。
でも、そのYESの中には、その人がどれだけ無理をしているのか、どれだけ家族に助けてもらっているのかという、大切な生活実態が隠れています。
そして、
「こんなことを話すのは恥ずかしい」
と思っている方にも、
「病気になると、そういうことが起きることを私は知っています」
「少なくとも、私に対して恥ずかしがる必要はありません」
と伝えることができます。
私は、そこが大きいと思っています。
病気による困りごとを、知識として知っているだけではない。
体験として知っている。
だから、言葉になっていない困りごとに気づける。
だから、YESの中身を見ることができる。
そして、社労士として、その困りごとを障害年金の審査に伝わる「事実」へ整理していく。
「病気の当事者としての体験」と「社労士としての専門性」。
この二つを両方持っていることが、私の障害年金サポートの一番の特徴です。
もし今、
「自分の困っていることをうまく説明できない」
「医師にどう話したらいいか分からない」
「こんな状態まで話したら恥ずかしい」
「診断書をお願いする前に、一度生活状況を整理したい」
と思っているのであれば、一人で全部まとめようとしなくても大丈夫です。
まずは、今の生活で何が起きているのか。
どこまで自分でできていて、どこから誰かの援助が入っているのか。
その「YESの中身」を、一緒に整理するところから始めることができます。

愛知県(名古屋・春日井等)を拠点に、岐阜・三重を含む地域で障害年金の請求をお手伝いしている社会保険労務士の渡邊智宏です。自身がそううつ病を経験したことから、病気による生きづらさや不安にも自然と目が向きます。その経験を活かし、一人ひとりの事情に耳を傾けながら、障害年金の手続きをサポートしています。初回の出張相談は無料ですので、「よくわからない」「不安がある」という方も、どうぞ気軽にご相談ください。


