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【永久保存版】障害年金申請・完全ガイド|「辛い」を「事実」に翻訳して伝える

2025-11-19

「毎日、不安で胸が押しつぶされそうです」
「悲しくて涙が止まりません」
そう書きたくなる気持ちは、痛いほど分かります。

ただ、障害年金の審査(特に精神)で最も見られるのは、あなたの“気持ち”そのものよりも、
その病気によって日常生活がどれだけ破綻しているか(事実)です。

このページは、障害年金の申請(請求)を進めるための“完全ガイド”であると同時に、
あなたの「辛い」を、審査側が理解できる「生活の事実」へと変換するための教科書です。

このページで分かること

  • 申請の全体像(準備→診断書→申立書→提出→審査→決定)
  • 初診日・納付要件でつまずかない要点
  • 診断書を軽くしないために、依頼前にやること
  • 申立書で「整合性」を作る方法(NG/OK例あり)

○初診日が重要な理由:まず最初に押さえるポイント

○この完全ガイドは「制度と書類の全体像」です。
窓口の分岐や電話番号など、地域の動き方は地域別ページが早いです。

○「初診日が曖昧」「診断書が軽くなりそう」「何から手をつけるか不安」な方へ。
診断書を医師に依頼する前に、受診歴と生活実態メモを一緒に整理し、手戻りを減らします。

最短3ステップ(迷ったらこれ)

  1. 初診日と受診歴をメモ(病院名/時期/転院順)
  2. 加入年金と納付状況を確認
  3. 日常生活の「できていない事実」を整理して、医師へ依頼→提出へ

目次

第1章 障害年金は「順番」で決まる
第2章 最大の関門:初診日と納付要件
第3章 必要書類:ケース別チェックリスト
第4章 就労だけでは弱い。まず「生活の崩壊」を出す
第5章 「辛い」を「事実」に変換する
第6章 7つの日常生活動作を「事実」で埋める
第7章 診断書は”依頼前”が勝負(医師とのすり合わせ術)
第8章 病歴・就労状況等申立書の書き方
第9章 等級を分けるのは”病名”より”生活の事実”
第10章 今日からできる申請準備チェックリスト
第11章 よくあるつまずきと対処法
第12章 まとめ:事実を伝えることは、自分を守ること

第1章 全体像:障害年金は「順番」で決まる(迷いを消すフロー)

障害年金の申請で迷子になる最大の原因は、最初にやる順番を間違えることです。
いきなり「診断書を書いてください」と医師に頼んでしまったり、逆に書類集めに時間をかけすぎて疲弊したり。

このガイドの基本方針はシンプルです。

①初診日(起点) → ②加入年金(窓口) → ③生活の事実(診断書) → ④申立書(整合性)

あなたの「辛い」を、審査側が判断できる「事実」に翻訳して届けるには、この順番が一番手戻りが少ないです。

1-1 まずは全体の流れ(テキスト図解)

【STEP0】初診日と受診歴をメモ(病院名/時期/転院順)

   ↓

【STEP1】初診日の加入年金を確認(国民年金/厚生年金/共済)

   ↓

【STEP2】納付要件の確認(足りないと、ここで止まる)

   ↓

【STEP3】生活実態メモを作る(=「辛い」を「事実」に翻訳)

   ↓

【STEP4】医師に診断書を依頼(依頼前のすり合わせが勝負)

   ↓

【STEP5】病歴・就労状況等申立書を作成(診断書の評価をエピソードで補強)

   ↓

【STEP6】提出(窓口へ)→ 受付 → 審査

   ↓

【STEP7】結果(支給/不支給/等級)→ 必要なら次の手(審査請求など)

「どこが勝負か?」というと、STEP3〜5です。
ここで“事実の出し方”がズレると、診断書と申立書が噛み合わず、審査側に伝わりません。

1-2 最初の分岐:「初診日」が全ての起点になる

障害年金は、最初に医師にかかった日(初診日)が起点です。
この初診日で、主に次の3つが決まります。

  1. どの年金制度が対象か(国民年金/厚生年金/共済)
  2. 提出先(窓口)がどこか(市役所・区役所・年金事務所など)
  3. 必要書類がどれくらい増えるか(受診状況等証明書が必要になる等)

だから、申請の最初は「感情の説明」ではなく、初診日と受診歴のメモから始めます。
正確な日付まで完璧にしなくて構いません。ただし、まったく不明だと窓口では一般論になりがちです。

最低限、これだけはメモしてください。

  • 最初に受診した医療機関名
  • 時期(○年○月ごろ/転職前後/季節でも可)
  • 転院の順番(分かる範囲で)

1-3 次の分岐:「加入年金」で窓口が変わる(原則と実務のおすすめ)

初診日の時点で加入していた年金によって、窓口は原則として次のように分かれます。

  • 初診日が 国民年金(第1号) 側 → 原則:市役所・区役所の国民年金担当
  • 初診日が 厚生年金(第2号)/第3号 側 → 原則:年金事務所(または街角相談センター)
  • 初診日が 共済 → 各共済組合

ここで大事なのは、原則と実務は分けて考えることです。

国民年金の窓口は原則として市役所・区役所ですが、
実務上は年金事務所で相談・手続き(提出まで)を進めることが可能で、そちらの方がおすすめです。

理由はシンプルで、年金事務所は年金業務の専門部署であり、相談の精度が安定しやすいこと、そして――

一度話して「信頼できそう」と思える担当者に当たったら、
その場で次回予約を取り、同じ担当者のまま提出まで進められる(担当者固定)からです。
毎回説明がリセットされにくく、手戻りが減ります。

一方で、市役所・区役所には住民票や戸籍などを同じ庁舎で揃えやすい(ワンストップ)メリットもあります。
迷う場合は、まず年金事務所で相談し、必要に応じて「どこに提出するのが最短か」を確認して進めるのが現実的です。

1-4 「辛い」を書く前にやるべきこと:生活実態メモ(これが診断書を変える)

ここからが、このガイドの核心に繋がります。

多くの人は、医師にこう言いたくなります。
「とにかく辛い」「不安でたまらない」「毎日絶望している」

でも、審査で伝わるのは、「感情」そのものではなく 生活がどう壊れているかという「事実」です。
そして医師が診断書に落とし込みやすいのも、やはり「事実」です。

だから、診断書を依頼する前に、まず“素材”を用意します。
それが 生活実態メモです。

  • 入浴:週○回/誰が促すか/入れないとどうなるか
  • 食事:1日○回/内容/買いに行けるか
  • 金銭:支払い遅延/衝動買い/管理を誰がしているか
  • 対人:インターホンに出られるか/電話が取れるか
  • 安全:火の管理/希死念慮があるときの行動
  • 通院:一人で行けるか/服薬の抜け

こういう“生活の数字と行動”が揃うと、医師との認識ズレが減り、診断書が「軽め」になりにくい。
逆に言うと、ここが曖昧なままだと、診察室の短い会話だけで診断書が作られ、あなたの生活の地獄が反映されません。

○診断書:日常生活のまとめ方

1-5 この章の結論:申請は「順番」と「素材」で勝つ

第1章で言いたいことは、これだけです。

  • 障害年金は、順番で進める(初診日→加入年金→生活実態→診断書→申立書)
  • 「辛い」は大事だが、そのままでは比較できない
  • だから、「辛い」を 生活の事実に翻訳する素材(生活実態メモ)を先に作る

次章では、このフローの最初の関門である
「初診日」と「納付要件」を、分かりやすく整理します。
ここを押さえると、申請が止まりにくくなります。

第2章 最大の関門:初診日と納付要件(ここで止まる人が一番多い)

障害年金の申請は、実は「診断書」より前に、2つの関門があります。

  1. 初診日(起点)
  2. 保険料の納付要件(資格)

ここが曖昧だと、どれだけ生活が崩壊していても、申請が前に進まなかったり、途中で止まります。
だから第2章では、あなたの「辛い」を語る前に、申請の土台を固めます。

2-1 初診日とは「最初に医師にかかった日」(※診断がついた日ではない)

初診日という言葉が、まず混乱のもとになります。
ここでいう初診日は、基本的に次の意味です。

その症状(障害の原因となった傷病)について、最初に医師の診療を受けた日

よくある勘違いはこれです。

  • × 診断名がついた日
  • × 休職した日
  • × 退職した日
  • × 障害年金を知った日
  • × 生活が限界になった日

あなたの苦しみの“ピーク”の日ではなく、最初に医療につながった日が起点になります。
この初診日で「どの年金(国民/厚生/共済)」か、そして原則の窓口が分かれます。

2-2 初診日が大事な理由は3つだけ覚えてください

初診日が確定すると、次が決まります。

  1. 加入年金が決まる(国民年金なのか、厚生年金なのか)
  2. 提出先(原則窓口)が決まる(市役所/区役所/年金事務所等)
  3. 必要書類の方向性が決まる(受診状況等証明書が必要になる等)

だから、初診日が曖昧なまま動くと、窓口で一般論になりやすい。
逆に、正確な日付まで完璧でなくても、病院名と時期の目安があるだけで話が一気に具体化します。

2-3 初診日が分からない人へ:まずは“受診歴メモ”でOK(正確な日付は後から詰める)

「何年も前で覚えていない」
「転院が多くてぐちゃぐちゃ」
これは本当に多いです。ここで止まらないでください。

まずは、受診歴メモを作ります。最低限これだけ。

  • 最初に行った医療機関名(分かる範囲で)
  • 時期(例:2020年冬ごろ/転職の前後/子どもの入学の頃…でもOK)
  • 転院の順番(分かる範囲で)
  • 「心療内科」「精神科」「内科」などの科の種類

受診歴メモは必須ではありません。
でも、初診日が全く分からないと、窓口では一般的な説明で終わりやすく、
「初診日が分かったらもう一度来てください」となりがちです。
正確な日付は不要でも“当たり”をつけてから行く方が効率的です。

2-4 カルテがない・閉院・転院が多い場合の考え方(ここで詰まらない)

初診日が分からない原因は、だいたい次の3つです。

  • ① 初診の病院が閉院している/カルテが残っていない
  • ② 転院が多く、最初がどこか分からない
  • ③ 最初は内科など別科で、精神科に繋がるまで時間がある

この場合、結論はこうです。

「記録で追える範囲」から固めていき、初診日に近づけていく

具体的には、

  • いま通っている病院(最新)の紹介状・診療情報提供書
  • お薬手帳(いつ頃から何の薬か)
  • 健康保険の受診履歴(分かる範囲)
  • 手元に残っている領収書、予約票
    など、“残っている証拠”から順に辿ります。

2-5 次の関門:保険料の「納付要件」(ここがOKなら先に進める)

障害年金は「困っているから誰でももらえる」制度ではなく、
一定の保険料要件(納付要件)があります。

ここでは細かい数字の暗記は不要です。要点だけ。

  • 原則として、初診日の時点で 保険料を一定期間きちんと納めていること が求められる
  • 免除・猶予など、制度上の手続きをしている期間は評価されることがある
  • 未納が多いと、ここで止まる

「納付要件が不安」という人は、先にここを確認すると手戻りが減ります。

2-6 納付要件の確認はどこでやる?(最短ルート)

確認方法は大きく2つです。

  • ねんきんネット等で履歴を確認する
  • 窓口で確認する

国民年金の原則窓口は市役所・区役所ですが、
実務上は年金事務所で相談・手続き(提出まで)を進める方がおすすめです。
年金業務の専門性があり、担当者固定(次回予約をその場で)もしやすいからです。

市役所・区役所のメリットは、住民票や戸籍などを同じ庁舎で取りやすい点。
ただ、申請全体をスムーズに進めるなら、まず年金事務所で相談し、必要に応じて証明書を区役所等で取る、という動き方が現実的です。

2-7 第2章の結論:初診日と納付要件が固まれば、あとは「事実」を集めるだけ

ここまでで土台は完成です。

  • 初診日の“当たり”がついた
  • 受診歴メモができた
  • 納付要件の見通しが立った

次章では、いよいよ核心に入ります。
あなたの「辛い」を、審査側が判断できる「事実」に翻訳するために、
まず 必要書類と準備(ケース別チェック) を整理します。

第3章 必要書類:ケース別チェックリスト(先に“全体像”を掴む)

障害年金は、書類が多く見えて不安になります。
でも、最初から全部揃えようとすると、疲れて止まります。

ここでは、手戻りを減らすために

  • まず必要になりやすい書類(共通)
  • ケースによって増える書類
  • 初回相談で持っていく“最小セット”

を整理します。

ポイント:申請は「全部揃えてから窓口」ではなく、
窓口で段取りを決めてから集めるほうが前に進みます。

3-1 まず結論:書類は3つの山に分けると迷わない

① あなたの情報(本人確認・年金番号・銀行口座)

② 医師の書類(診断書)

③ あなたが書く書類(病歴・就労状況等申立書)

+(必要に応じて)初診日の証明・添付書類

このうち、いきなり動かしにくいのは②の診断書です。
診断書は“依頼前”が勝負。先に生活実態メモ(事実)を固める。

3-2 共通で出やすい書類(基本セット)

A:あなたの情報(まず揃う)

  • 基礎年金番号が分かるもの(年金手帳、ねんきん定期便など)
  • 本人確認書類(運転免許証、住民票、戸籍謄本等)
  • 振込先口座情報(通帳の控え等)

B:医師の書類(核)

  • 障害年金用の診断書
    ※精神の場合は精神の診断書様式。身体・知的は様式が異なります。

C:あなたが書く書類(核)

  • 病歴・就労状況等申立書(精神の場合特に重要)
  • (ケースにより)就労状況に関する資料(勤務状況のメモなど)

ここまでが“主役3点”。
あとは「初診日」と「ケース」で追加書類が増えます。

3-3 ケースによって増える書類(増えるポイントだけ押さえる)

① 初診日を証明する書類が必要になるケース

  • 初診の医療機関が現在の病院と違う
  • 初診日が古い/転院が多い
  • 初診が別科(内科等)から始まっている

→ この場合、受診状況等証明書(初診の証明)が必要になることがあります。
(※ここが詰まりやすいので、初診日と受診歴メモが効きます)

② 家族が代理で動くケース

  • 体調的に本人が窓口に行けない
    委任状が求められることがあります。

③ 同居家族や支援者の情報が重要になるケース

  • 日常生活の援助がある
    → 「誰が何をどれだけ助けているか」が申立書の核になります。
    (※家族に“生活の事実”を確認しておくと強い)

3-4 初回相談で持って行くもの(最小セット)※ここが最重要

「相談に行くのに、何を持って行けばいい?」
結論:全部は不要です。最低限これで話が進みます。

初回相談・最小セット

  • 基礎年金番号が分かるもの(年金手帳、ねんきん定期便など)
  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 受診歴メモ(初診日メモ) ←できれば持参
  • 初診日のころの働き方メモ(会社員/扶養/自営/無職/学生)
  • 現在の病院名・通院頻度・服薬状況のメモ

受診歴メモは必須ではありません。
ただし、初診日がまったく不明だと一般論の説明で終わりやすく、
「初診日が分かったらもう一度来てください」となりがちです。
正確な日付まで不要でも「病院名+時期の目安+転院順」くらいは把握して行くのがおすすめです。

3-5 どこに相談・提出する?(原則と、実務上のおすすめ)

国民年金の原則窓口は市役所・区役所です。
ただし実務上は年金事務所で相談・手続き(提出まで)を進めることが可能で、そちらの方がおすすめです。
年金業務を専門に扱っており、次回予約をその場で取りやすく、担当者固定で進められるため手戻りが減ります。

一方で、市役所・区役所のメリットは、住民票や戸籍などの証明書を同じ庁舎で揃えやすい(ワンストップ)点です。
迷う場合は、まず年金事務所で相談し、「このまま提出まで年金事務所で進められるか」を確認した上で、必要な証明書だけ市役所・区役所で取る、という動き方が効率的です。

○この完全ガイドは「制度と書類の全体像」です。
窓口の分岐や電話番号など、地域の動き方は地域別ページが早いです。

3-6 診断書を依頼する前に“必ずやること”

書類で一番重いのは診断書です。

  • 診断書を書いてもらってから「思ってたのと違う」となるケースは多い
  • でも、一度書いた診断書の大幅修正は難しいことがある
  • だから、相談のタイミングは 診断書を依頼する前が望ましい

次章では、あなたの「辛い」をそのまま書くのではなく、
医師と審査に届く形に翻訳するための“素材”――
生活実態メモ(事実のログ)の作り方に入ります。

第4章 【戦略の核】就労“だけ”では弱い。まず「生活の崩壊」を出す

障害年金の相談で、最初に出てくる悩みは多くが「仕事」です。

  • ミスが増えて叱責される
  • 人間関係がつらくて出社できない
  • 休職を繰り返し収入が不安
  • もう働けない気がする

これらは切実です。ここを否定するつもりはありません。
ただ、等級(2級・3級など)を左右する場面では、就労の話“だけ”だと弱くなることが多い。理由はシンプルです。

就労は「結果」であり、審査が見たいのは「土台(生活)」だからです。

4-1 審査のモノサシは「日常生活能力」(仕事の項目は主役ではない)

精神の障害の審査では、診断書にある 日常生活能力(生活の維持や対人関係など)が重要な軸になります。
要するに、審査側が知りたいのはこういうことです。

  • 生活の基本動作がどれくらい崩れているか
  • 援助(家族・支援者)がどれくらい必要か
  • 危機対応(安全保持)がどれくらい危ういか
  • 社会性・対人関係がどれくらい保てないか

もちろん、就労状況が無関係という意味ではありません。
実際、就労できているかどうかは判断に影響します。
ただし、それは「生活の土台が崩れている」ことが書類で示されている前提で、はじめて強い意味を持ちます。

4-2 なぜ「仕事ができない」だけだと通りにくいのか(審査側の見え方)

仕事のつらさだけを書くと、審査側にはこう見える余地が残ります。

  • 職場環境(人間関係)が悪いだけでは?
  • 配置転換や業務調整で対応できるのでは?
  • 休職で回復すれば戻れるのでは?
  • “仕事”以外の生活は維持できているのでは?

つまり、「仕事がつらい」は本当でも、
障害(病気)によって生活能力がどれだけ落ちているかが見えないと、判断材料として弱くなります。

4-3 一番強いのは「生活が壊れている → だから仕事も無理」という順番

審査側のロジックは極めて現実的です。

生活が崩れている人が、安定して就労できるはずがない

たとえば、次のような情報は、仕事の話より強く刺さります。

  • 入浴は週1回、促されないと入れない
  • 食事は1日1回以下、買いに行けない日がある
  • 服薬を自己管理できず、家族がセットしている
  • 役所や病院の電話に出られない/手続きができない
  • 公共料金の支払いができず停止した
  • 火の管理が不安で調理を避けている
  • インターホンに出られず宅配が受け取れない

これらは「感情」ではなく「事実」です。
そして、事実は審査側が比較・判断できる共通言語になります。

4-4 就労の話を捨てる必要はない。ただし“書き方”がある

ここで誤解してほしくないのは、就労の話を消せと言っているわけではない、ということです。
大事なのは順番と書き方です。

  • ×「上司が怖い」「職場がつらい」だけ
  • ○「生活がこう崩れている」→「その結果として就労がこう崩れている」

就労を書くなら、「感情」より「機能の低下(できない事実)」で書きます。

就労のOK例(“能力の低下”に寄せる)

  • 身支度に2時間以上かかり遅刻を繰り返す
  • 指示内容が頭に入らず、メモを取れない
  • 電話が鳴ると動悸で受話器を取れず、隠れてしまう
  • 通勤途中でパニックになり引き返す
  • 帰宅後は反動で翌日まで寝込む

「つらい」ではなく、何ができなくなったかを出す。
これが“生活→就労”の順番とセットになると、説得力が跳ね上がります。

4-5 第4章の結論:等級の勝負は「生活の事実」をどれだけ出せるか

まとめます。

  • 就労の悩みは切実。でも、それ“だけ”だと弱いことが多い
  • 審査は「生活能力」という土台を見る
  • だから、まず「生活の崩壊(事実)」を出し、就労は結果として書く
  • 感情ではなく、頻度・時間・援助・失敗の結果で示す

次章では、この方針を具体的な技術に落とします。
あなたの「辛い」を、審査が判断できる「事実」に翻訳する――
ロボット視点”で生活を記録する方法を解説します。

第5章 【思考法】「辛い」を「事実」に変換する(ロボット視点で書く)

ここまでで、等級判断の土台は「生活」だと分かりました。
では、その生活の崩壊を、どうやって診断書・申立書に落とし込むのか。

結論はシンプルです。

「辛い」と書く前に、行動(または不行動)を書き、
それを 数字援助の有無 で固定する。

これが、審査に届く文章の基本形です。

5-1 審査官はあなたの心の中を見られない(見ているのは紙だけ)

障害年金の審査をする人は、あなたに会いません。
見ているのは、診断書と申立書という「文字情報」だけです。

だから、あなたがどれほど苦しいかは、本来わかりようがありません。

  • Aさんの「辛い」とBさんの「辛い」は、同じ強さなのか
  • 「不安でたまらない」は、どれくらい生活に影響しているのか
  • 「死にたい」は、危険行動につながっているのか

感情だけでは比較ができません。
審査側が判断できるのは、生活への支障として現れている事実だけです。

5-2 感情の罠:「辛い」と書くと不利になりやすい3つの理由

理由① 重症度が伝わらない(比較できない)

  • ×「とても不安です」
  • ○「不安でインターホンに出られず、宅配便を3回連続で受け取れなかった」

後者は、生活の機能がどれだけ落ちているかが一発で伝わります。

理由② 矛盾が生まれやすい(診断書が軽くなる)

「こんなに辛いのに診断書が軽い」
このズレの原因は、医師に「感情」ばかり伝えて「動けなさ(事実)」を伝えていないことが多いです。

医師は診察室で見える材料で判断します。
材料が「辛い」だけだと、診断書に落とし込みづらい。

理由③ 原因が“環境問題”に見える余地が残る

「職場が辛い」「人間関係が辛い」だけだと、
審査側には「環境が変われば改善するのでは?」という解釈の余地が残ります。

だから、生活の崩壊を“機能の低下”として出す必要があります。

5-3 「ロボット視点」を入れる:感情を消して“行動ログ”にする

ここで使うのが、ロボット視点です。
ロボットには感情がありません。あなたの行動だけを記録します。

変換例(人間視点 → ロボット視点)

  • ×「何もやる気が起きなくて、一日中布団にいて情けなかった」
  • ○「起床14:00。トイレ以外で布団から出たのは水を飲む1回のみ。着替えなし。発語なし。」

このように、“感情語”を削り、行動(または不行動)だけを抜き出す
これが「辛い→事実」翻訳の核心です。

5-4 事実に必要な4要素(これが揃うと強い)

事実には、次の4つを入れてください。

  1. 頻度:週○回/月○回
  2. 時間:○分/○時間
  3. 援助:独力/助言があれば/介助が必要
  4. 結果:放置すると何が起きるか(ガス停止、未受診、事故リスク等)

書き方の型(テンプレ)

「○○は(頻度)。所要時間は(時間)。(援助)がないとできない。結果として(具体的な困りごと)。」

例:
「入浴は週1回。準備から終了まで2時間以上かかる。家族が声をかけて湯を張らないと動けない。結果として、数日同じ服を着続け、皮膚トラブルが出ることがある。」

5-5 1週間ログテンプレ(ここから書き始めればOK)

申請準備の期間だけでいいので、まずは7日間、これを書いてください。
(完璧でなくていい。穴があってもOK)

【1日テンプレ】(コピペして使えます)

  • 起床: 時 分(※昼夜逆転があればそのまま)
  • 睡眠: 時間(途中覚醒:有/無)
  • 食事:回数(内容:例 コンビニ弁当/カップ麺/家族が用意)
  • 入浴・洗面:入浴(有/無)、洗顔・歯磨き(有/無)
  • 着替え:有/無(同じ服:○日目)
  • 外出:有/無(理由:通院/買い物/不可)
  • 服薬:自己管理できた/家族管理/抜けた(回数)
  • 対人:会話(有/無)、電話(取れた/無理)、インターホン(出た/居留守)
  • 家事:できたこと/できなかったこと(具体的に)
  • 金銭:支払い/買い物(できた/できない、衝動買いの有無)
  • 危機:火の管理・戸締り・希死念慮(行動に出たか)
  • 援助:誰が何をしたか(声かけ/同行/代行)

このログがあると、医師にも審査にも届く「材料」が揃います。
診断書が軽くなりがちな人ほど、ここが効きます。

5-6 ロボット視点を“医師と審査”に使う方法(2つの出口)

出口①:医師に渡す「生活実態メモ」になる

診察室では言いにくい生活の崩壊を、メモで渡せます。
医師が診断書に落とし込みやすくなります。

出口②:申立書の“整合性”を作る根拠になる

診断書の評価(例:清潔保持が低い)に対して、
「だから低い」というエピソードで補強できます。

5-7 第5章の結論:感情は否定しない。ただ“翻訳”して届ける

あなたの「辛い」は本物です。
ただ、審査は心を読む試験ではなく、書類で判断する制度です。

だからこそ、

  • 感情 → 行動(不行動)
  • 行動 → 数字(頻度・時間・援助・結果)

この順番で翻訳して届ける。
それが、あなたの生活を守るための最短ルートになります。

次章では、このロボット視点を、診断書の軸に合わせて
「7つの日常生活動作」それぞれに落とし込む具体例に進みます。

第6章 【実践】7つの日常生活動作を「事実」で埋める(チェック+OK/NG)

第5章で作った「ロボット視点のログ」を、診断書の軸に合わせて整理します。
精神の審査で重要になりやすいのが、日常生活能力(生活の維持)です。

ポイントは毎回同じ。

頻度(週○回)/時間(○分)/援助(誰が)/結果(何が起きる)
この4点を入れる。

ここでは、7項目それぞれについて「何をチェックし、どう書けば強いか」を具体化します。

① 適切な食事(食欲ではなく、摂取回数と内容)

チェック(事実にする質問)

  • 1日何回食べている?欠食は週何回?
  • 自炊できる?火や包丁を使える?
  • 買いに行ける?買い置きができる?
  • 栄養は偏っている?(パン・麺だけ等)
  • 食後の片付け(ゴミ捨て・洗い物)はできる?

OK例(事実)

  • 「食事は1日1回。買いに行けない日は食べない(週2回)。内容は菓子パンかカップ麺が中心。自炊は火の管理が不安でできない。食後のゴミを捨てられず、空き容器が寝床周辺に溜まる。」
  • 「食事の準備は自力ではできない。家族が用意したものを食べるだけ。自分で冷蔵庫から取り出すのもしんどく、声かけがないと抜くことがある。」

NG例(弱い)

  • 「食欲がありません。美味しく感じません。」

② 身辺の清潔保持(気分ではなく、入浴・着替えの頻度)

チェック(事実にする質問)

  • 入浴は週何回?シャワーだけ?湯船?
  • 歯磨き・洗顔は毎日できる?
  • 服・下着は何日で替える?
  • 洗濯ができる?(回す/干す/畳む)
  • 不潔が原因で問題(皮膚炎・虫歯等)は出ている?

OK例(事実)

  • 「入浴は週1回。家族に促されてようやく。準備〜終了まで2時間以上かかる。歯磨きは週2回程度で抜けが多い。下着は3日同じものを着ていても気にならない。」
  • 「洗濯機は回せても干せない。洗濯物が溜まり、同じ服を着続ける。虫歯の痛みがあるが受診の段取りが組めず放置している。」

NG例(弱い)

  • 「お風呂に入るのが億劫です。」

③ 金銭管理と買い物(不安ではなく、管理能力の欠如)

チェック(事実にする質問)

  • 家賃・公共料金の支払いはできている?
  • 支払い用紙を開封できる?期限を守れる?
  • 必要な買い物(食料品・日用品)ができる?
  • 衝動買い・浪費・不要契約はある?(躁など)
  • 通帳・カードは自分で管理できる?誰かが管理?

OK例(事実)

  • 「支払い用紙を開封できず放置し、電気(またはガス)が止まったことがある。金銭管理は家族が通帳を保管している。」
  • 「衝動性が強まり、必要のない物をネットで複数購入した。後から請求が来て初めて気づく。買い物は人混みでパニックになり、単独では難しいため家族が同行している。」

NG例(弱い)

  • 「お金がなくて不安です。」

④ 通院と服薬(意思ではなく、実行の安定性)

チェック(事実にする質問)

  • 通院を自分で予約できる?当日行ける?
  • 交通機関が使える?付き添いが必要?
  • 服薬は自己管理できる?飲み忘れは週何回?
  • 薬を取りに行ける?(薬局で待てる?)
  • 飲み過ぎ・中断など危険行動はない?

OK例(事実)

  • 「通院は一人では不安で行けず、家族が同行。予約の電話は取れない。服薬は自己管理できず、家族が1回分ずつセット。飲み忘れは週2回ある。」
  • 「外出の準備に時間がかかり、通院日に家を出られずキャンセルが続いた。薬が切れたが受け取りに行けず数日中断したことがある。」

NG例(弱い)

  • 「通院はつらいです。薬は飲んでいます。」

⑤ 他人との意思伝達・対人関係(人付き合いの苦手ではなく、生活上の支障)

チェック(事実にする質問)

  • 家族以外と会話できる?どれくらい?
  • 電話に出られる?役所や病院の連絡ができる?
  • インターホンに出られる?宅配を受け取れる?
  • 近所・職場・友人との関係は維持できている?
  • 対人場面での症状(動悸、パニック、フリーズ)は?

OK例(事実)

  • 「電話は動悸がして出られない。役所や病院への連絡ができず、家族に代行してもらっている。インターホンに出られず居留守が続き、宅配便を3回連続で受け取れなかった。」
  • 「会話は家族に対しても短文のみ。来客があると部屋に閉じこもり、2時間以上出られない。」

NG例(弱い)

  • 「人と話すのが苦手です。」

⑥ 身辺の安全保持・危機対応(危険が“ある”ではなく、管理できない事実)

チェック(事実にする質問)

  • 火の管理(コンロ・タバコ)はできる?
  • 戸締り・鍵・ガス栓の確認ができる?
  • 体調悪化時に助けを求められる?受診できる?
  • 希死念慮があるとき、具体的行動が出る?
  • 事故やヒヤリハットの経験は?

OK例(事実)

  • 「コンロの火を消し忘れが不安で調理できない。家族がいるとき以外は火を使わない。」
  • 「希死念慮が強い時期があり、薬を溜め込んだ/遺書を書いた/ベランダから下を見下ろしてしまう等の行動が出る。体調が急落しても自分で受診の段取りが組めず、家族が手配する。」

※ここは表現が強すぎると危険に見えるだけで、支援につながっていない印象になることがあります。
「誰が見守っているか」「安全のための対応(家族管理、受診、支援機関)」も併記すると安定します。

NG例(弱い)

  • 「死にたい気持ちがあります。」(事実がない、危機管理の状況が不明)

⑦ 社会性(参加意欲ではなく、社会生活の維持ができない事実)

チェック(事実にする質問)

  • 役所手続き、郵便の開封、書類管理ができる?
  • 予定を立てて実行できる?(遅刻・忘れ)
  • 近所づきあい、公共の場での振る舞いが保てる?
  • 生活リズム(昼夜逆転)で社会生活が崩れていない?
  • 支援(家族・ヘルパー・就労支援等)なしで成り立つ?

OK例(事実)

  • 「郵便物を開封できず放置し、重要書類を見落とす。役所手続きは一人ではできず家族が同行・代行。」
  • 「予定を守れず、準備に2時間以上かかって外出できない。昼夜逆転が続き、午前の予定はほぼ実行不能。」
  • 「社会活動(地域の用事、手続き、対外連絡)を自分で回せず、支援がなければ生活が維持できない。」

NG例(弱い)

  • 「社会復帰したい気持ちはあります。」

6-2 7項目を“医師と審査”に届く形にするコツ(仕上げ)

7項目を埋めたら、最後にこの2点をチェックしてください。

チェック①「できない」を“具体例”で裏打ちできているか

  • 「できない」だけで終わっていないか
  • 何が起きたか(結果)まで書けているか

チェック②「援助」が見えるか(ここが等級を左右しやすい)

  • 独力か、助言があればできるか、介助が必要か
  • 誰が、どの頻度で、何をしているか

第6章の結論:7項目は“生活の事実”のチェック表

この章でやったことは、あなたの生活を「事実の言語」に翻訳する作業です。
次章では、その事実を医師に正しく伝え、診断書の評価をズラさないための

  • 診察室の“仮面”問題
  • 医師に渡すメモのテンプレ
  • 診断書依頼前のすり合わせ

に入ります。ここが、申請の成否を分けることが多いです。

第7章 【最重要】診断書は“依頼前”が勝負(医師とのすり合わせ術)

障害年金で一番つらいのは、ここです。

  • 診断書を書いてもらった
  • でも、内容が軽い/生活の困難さが反映されていない
  • 「違う」と言いたいが、言いづらい
  • そして、書き直しをお願いできず詰む

この流れ、本当に多いです。

だから結論から言います。

相談のタイミングは、医師に診断書を依頼する前が望ましい。
診断書が出来上がってから「思っていたのと違う」となっても、
一度書いた診断書を大幅に書き直してもらえる可能性は低いことが多いからです。

診断書は、申請の心臓部です。
ここでズレると、申立書だけ工夫しても限界があります。

○相談の流れ(初回~提出まで)

7-1 なぜ診断書は「軽め」になりがちなのか(医師が悪いわけではない)

医師が意地悪しているわけではありません。現実的に、次の事情があります。

  • 診察時間が短い(生活全体の聞き取りには足りない)
  • 患者は“診察室の仮面”をかぶる(頑張って話してしまう)
  • 医師が見ているのは「診察室のあなた」で、家でのあなたが見えない
  • 「辛い」とだけ言われても、診断書の評価に落とし込みにくい

つまり、診断書が軽い原因は多くの場合、
医師の頭の中にある「あなた像」と、実際の生活実態が一致していないことです。

7-2 診察室の仮面を剥がす(ここが勝負)

あなたは診察の場で、こうしていませんか?

  • 身だしなみを整えてしまう
  • きちんと受け答えしてしまう
  • 「調子どう?」に反射で「大丈夫です」と言ってしまう
  • 本当は地獄でも、医師の前だと“それなり”に見えてしまう

その結果、医師の中ではこうなります。

「通院できている」「受け答えもできている」
=「生活はそこそこ保てているのかも」

ここをひっくり返すのが、第5〜6章で作った「事実」です。

7-3 医師に渡す「生活実態メモ」(最強の武器)

口頭で全部伝えるのは無理です。時間も、気力も足りない。
だから、紙で渡すのが最も効率的です。

メモのタイトル(おすすめ)

「日常生活の状況メモ(診断書作成の参考にしてください)」

書く内容(これだけでOK)

  • 7項目(食事・清潔・金銭・通院服薬・対人・安全・社会性)
  • 各項目は、必ず
    頻度/時間/援助/結果 の4点を入れる
  • 「診察に来るために無理をしている」事実(反動で寝込む等)

例文(そのまま使えます)

先生の前では何とか話していますが、通院のために前日から準備し、薬を多めに飲んで無理して来ています。
帰宅後は反動で1〜2日寝込みます。
家では次の状態です。
・入浴:週1回。家族の声かけと準備がないとできません。
・食事:1日1回。買いに行けない日は食べません(週2回)。
・服薬:自己管理できず、家族が1回分ずつセットしています。
・対人:電話に出られず、インターホンも出られず居留守が続きます。
・危機対応:火の管理が不安で調理できません。

このメモがあると、医師は「診察室のあなた」だけで判断しなくて済みます。
診断書の評価に落とし込みやすくなります。

7-4 切り出し方(医師に嫌がられにくい言い方)

医師に「診断書をお願いします」と言うのは緊張します。
そこで、角が立ちにくい言い方をテンプレ化します。

切り出しテンプレ(おすすめ)

障害年金の申請を考えています。
診断書をお願いしたいのですが、診察室だと本当の生活状況が伝わりにくい気がして不安です。
家での様子をまとめたメモを持ってきました。診断書作成の参考にしていただけますか?

ポイントは、

  • 医師を責めない
  • 「不安だから補足資料を渡す」という形にする
    これだけです。

7-5 診断書の“依頼前”にやるべきこと(ここで勝負が決まる)

診断書は「書く直前」の情報で形が決まりやすいです。
だから、依頼前に最低限これを整えます。

依頼前チェックリスト

  • 初診日・受診歴の大枠が固まっている
  • 直近1〜2週間の生活実態メモ(ロボット視点)がある
  • 7項目のうち崩れているところが具体例で書ける
  • 援助の内容(誰が何をどれだけ)を説明できる
  • 就労の状況は「感情」ではなく「能力の低下(事実)」で書ける

社労士に相談するなら、診断書を医師に依頼する前が望ましい。
診断書が出来上がってから「違う」となっても、大幅修正は難しいことが多いからです。

7-6 診断書が出来上がった後に見るべきポイント(最低限)

出来上がった診断書を受け取ったら、感情で判断せず、次だけ見ます。

  • 日常生活能力(7項目)の評価が、あなたの生活実態メモと大きくズレていないか
  • 援助の必要性が反映されているか
  • 就労状況が「能力の低下(事実)」として整合しているか

ズレがある場合は、次章の「申立書」で無理矢理合わせるのではなく、
まず医師の認識ズレがどこにあるかを確認し、可能なら補足メモで埋める方が安全です。

第7章の結論:診断書は“医師の認識”が全て

  • 診断書が軽くなる最大の理由は、医師の中のあなた像と生活実態がズレていること
  • そのズレを埋めるのが「生活実態メモ」
  • そして、勝負は 診断書を依頼する前に決まる

次章では、診断書と矛盾しない形であなたの事実を補強する
病歴・就労状況等申立書のテンプレ(整合性の作り方)に入ります。

診断書は依頼前の準備で結果が変わりやすいポイントです。
「医師に何をどう伝えるか」「別紙(生活実態メモ)をどう作るか」を整理してから依頼すると、ズレが起きにくくなります。

第8章 【書類作成】病歴・就労状況等申立書の書き方(本紙+別紙で“読みやすく・書きやすく”)

診断書が「医師の評価(点数)」だとしたら、申立書は何か。

申立書は、診断書の評価を“事実(エピソード)”で補強する書類です。

よくある誤解はこれです。

  • 「申立書で盛れば通る」→ ×
  • 「診断書と同じ文章をコピペする」→ ×
  • 「とにかく辛さを書き連ねる」→ ×

申立書の役割は、診断書の評価に対して「だからそうなる」という生活の事実を添えることです。
これがいわゆる「整合性」です。

そして、ここからが実務のコツです。

「現在の日常生活の状況」は書くべきことが多い一方、申立書の枠は狭く、無理に詰め込むと読みにくくなります。
そこでおすすめなのが、日常生活の詳細を“別紙”にまとめる方法です。
本紙(申立書)は時系列中心、別紙は生活実態中心。これが一番読みやすく、書きやすいです。

8-1 整合性とは「同じ文言」ではない(評価×根拠の関係)

整合性とは、診断書と申立書が“同じ言葉”になることではありません。
正しい整合性はこうです。

  • 診断書:清潔保持が「助言・指導があればできる」/「行えない」
  • 申立書(本紙+別紙):
    • 本紙:現在「入浴は週1回。家族の援助が必要」と要約
    • 別紙:週1回である具体例、援助の内容、できないと何が起きる(結果)
      だから評価が低いと読める

つまり、診断書の点数を、あなたの生活ログで裏打ちする。
これが審査に届く書き方です。

8-2 最強の考え方:申立書は「本紙=時系列」「別紙=生活実態」で分ける

申立書の情報は大きく2つです。

  1. 病歴(時系列):発症〜初診〜現在までの流れ(本紙)
  2. 現在の生活:日常生活能力(7項目)の事実(別紙)

この2つを分けると、メリットが大きいです。

  • 本紙が読みやすい(時系列がスッと入る)
  • 別紙で生活実態を十分に書ける(枠不足問題が消える)
  • 診断書と照合しやすい(7項目で対応が取れる)
  • 書き手も楽(“日記/ログ”の延長で書ける)

8-3 【本紙】時系列テンプレ(改訂版・コピペ用)

以下の枠をそのまま使ってください。
(※日付は分からない時は「○年○月ごろ」でOK。正確さより順序)

【A-1】発症(症状の出始め:いつ頃から、何が起きたか)

  • 症状が出始めた時期:○年○月ごろ(例:転職前後、出産後、受験期などでも可)
  • 当時の状況(生活・仕事・家庭):例「残業が続いていた」「育児で睡眠不足」など
  • 出ていた症状(事実で):
    • 睡眠:例「寝つけない/途中覚醒が毎晩」
    • 生活:例「朝起きられず欠勤が増えた」
    • 食事:例「1日1回以下になった」
    • 対人:例「電話が取れなくなった」
  • 生活への影響(事実):例「家事が止まった」「遅刻が増えた」など

コツ:感情ではなく、行動(できなくなったこと)を中心に書く。

【A-2】初診(初めて病院に行った場面:きっかけ+受診内容)

  • 初診の時期:○年○月ごろ
  • 初めて受診した医療機関名(科):○○病院(内科/心療内科/精神科など)
  • 受診に至った“きっかけ”(出来事があると書きやすい):
    • 例「欠勤が続き会社から受診を勧められた」
    • 例「家族に連れられて受診した」
    • 例「不眠が悪化し内科を受診した」
    • 例「パニックで外出できなくなった」
  • 初診時の状態(事実):例「起床が午後」「食事が1日1回」「入浴が週1回」など
  • 初診後の対応(分かる範囲で):薬開始/休職指示/紹介状/次回予約など

【B】治療経過(転院・入退院・服薬の変化)

  • 転院の流れ(順番):A病院→B病院→…
  • 治療の節目:例「薬が増えた」「入院」「デイケア開始」
  • 波(双極など):良い時期/悪い時期の実態(反動で寝込む等)

【C】悪化の節目(生活が崩れた“事実”)

  • 悪化した時期:○年○月ごろ
  • 何ができなくなったか(事実):
    • 入浴:週○回に低下
    • 食事:○回に低下
    • 外出:不可
    • 連絡:電話不可
  • 援助が必要になった内容:誰が何を代行/同行

【D】現在の状態(本紙は“要約”に留め、詳細は別紙へ)

  • 現在の状態(要約・2〜5行):
    例「直近1〜2週間は起床が午後で、食事は1日1回。入浴は週1回で家族の促しが必要。電話・インターホンに出られず対外連絡は家族が代行。服薬は自己管理できず家族管理。」
  • 詳細:別紙『日常生活状況(生活実態メモ)』参照(提出書類として添付)

コツ:本紙は“時系列の説明”に集中し、生活実態の詳細は別紙で厚く書く。

8-4 【本紙】就労状況を書くときの型(“感情”ではなく“機能低下”)

就労の話は「結果」です。書くなら機能低下で書きます。

就労テンプレ(コピペ用)

  • 就労形態:正社員/パート/休職中/退職など
  • 勤務日数・時間:週○日、○時間
  • 困難(事実):
    • 身支度に○時間かかる
    • 指示が理解できず、メモが取れない
    • 電話が取れない
    • 遅刻・欠勤が週○回
  • 配慮や調整:業務軽減、配置転換、在宅など
  • 結果:休職、退職、出勤困難

8-5 【別紙】日常生活状況(生活実態メモ)テンプレ(提出用)

本紙のD欄で「別紙参照」としたら、次の別紙を作ります。
(診断書の7項目と対応が取れるので、審査側にも読みやすい形です)

別紙の冒頭(固定文)

別紙:日常生活状況(生活実態メモ)
対象期間:直近1〜2週間(○年○月○日〜○月○日)
記載方針:各項目は 頻度/時間/援助/結果 をできるだけ入れる。

1)生活リズム

  • 起床:平均○時(最遅○時)/就寝:○時
  • 睡眠:○時間、途中覚醒:有/無
  • 昼夜逆転:有/無(具体:週○日)

2)適切な食事

  • 回数:1日○回(欠食:週○回)
  • 内容:例「パン・カップ麺中心」/自炊:可/不可
  • 援助:買い物の同行・代行(誰が、週○回)
  • 結果:体重変動、栄養の偏り、食べられない日が続く等

3)清潔保持

  • 入浴:週○回(シャワーのみ等)
  • 洗顔・歯磨き:週○回
  • 着替え:同じ服○日続くことがある
  • 援助:声かけ・準備(誰が、週○回)
  • 結果:皮膚トラブル、口腔トラブル等

4)金銭管理と買い物

  • 支払い:期限内にできる/できない(遅延の有無)
  • 管理:通帳カードは本人/家族管理
  • 買い物:単独可否、人混みでの症状
  • 結果:停止、不要契約、衝動買い等

5)通院と服薬

  • 通院:単独可否/同行必要(誰が、月○回)
  • 予約・連絡:本人可否(電話が取れない等)
  • 服薬:自己管理可否、飲み忘れ(週○回)、飲みすぎ
  • 結果:中断、症状悪化等

6)他人との意思伝達・対人関係

  • 会話:家族以外との会話頻度
  • 電話:取れる/取れない(代行の有無)
  • インターホン:出られる/出られない
  • 結果:手続きが進まない、宅配を受け取れない等

7)身辺の安全保持・危機対応

  • 火の管理:可否(不安で調理不可など)
  • 戸締り:確認できる/できない
  • 危機時:症状悪化時に助けを求められるか
  • 結果:ヒヤリハット、事故リスク等
    ※希死念慮がある場合は「行動」と「安全確保(見守り・受診など)」も併記

8)社会性

  • 郵便物:開封できる/放置する
  • 予定:立てられる/実行できない(遅刻・忘れ)
  • 手続き:本人可否、同行・代行の有無
  • 結果:重要書類の見落とし、期限切れ等

9)援助の全体像(ここが強い)

  • 援助者:誰が(同居家族・支援者)
  • 内容:声かけ/同行/代行/家事/金銭管理
  • 頻度:週○回、毎日など
  • 援助がないとどうなるか(結果)

8-6 NG例 vs OK例(本紙・別紙どちらでも効く)

例①(対人)

NG:「人が怖い。不安で仕方ない」
OK:「電話は動悸で出られない。役所・病院への連絡は家族が代行。インターホンに出られず居留守が続き、宅配を3回連続で受け取れなかった」

例②(清潔)

NG:「お風呂に入る気力がない」
OK:「入浴は週1回。家族の声かけと準備がないと動けない。準備〜終了まで2時間以上かかる。下着は3日同じものを着ることがある」

例③(就労)

NG:「職場の人間関係が辛くて泣いた」
OK:「身支度に2時間以上かかり遅刻が増加。指示内容が頭に入らず、メモが取れず作業が止まる。電話の着信で動悸が出て受話器が取れず、トイレに避難する時間が増えた」

8-7 整合性チェックリスト(提出前にここだけ見ればOK)

【チェック①】診断書の評価と矛盾していないか

  • 診断書で「できる」なのに、別紙で「全くできない」と断言していないか
    → どうしてもズレる場合は「波」「日による差」を事実で説明する

【チェック②】“感情語”だけで終わっていないか

  • 「辛い」「不安」だけで段落が終わっていないか
    → 必ず「行動(不行動)」「頻度」「援助」「結果」を入れる

【チェック③】期間が混ざっていないか

  • 現在(直近1〜2週間)と過去の節目が混ざっていないか
    → 本紙は時系列、別紙は直近期間、と役割を固定する

【チェック④】援助が書けているか(ここが効く)

  • 誰が、週何回、何をしているか
    → 別紙の「援助の全体像」は必ず書く

【チェック⑤】初診日・受診歴が崩れていないか

  • 病院名・順番が大きく矛盾していないか
    → 不明な部分は「○年○月ごろ(記憶の範囲)」と書く

第8章の結論:本紙は“時系列”、別紙は“生活実態”で勝つ

  • 申立書は、診断書の評価を「生活の事実」で補強する書類
  • 本紙に詰め込まず、別紙で日常生活の詳細を厚く書くと読みやすい
  • 「頻度/時間/援助/結果」を揃えると審査に届く

第9章 【ケース別】等級を分けるのは“病名”より“生活の事実”

ここまでで、申請の考え方は一本にまとまりました。

  • 感情ではなく、生活の事実(頻度・時間・援助・結果)
  • 診断書は依頼前のすり合わせが勝負
  • 申立書は本紙(時系列)+別紙(生活実態)で読みやすくする

この章では、疾患(うつ、双極、発達など)ごとに、審査に届きやすい“事実の出し方”を整理します。

重要:障害年金は「病名で決まる」わけではありません。
どれだけ日常生活が壊れているかで決まります。
同じ病名でも、書ける事実が違えば、結果も変わります。

9-1 うつ病・双極性障害(気分障害):ポイントは「波」と「反動」

気分障害で重要になりやすいのは、次の2つです。

ポイント①「良い日」の実態(“できているように見える”のが落とし穴)

診察室では話せても、家では崩れている。
このギャップを事実で示します。

  • 「通院できる=生活できている」ではない
  • 通院のために前日から準備し、帰宅後に反動で寝込む
  • “良い日”でも健常時の50%程度で、無理すると数日崩れる

書くべき事実(例)

  • 外出できるのは通院の日だけ(月○回)
  • 通院前後は○日寝込む
  • 家事は週○回しか回らない(ゴミ出し、洗濯など)

ポイント② 双極性障害は「躁が元気」ではない(病的な行動)

躁状態は“調子が良い”ではなく、生活破綻に直結することがあります。

書くべき事実(例)

  • 睡眠時間が2〜3時間でも動き回り、その後虚脱で寝込む
  • 衝動買い・不要契約・散財
  • 対人トラブル(過度な連絡、攻撃性、SNS等)

9-2 発達障害(ASD/ADHD等):ポイントは「能力のアンバランス」と「二次障害」

発達障害は、気分の落ち込みだけで語ると弱くなりがちです。
核になるのは「能力の偏りが生活や社会適応を壊している事実」です。

ポイント① うつのような“気分”ではなく「できない行動」が主役

書くべき事実(例)

  • マルチタスクでフリーズし、家事・手続きが進まない
  • 予定の管理ができず、忘れる/遅刻が多発
  • 書類が開封できず、支払いが滞る

ポイント② 二次障害(適応障害・うつ状態)で生活が崩れている

発達特性そのものより、二次障害で生活が破綻しているケースが多いです。
「特性+二次障害」の結果として生活が維持できないことを、別紙で厚く書きます。

ポイント③ 感覚過敏や対人の困難は“生活への影響”で出す

書くべき事実(例)

  • スーパーの騒音でパニック→買い物ができない
  • 電話・インターホンが恐怖で出られず、手続きが止まる
  • 文字情報の処理が苦手で、役所書類が読めない

9-3 統合失調症圏:ポイントは「症状名」より「生活維持の困難・援助」

この領域は、症状の説明よりも「生活がどれだけ支援を要するか」が通りやすいです。

書くべき事実(例)

  • 服薬の自己管理ができず、家族が管理
  • 体調悪化時に受診の段取りが組めない
  • 対外連絡・買い物・手続きが単独では不可
  • 一人暮らしが維持できない(見守りが必要)

9-4 共通で効く“強い事実”ベスト7(疾患を問わず刺さる)

疾患に関係なく、審査側が判断しやすいのは次のタイプです。

  1. 入浴・清潔が維持できない(頻度で出る)
  2. 食事が不安定(欠食/買えない/自炊不可)
  3. 服薬・通院が自己管理できない(援助が必要)
  4. 電話・インターホンに出られず対外連絡が止まる
  5. 金銭管理・支払いができず、停止や延滞がある
  6. 火の管理・戸締りなど安全が不安で、生活の選択が制限される
  7. 郵便物・手続きが止まり、社会生活が維持できない

これらは「辛い」ではなく「機能の低下」を示す事実で、比較可能です。
別紙(生活実態メモ)に、頻度・援助・結果をセットで書きます。

第9章の結論:あなたの“ケース”に合わせて、事実の出し方を最適化する

  • 病名ではなく、生活の壊れ方(事実)で決まる
  • 疾患ごとに「伝えるべき事実の型」がある

第10章 【Next Action】今日からできる申請準備チェックリスト(初回相談〜提出まで)

ここまで読んで、「やることは分かった。でも何から?」となるのが普通です。
この章は、迷いを消すための 行動手順書 です。上から順に潰せば進みます。

10-1 まず最初の30分でやること(ここが起点)

① 受診歴メモを作る(初診日の当たりをつける)

  • 最初に受診した医療機関名
  • 時期(○年○月ごろでOK)
  • 転院の順番(分かる範囲)
  • 科(内科→心療内科…など)

正確な日付は不要でも、これがないと窓口が一般論になりがちです。
「初診日が分かったらまた来てください」で止まるのを防ぎます。

② 直近1週間ログをつける(ロボット視点)

  • 起床・睡眠
  • 食事回数と内容
  • 入浴・歯磨き・着替え
  • 外出の有無
  • 服薬(自己管理できたか)
  • 電話/インターホン/対人
  • 家族の援助(誰が何をしたか)

10-2 初回相談に持って行く最小セット(これで話が進む)

  • 基礎年金番号が分かるもの(ねんきん定期便など)
  • 本人確認書類
  • 振込口座情報(通帳など)
  • 受診歴メモ(初診日メモ)
  • 直近1週間ログ(できれば)

10-3 窓口の考え方(原則と実務のおすすめ)

制度上、国民年金の原則窓口は市役所・区役所です。
ただし、実務上は次が最もスムーズです。

年金事務所で事前相談 → そのまま同じ担当者で提出まで進める(担当者固定)
次回予約をその場で取り、同じ人を指名できる状況を作る。

年金事務所は年金業務の専門部署で、論点整理が進みやすい。
一方、市役所・区役所は住民票や戸籍などの取得が同じ庁舎でしやすいメリットがあります。
(証明書だけ市役所で取る、という使い分けが現実的です)

○この完全ガイドは「制度と書類の全体像」です。
窓口の分岐や電話番号など、地域の動き方は地域別ページが早いです。

10-4 診断書を依頼する前に必ずやること(ここが勝負)

「診断書を書いてください」と言う前に、次の準備をします。

① 生活実態メモ(別紙)を作る

別紙テンプレに沿って、7項目(食事・清潔・金銭・通院服薬・対人・安全・社会性)を埋める。
書き方は必ずこれ:

  • 頻度/時間/援助/結果

② 医師に渡すメモを用意する(1枚でOK)

タイトル例:「日常生活の状況メモ(診断書作成の参考にしてください)」
内容は“崩れている事だけ”を書く(「できる」事を書かない)

③ 相談のタイミングは「依頼前」

診断書が出来上がってから「思ってたのと違う」となっても、
一度書いた診断書を大きく修正してもらえる可能性は高くありません。
だから、診断書を依頼する前に準備・相談が望ましいです。

10-5 申立書は「本紙+別紙」で作る(読みやすさ優先)

  • 本紙:時系列(発症→初診→治療経過→悪化→現在の要約)
  • 別紙:日常生活状況(生活実態メモ)を厚く書く

本紙に生活の詳細を詰め込むと読みにくくなるので、別紙分離が合理的です。

10-6 提出前の最終チェック(落とし穴を潰す)

① 初診日・受診歴の整合

  • 病院名、順番、時期が大きく矛盾していないか

② 診断書と別紙の整合

  • 診断書が「できる」なのに、別紙で「全くできない」と断言していないか
    (波があるなら、波を事実で書く)

③ 援助が書けているか

  • 誰が、どの頻度で、何をしているか
  • 援助がないとどうなるか(結果)

第10章まとめ:最短ルートはこれ

  1. 受診歴メモ(初診日の当たり)
  2. 1週間ログ(ロボット視点)
  3. 年金事務所で相談(担当者固定で提出まで)
  4. 診断書依頼前に、生活実態メモを作って医師に渡す
  5. 申立書は本紙(時系列)+別紙(生活実態)

チェックリストをここまで進められた方は、もうゴールが見えています。
ただ、障害年金は「初診日」「診断書(評価のズレ)」「別紙(生活実態メモ)」のどこかで、手戻りが起きやすいのも事実です。

「自分の場合はどこがリスクか」「次に何を揃えればいいか」を一緒に確認したい方は、こちらからご相談ください。

第11章 【Q&A】よくあるつまずきと対処法(ここで止まらない)

障害年金は、途中で止まりやすいポイントがだいたい決まっています。
この章は「詰まった時の抜け道」集です。

Q1. 初診日が分かりません。相談に行っても意味ありますか?

A. 意味はあります。ただし“受診歴メモ”を作ってから行くと一気に進みます。

初診日が完全に不明だと、窓口では一般論になりやすく、
「初診日が分かったらもう一度来てください」となりがちです。

対処(最低限)

  • 初診の病院名(不確かでも候補)
  • 時期(○年○月ごろ、転職前後など)
  • 転院の順番
    これを箇条書きで用意します。

次の一手

  • 年金事務所で相談(担当者固定で継続)
  • 「初診日を固めるために、次に何の資料が必要か」を確認して動く

○「初診日を知らないと大損」

Q2. 初診の病院が閉院していて、カルテがないと言われました。詰みですか?

A. 詰みではありません。“追える証拠”から初診日に近づけます。

カルテがないケースは珍しくありません。
この場合は、残っている記録で“周辺から固める”考え方をします。

対処(使えることが多い材料)

  • 現在の病院の紹介状・診療情報提供書(過去の受診歴が書かれていることがある)
  • お薬手帳(開始時期の推定)
  • 領収書、予約票、検査結果
  • 健康保険の受診記録(分かる範囲)

次の一手

  • 受診歴メモを更新し、年金事務所で「初診日認定の段取り」を確認
  • 初診日が特定できない場合でも申請できる場合がある(要相談)

「カルテがない場合の全手順」

Q3. 初診が内科で、後から心療内科に移りました。初診日はどっちですか?

A. 原則は“原因となった症状で最初に受診した日”です。

例えば不眠・動悸・体調不良で内科受診→後に精神科、という流れはよくあります。
この場合、内科受診が障害の原因と連続しているなら、内科が初診になることがあります。

対処

  • 内科受診時の症状が、現在の傷病と連続しているかを整理
  • 受診歴メモに「当時の症状(事実)」を書いておく

次の一手

  • 年金事務所で「初診の取り扱い」を確認(担当者固定で進めると楽です)

Q4. 生活は崩れているのに、診断書が軽い(2級っぽくない)です

A. ほとんどは“医師の認識ズレ”です。診断書依頼前のすり合わせが鍵。

診察室では話せてしまう、身だしなみを整えて行けてしまう——
それだけで医師の評価が軽くなることがあります。

対処(最優先)

  • 別紙「生活実態メモ」を作り、医師に渡す
  • 「診察室だと実態が伝わりにくいのでメモを作りました」と切り出す

次の一手

  • 診断書の評価と、別紙の事実が一致するように「材料」を揃える
  • “感情”ではなく「頻度/援助/結果」で伝える

Q5. 診断書を医師に頼んだ後で、内容が違うと気づきました。書き直してもらえますか?

A. 可能性はありますが、高くはありません。だから“依頼前”が理想です。

一度完成した診断書の大幅修正は、医師側の負担も大きく、難しいことが多いです。

対処

  • まず「不足している事実」を別紙で整える(生活実態メモ)
  • 医師には「診断書作成の参考として追加メモを作った」と丁寧に渡す
  • いきなり修正要求ではなく、「補足資料」を出す形が角が立ちにくいです

次の一手

  • 次回以降は必ず「依頼前に生活実態メモ→すり合わせ」をセットにする

Q6. 働いていると不利ですか?(就労中でも可能?)

A. “働いている=不可”ではありません。ただし、生活の崩壊が書けないと弱くなります。

就労がある場合、審査側は「社会生活が成り立っている」と見やすい。
だからこそ、就労の話より先に、生活の土台の崩れを事実で出す必要があります。

対処

  • 就労は「感情」ではなく「機能低下(事実)」で書く
  • 生活は別紙で厚く(頻度・援助・結果)

次の一手

  • できていることも少し書いて“波”を説明(無理している実態を出す)

○「働きながら障害年金はもらえる?」

Q7. 家族の援助が多いのに、本人が「自分でやってます」と言ってしまいます…

A. それが一番もったいないです。援助は“等級の材料”です。

援助がある=甘えている、ではありません。
援助が必要な状態であること自体が、生活能力低下の証拠になります。

対処

  • 別紙に「誰が、週何回、何をしているか」を具体的に書く
  • 例:服薬セット、予約電話代行、買い物同行、金銭管理、声かけ 等

次の一手

  • 家族に聞き取りし、「本人が自覚していない援助」も拾う

Q8. 窓口は市役所・区役所ですか?年金事務所ですか?

A. 原則は市役所・区役所(国民年金)ですが、実務上は年金事務所で相談・提出まで進めるのがおすすめです。

理由は2つ。

  • 年金業務の専門性が高く、論点整理が進みやすい
  • 次回予約をその場で取り、同じ担当者で進めやすい(担当者固定)

市役所・区役所は、住民票や戸籍などを同じ庁舎で揃えやすいメリットがあります。
ただ、申請を前に進めるなら、年金事務所で継続相談→提出まで、が最短になりやすいです。

○この完全ガイドは「制度と書類の全体像」です。
窓口の分岐や電話番号など、地域の動き方は地域別ページが早いです。

Q9. 不支給になったら終わりですか?

A. 終わりではありません。まず“どこで負けたか”を特定します。

不服申立としての審査請求や、再請求といった道があります。まずは「なぜ駄目だったか」を考えましょう。

不支給の原因は大きく3つに分かれます。

  • 初診日・納付要件など、制度要件で止まった
  • 診断書の評価が軽い(材料不足・認識ズレ)
  • 申立書と診断書の整合性が弱い(裏付け不足)

対処

  • 決定理由(どこが争点か)を整理
  • 別紙(生活実態メモ)を作り直し、材料の不足を埋める
  • 必要なら専門家に相談し、戦略を立て直す

次の一手

  • 「感情」ではなく「事実」を増やす
  • 医師の認識ズレを埋める(メモで伝える)

第11章まとめ:詰まったら「材料(事実)」に戻る

  • 初診日が曖昧 → 受診歴メモ
  • カルテがない → 追える証拠から固める
  • 診断書が軽い → 生活実態メモで認識ズレを埋める
  • 就労中 → 生活の崩壊を先に出す
  • 不支給 → どこで負けたか特定し、材料を増やす

第12章 まとめ:事実を伝えることは、自分を守ること(最後にやること一覧)

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
最後に、いちばん大事なことを一言で言います。

障害年金は「苦しさの競争」ではありません。
あなたの生活がどれだけ崩れているかを、事実として伝える制度です。

「辛い」「不安」「苦しい」——それ自体は本物です。
ただ、審査が判断できる共通言語に翻訳しないと、書類の上では伝わりにくい。
だから、このガイドは一貫してこう言ってきました。

  • 感情より事実
  • 就労より生活
  • 診断書は依頼前のすり合わせが勝負
  • 申立書は本紙(時系列)+別紙(生活実態)で読みやすく

12-1 このガイドの結論(3つだけ覚えてください)

① 「辛い」を「生活の事実」に変換する

  • 頻度(週○回)
  • 時間(○分/○時間)
  • 援助(誰が何を)
  • 結果(放置すると何が起きる)

この4点が入ると、審査側が判断できる文章になります。

② 就労は“結果”。土台は日常生活能力

仕事の話は大事です。ただ、等級の勝負所では「生活の崩壊」が土台になります。
生活が崩れているから就労も崩れる——この順番で書くのが強いです。

③ 勝負は診断書の前に決まる

診断書を書いてもらってから「思っていたのと違う」となるケースは多い。
でも、診断書の大幅修正は難しいことが多い。
だから、診断書依頼前に生活実態メモを作り、医師の認識ズレを埋めます。

12-2 最終チェックリスト(この順で進めればOK)

Step1:初診日・受診歴の土台を作る

  • □ 受診歴メモを作った(病院名・時期・転院順)
  • □ 初診日の当たりがついた(完璧な日付でなくてOK)

Step2:生活の事実を集める(ロボット視点)

  • □ 直近1週間ログをつけた
  • □ 7項目(食事・清潔・金銭・通院服薬・対人・安全・社会性)に整理できる

Step3:窓口で段取りを決める(手戻り最小)

  • □ 年金事務所で相談した(原則が市役所・区役所のケースでもOK)
  • □ 次回予約をその場で取った(担当者固定ができると楽)

国民年金の窓口は原則市役所・区役所ですが、実務上は年金事務所で相談・提出まで進めるのがおすすめです(専門性+担当者固定)。

Step4:診断書を依頼する前に、医師へ渡す材料を作る

  • □ 「生活実態メモ(別紙)」を作った(頻度/時間/援助/結果)
  • □ 医師に渡す「メモ」を用意した

Step5:申立書を仕上げる(本紙+別紙)

  • □ 本紙:時系列(発症→初診→経過→悪化→現在の要約)
  • □ 別紙:日常生活状況(生活実態メモ)
  • □ 診断書の評価と矛盾がない(波があるなら波を事実で)

12-3 「次に何をすればいいか」が分からなくなった時の合言葉

迷ったら、これに戻ってください。

「感情」ではなく「行動(不行動)」
「主張」ではなく「頻度・援助・結果」
「一発勝負」ではなく「担当者固定で前に進める」

12-4 最後に:あなたの生活を守るために

自分の「できないこと」を書き出すのは、しんどい作業です。
惨めに感じる人もいます。私もそうでした。

でも、それは「弱さの告白」ではありません。
あなたの生活を守るための、制度上の“証拠集め”です。

どうか、胸を張る必要はありません。淡々とでいい。
今のありのままの生活を、事実として書いてください。
その事実が、あなたの生活を守る盾になります。

ここまで読み進めたあなたは、すでに「申請の勝ち筋」を掴んでいます。
あとは、生活の事実(頻度・時間・援助・結果)をきちんと揃えて、診断書と申立書(本紙+別紙)を矛盾なく組み立てるだけです。

もし今、

  • 初診日が曖昧で止まりそう
  • 診断書が軽くなりそうで不安
  • 別紙(生活実態メモ)をどう書けばいいか迷う
  • 一度不支給になってしまった

こうした状況なら、早めに「どこが弱点か」を特定して、手戻りを減らすのがおすすめです。
特に、医師に診断書を依頼した後よりも、依頼する前の相談の方が、整えられる幅が大きくなります。

状況整理から一緒に進めたい方は、こちらからご相談ください。

○この完全ガイドは「制度と書類の全体像」です。
窓口の分岐や電話番号など、地域の動き方は地域別ページが早いです。

社会的治ゆとは?初診日が遡りそうな人が知っておくべき“リセット”の考え方(愛知の障害年金)

2025-11-14

「子どもの頃に発達障害の傾向を指摘されたことがある」
「大人になってからADHDと診断され、その後にうつ病(適応障害・双極性など)になった」
「昔の受診歴があるせいで、初診日がめちゃくちゃ古くなるかもしれないと言われた」

もしあなたが今、こうした状況で障害年金(特に精神)を検討しているなら、この記事は役に立ちます。

障害年金は、“初診日(いちばん最初に医師にかかった日)”が土台です。
ところが精神の分野では、病歴のつながり方によって初診日が過去へ遡ってしまう
ことがあります。

そして初診日が遡ると、

  • もらえる年金の種類が変わる
  • 納付要件で不利になる
  • 古い病院の証明が取れず詰む
    など、現実的にキツい問題が起きやすいです。

そこで出てくるのが、「社会的治ゆ(しゃかいてきちゆ)」という考え方。
ざっくり言うと、
「いったん社会生活が安定していた期間があるなら、法律上は“治った扱い(リセット)”にできる可能性がある」というロジックです。

この記事では、

  • なぜ初診日が遡るのか
  • 初診日が遡ると何が困るのか
  • その回避の方向性として「社会的治ゆ」がどう使われるのか
  • 認められる目安と、集めたい材料
    を、順番が唐突にならないように整理して解説します。

※注意:この記事は一般的な考え方の解説です。実際の可否は個別事情(病歴・就労・治療状況・資料の残り方)で変わります。


この記事で分かること

  • 「社会的治ゆ」とは何か(何を“リセット”できるのか)
  • 初診日が遡る仕組み(相当因果関係)
  • 初診日が遡ると困ること(3つ)
  • “遡り”を回避する方向性と、その中で社会的治ゆが出てくる位置づけ
  • 社会的治ゆが認められる目安(期間・治療・就労など)
  • 主張を通すための材料(証拠)と、申立書での書き方の方向性
  • 愛知で実際に手続きを進める時の導線(主柱ページへの案内)

第1章 まず前提|「社会的治ゆ」は何を解決するための考え方?

社会的治ゆは、いきなり使う“裏技”というより、困っている状況(=初診日が遡って不利になる)を回避するための1つのロジックです。

ポイントはここです。

  • 障害年金の審査では、病気が「別」か「一体」かが問題になる
  • 一体扱いになると、後の病気の初診日が、前の病気の初診日へ遡ることがある
  • その“遡り”が不利になりやすい
  • そこで「いったん区切れる(リセットできる)」という発想が必要になる
  • その代表が「社会的治ゆ」

つまり社会的治ゆは、
「遡りが起きそう」→「不利」→「なんとか区切れない?」
この流れの中で出てくる、回避策の位置づけです。


第2章 なぜ起きる?|相当因果関係で「初診日が遡る」仕組み

障害年金の世界には、相当因果関係という考え方があります。

簡単に言えば、
「前の病気がなければ、後の病気は起こりにくかった」
と医学的・社会通念上判断される場合、2つの病気を一連のもの(ひとつの流れ)として扱う、というルールです。

たとえば身体だと、糖尿病→合併症、のような分かりやすい因果関係があります。
精神の分野でやや厄介なのは、発達特性(ASD/ADHDなど)→社会適応の困難→二次障害(うつ・適応障害・不安など)という流れが、審査ロジックとして“つながりやすい”ことです。

この「つながる」判定がされると、何が起きるか。

  • いまのうつ病で初めてメンタルクリニックに行った日が“初診日”ではなく
  • 子どもの頃の発達相談(療育・児童精神科)などの受診日が“初診日”として扱われる

こうして、初診日が過去へ遡ることがあります。


第3章 初診日が遡ると何が困る?(ここがまず腹落ちポイント)

ここは大事なので、結論から言います。

初診日が遡る=不利になる可能性が一気に上がる
(もちろん逆に有利になる場合もありますが、実務では“困る”ことが多いです)

困る代表例は3つです。


困ること①:もらえる年金の種類・金額が変わる可能性

初診日の時点で加入していた年金で、原則として窓口や年金の種類が変わります。

  • 初診日が 厚生年金(第2号)/第3号 にある → 障害厚生年金の可能性
  • 初診日が 国民年金(第1号)/未加入が絡む → 障害基礎年金中心の扱い など

初診日が過去へズレると、「本来は厚生年金のはずだったのに…」というズレが起き得ます。
(※20歳前傷病扱いになる等、別の論点が出ることもあります)


困ること②:納付要件で詰む(昔の未納が響く)

障害年金は「保険」なので、原則として保険料の納付要件が見られます。

初診日が昔に遡ると、
「その当時、未納が多かった」
「免除が入っていない」
などで、納付要件の論点が不利になりやすいです。


困ること③:証明できず詰む(カルテ廃棄・閉院)

初診日を証明するのは、基本的に資料勝負です。

でも、初診日が10年前・15年前・子ども時代…となると、

  • 病院が閉院
  • カルテが保存期間経過で破棄
  • そもそもどこに通ったか記憶が薄い
    が起きやすい。

結果として、「初診日を証明できず、請求が進まない」という最悪の詰まり方をします。


ここまでのまとめ

初診日が遡ると困るのは、要するに、

  • 年金の種類が変わる
  • 納付要件が厳しくなる
  • 証明が取れず止まる

この3つが同時に起き得るからです。

ここまで読んで「じゃあどうすれば…」となると思います。
次章で、“遡り”への向き合い方(回避の方向性)をいったん整理します。


第4章 じゃあ、どう回避する?|“初診日の遡り”への考え方は2つある

初診日が遡りそうなとき、現実の打ち手は大きく2つです。


方向性①:初診日を徹底的に固める(証明の戦い)

つまり、
「結局いちばん最初はどこ?」
を徹底的に確定し、証明する方向です。

この方向性が必要になるのは、

  • 初診日が曖昧
  • 受診歴が飛んでいる
  • “もっと前に受診あり”が出そう
    などのケース。

この領域は、別記事でしっかり手順化しています。


方向性②:過去と今を「分ける」ロジックを作る(主張の戦い)

「過去の受診は確かにある」
でも
「その後、長い期間、普通に学校・仕事・生活ができていた」
なら、法律上は“いったん治った扱い”として区切れないか?

この発想が、社会的治ゆです。

つまり社会的治ゆは、
「遡ると困る」→「区切れないと詰む」→「区切る理屈(=社会的治ゆ)」
という流れで登場します。

では、ここからようやく「社会的治ゆそのもの」に入ります。


第5章 社会的治ゆとは?|“一度治った扱い”で初診日を切り替える考え方

社会的治ゆを一言でいうと、

「一定期間、治療を必要とせず(または軽微で)、社会生活を安定して送れていたなら、法律上は“一度治った”とみなして、初診日を切り替えられる可能性がある」

という考え方です。

ここで重要なのは、医学的な完治ではありません。
あくまで年金の実務として、社会生活の安定(就労・就学・生活)が強く見られます。

そして、社会的治ゆが認められると、何が変わるか。

  • 過去の病気と、今の病気を「一連」として扱わず
  • 途中でいったん区切って
  • 今の悪化・再発の受診日を「新しい初診日」として主張する余地が出る

つまり、相当因果関係で“つながりやすい”ケースでも、
「途中でいったん社会的に回復していた(だから区切れる)」
という理屈で、初診日の遡りを止めることを狙います。


第6章 社会的治ゆが認められる目安(期間・治療・就労)

社会的治ゆは、誰でも簡単に認められるわけではありません。
審査側に「本当に区切れる状態だった」と納得してもらう必要があります。

よく見られる目安を、ざっくり整理します。


目安①:一定の期間が空いている

明確な法律の年数があるわけではありませんが、実務上は年単位で見られます。
よく言われる目安として「5年」などが出ますが、ここはケースで動きます。

大事なのは、単に年数だけでなく、中身(生活の安定の質)です。


目安②:治療・服薬が中断している(または軽微)

原則として、

  • 通院が途切れている
  • 服薬がない
    が強い材料になります。

ただし、実務では

  • “経過観察レベル”
  • ごく少量で安定
    などのグレーゾーンもあり得ます。
    ここは「どの程度の治療だったか」を丁寧に整理します。

目安③:就学・就労が安定している(最重要になりやすい)

ここがいちばん強いです。

  • 一般雇用で、長期に勤務
  • フルタイムに近い形で継続
  • 大きな配慮なしで回っていた
    などは、社会的治ゆの主張を支える柱になりやすい。

逆に、

  • 断続的な短期離職
  • 強い配慮が常態化
  • 生活が常に不安定
    だと、主張が弱くなることがあります。

目安④:日常生活が安定している

仕事だけでなく、生活がある程度回っていたかも見られます。

  • 生活リズム
  • 対人関係
  • 金銭管理
  • 家事や通院の自己管理
    など、「社会生活の安定」を支える情報が材料になります。

注意:条件を満たせば自動で通る、ではない

社会的治ゆは“主張の技術”です。
「治ってたよね?」ではなく、
「この期間は社会生活が安定していた」を、資料と整合性で積み上げます。


第7章 ケースで理解|よくあるパターン別の判断ポイント

ここからは典型例でイメージを作ります。


ケースA:子ども時代に発達特性で受診 → 成人後にうつ

このケースは、相当因果関係でつながりやすいです。
ただし、子ども時代の受診後に、

  • 長期間、精神科受診なし
  • 学校生活が安定
  • 社会人として就労が安定(数年単位)

があるなら、社会的治ゆの主張を検討する余地が出ます。


ケースB:昔少し通院 → 何年も受診なし → 再発

このタイプは、社会的治ゆのストーリーが作りやすいことがあります。
鍵は「何年も受診していなかった期間の生活がどうだったか」です。


ケースC:受診は続いているが、就労は長く安定していた

ここが難所です。

受診が続いていると「治ゆと言えるの?」となりやすい。
ただし“内容”が軽微で、就労が安定しているなど、主張の組み立て次第のケースもあります。

このあたりは、申立書と資料の整合性が勝負になります。

〔病歴・就労状況等申立書(設計図)〕作成中


第8章 証拠の集め方|“主張”を通す材料を揃える

社会的治ゆは、「言ったもん勝ち」ではありません。
審査側が納得できる材料があるほど強いです。


強い材料になりやすいもの(例)

  • 就労の継続を示すもの
    • 在籍証明、雇用契約、給与明細、勤務証明、出勤記録 など
  • 就学の継続を示すもの
    • 卒業証明、成績証明、在学証明 など
  • 受診中断(または軽微)を示す経緯整理
    • いつからいつまで通院が途切れていたか
    • 投薬がどの程度だったか
  • 生活の安定を示す事情
    • 周囲の支援の有無、生活が回っていた状況(客観的に)

申立書での書き方の方向性(超重要)

社会的治ゆの主張は、申立書の中で「流れ」として見せます。

  • (過去)子ども時代の受診の内容・回数
  • (区切り)その後、治療が不要になった/受診が途切れた
  • (安定期)学校/就労/生活が安定していた事実(期間と形)
  • (再発)何がきっかけで、どのように崩れ、再受診に至ったか

この“区切りと安定”が、社会的治ゆの芯です。


第9章 実務の注意点|やりがちな失敗を先回りで潰す

ここ、地味ですが超大事です。


失敗①:「初診日、これでOK」と早合点して後から崩れる

精神の初診日は、資料の読み込みが甘いと後で崩れます。
たとえば 受診状況等証明書 の「初診日欄」だけ見て安心してしまうケース。

経過欄に

  • 「以前に他院受診あり」
  • 「紹介で受診」
  • 「以前より同様症状があり受診」
    などがあると、「もっと前があるよね?」となり得ます。

この点は別記事でチェックリスト化しています。


失敗②:医療機関への聞き方が甘い

単に「初診日を教えてください」だと、
その病院の初診日だけ返ってきて、他院があるのに気づけないことがあります。

確認するなら、

  • 他院からの紹介がないか
  • 以前の受診歴が記載されていないか
    まで聞くのが安全。

口頭説明が難しい時は、費用はかかりますが、やはり受診状況等証明書を取るのが確実です。


失敗③:「社会的治ゆでいけるはず」と思い込み、材料が足りない

社会的治ゆは、材料が弱いと通りません。
「安定していた期間の就労の裏付け」が薄い、
「治療が継続していたのに説明がない」
などで崩れます。

“主張”より先に、まず材料の棚卸しが大事です。

〔無料チェックリスト〕


第10章 次にやること|あなたの状況別・読む順番(愛知の導線)

ここから先は、「あなたが今どこで詰まっているか」で読む順番が変わります。
当てはまるところだけでOKです。


① 初診日が曖昧/転院が多い/昔の受診がありそう

まずは初診日を固める手順を先に。


② 申立書・診断書まで含めて“全体設計”を知りたい

社会的治ゆの主張は、申立書の設計が重要です。

〔障害年金申請・完全ガイド〕


③ 愛知でどこに相談し、どう進めるか(窓口・予約・持ち物)

手続きの窓口は原則「初診日の加入年金」で分かれますが、実務上は年金事務所で事前相談→担当者固定→そのまま提出までがスムーズなことが多いです(国民年金のケースでも相談・提出まで進められる場合があります)。
一方、市役所・区役所は住民票や戸籍を同じ庁舎で揃えやすいメリットがあります。

まず全体の入口はここ。
〔愛知県版(窓口の分岐・予約・準備)〕


④ 名古屋市・春日井市の人(市別で運用・連絡先まで整理したい)


まとめ|「遡ると困る」からこそ、“区切るロジック”を知っておく

社会的治ゆは、精神の障害年金で起きやすい
「初診日が遡って不利になる問題」に対して、
“区切れる可能性”を作るための考え方です。

ただし、これは雰囲気で押し切る話ではなく、

  • どれだけ安定していたか
  • どんな治療状況だったか
  • 就労・就学の裏付けがどれだけあるか
    を、資料と整合性で積み上げる話になります。

もし「自分のケースはどっち方向で行ける?」が曖昧なら、
まずは状況の棚卸しが一番早いです。


まずは無料チェックリストで“争点の棚卸し”をしてください

社会的治ゆが論点になる人は、たいてい

  • 初診日の候補が複数ある
  • 受診歴が飛んでいる
  • 就労の安定期がある
  • でも資料の出し方が分からない
    という状態になりがちです。

そこで、最初にやるのは「整理」です。

「まずは話を整理したい」という段階でも大丈夫です。
状況に合わせて、何から始めるのが最短か一緒に整理します。


運営者情報

  • 監修:社会保険労務士 渡邊智宏
  • 対応地域:名古屋市中心+愛知県全域
  • お問い合わせ:〔フォームURL〕/〔電話:0568-92-4864〕

更新履歴

  • 初版:2025年11月14日
  • 最終更新:2026年1月28日

「良くなったら打ち切られる」という恐怖。障害年金の“更新制度”は、本当に私たちのための制度なのか?|当事者社労士の提言

2025-10-15

2年に一度、あるいは5年に一度、あなたのもとに届く一枚の封筒。「障害状態確認届」。
いわゆる、障害年金の「更新」手続きのお知らせです。

その封筒を見るたびに、「少し調子が良くなったと書かれたら、打ち切られるかもしれない…」という、冷たい恐怖に心が重くなっていませんか?
生活を守るための、かけがえのない命綱であるはずの障害年金が、いつしか、あなたの回復への道を縛る“呪い”になってはいないでしょうか。

こんにちは。愛知県春日井市で、精神疾患の障害年金を専門とする社会保険労務士の渡邊智宏と申します。そして私自身も、双極性障害を患い、この「更新」という名の見えないプレッシャーと闘ってきた、一人の当事者です。

この記事は、単なる更新手続きの解説書ではありません。
更新制度が、私たち当事者に与える「回復してはいけない」という残酷な矛盾を、私自身の経験も交えて正直に語り、専門家としてその構造的な課題を分析し、そして、私たちが本当に安心して治療に専念できるための「あるべき姿」を、あなたと一緒に考えるための、未来への提言です。


〈目次〉


はじめに:希望の年金証書が、“恐怖の通知”に変わる日

障害年金の受給が決まった、あの日のことを覚えていますか。
何ヶ月もの間、「果たして認定されるだろうか」という不安な夜を過ごし、ようやく届いた年金機構からの封筒。震える手でそれを開け、中に「年金証書」を見つけた時の、あの深い安堵感。

「これで、ようやく一息つける」
「何とか、生きていける」

あの時、私たちは、確かに未来への希望を繋いだはずでした。

しかし、その希望は、次の「更新」という日付が近づくにつれて、少しずつ薄れていきます。そして、いつしか「次は通らないかもしれない」という、新たな不安へと姿を変えていくのです。

「最初の請求から何年も経った。病状が良くなっていると書かれてしまうのではないか」
「最近、少し調子がいい日が増えたから、もう打ち切られてしまうのではないか」

あなたの心の中にも、今、そんな思いが渦巻いているのではないでしょうか。


【第一部:当事者の告白】“良くなってはいけない”という、見えない檻

正直に話せない診察室:「元気のないフリ」をしてしまう心理

障害年金の更新日が近づくと、私たちの心は、診断書の内容のことで頭がいっぱいになります。「以前より良くなった」と書かれたら、どうしよう。その不安が、無意識のうちに、私たちの言動を歪めていきます。

誰もが考えるのは、「調子が悪いこと」を医師にアピールすることです。
それまで、少しでも回復してきたことを素直に喜んでいたはずなのに、「良いことばかり伝えたら、マズいかもしれない」という計算が働いてしまう。そして、無意識のうちに、医師の前で「調子が悪い自分」を演じてしまうのです。

回復を喜ぶべきなのに、喜べない。
生活を支える命綱を失う恐怖が、私たちの心を、そんな矛盾した状態に追い込むのです。

私にも、経験があります。
社労士として開業したばかりの頃、仕事だけでは到底生活できず、障害年金が本当に頼りでした。そんな中、更新の時期が近づくと、やはり身構えました。

少しずつとはいえ、仕事を始めた。この事実が、どう評価されるのだろう。
その不安が、常に頭の片隅にありました。

もちろん、仕事が完全に軌道に乗り、年金がなくても十分に食べていけるようになっていれば、話は別です。「打ち切りは寂しいけれど、これが社会復帰ということだな」と、納得できたかもしれません。

しかし、現実は、そこまで甘くありません。
少しずつ良くなっているのは確かでも、ふさぎ込んで一日中外出できない日も、まだたくさんある。その、まだら模様の現実が、診断書一枚で、白か黒か、どう判断されてしまうのか。それが、ただただ不安でした。

だから、医師には、症状が悪いことを書いてほしい。と同時に、「余計なことは書かないでくれ」とも願ってしまう。

「今週はどうでしたか?」という医師の問いに、以前なら「まあまあでした」と答えていたところを、更新が近づくと、曖-昧な返答は避けるようになります。良かったことは心の奥にしまい込み、悪かったことだけを、少しだけ強調して伝えてしまう。

嘘をついているわけではない。しかし、何か釈然としない。
なぜなら、心のどこかで「回復することが、悪いことだ」と考えてしまっている自分に、気づいてしまうからです。

治ってほしい、と願いながら、今回の診断書には、その「回復」を書いてほしくない。
この痛切なジレンマ。
障害年金の更新を経験したことがある方なら、きっと、この気持ちを分かっていただけるのではないでしょうか。

社会復帰へのブレーキ:挑戦をためらわせる「打ち切り」の恐怖

長い闘病生活の中で、少しずつ心が回復してくると、誰しもが「社会復帰」について考え始めます。
「少し、アルバイトをしてみようかな」
「興味のある資格の勉強を、始めてみようかな」

それは、暗いトンネルの先にようやく見えてきた、ささやかで、しかし何よりも尊い希望の光です。
しかし、その光に手を伸ばそうとした瞬間、私たちの頭を、冷たい恐怖がよぎります。

「“働ける”と判断されたら、年金が打ち切られてしまうのではないか?」

この恐怖が、せっかく芽生えた前向きな気持ちを、無惨にも踏みにじってしまうのです。

障害年金2級の認定基準には、「労働によって収入を得られない程度のもの」という一文があります。このため、現実問題として、「仕事ができている」という事実があると、2級の認定は非常に難しくなります。私も、どう見ても2級に該当するほど症状が重い方が、ただ「働いている」という、たった一つの理由だけで、不支給となった事例を、これまで嫌というほど見てきました。

障害年金の審査において、「就労」は鬼門なのです。

その現実を知っているからこそ、私たちは、仕事を始めることに、ためらいを覚えてしまう。
もちろん、社会復帰が叶い、しっかりと安定して働けるようになったのなら、年金の打ち切りは当然のことです。

しかし、私たちが踏み出そうとしているのは、そんな確固たる一歩ではありません。
「続くかどうか分からないけど、少しだけ、挑戦してみたい」
「いつまた、挫けてしまうか分からないけど、それでも、前に進みたい」

そんな、おっかなびっくりで、震えるような、ささやかな一歩なのです。
最初の1ヶ月は、無理をしてでも頑張れるかもしれない。でも、半年、一年というスパンで見れば、その無理がたたって、再発してしまうかもしれない。

それなのに、たった一度の更新が、その尊い挑戦の芽を摘み取ってしまうかもしれない。
生活を支える命綱であるはずの障害年金が、皮肉にも、社会復帰への道を阻む「障害」になってしまう。

この、あまりにも大きな矛盾が、今の更新制度には、存在しているのです。


【第二部:専門家の分析】なぜ、これほどまでに「更新」は怖いのか?

ここまで、当事者としての感情的な側面をお話ししてきました。
しかし、私たちが抱えるこの不安は、単なる気のせいではありません。それは、現行の更新制度が抱える、3つの構造的な課題に起因しているのです。ここからは、社会保険労務士として、その課題を冷静に分析していきます。

課題①:たった一枚の診断書で未来が決まる「一点評価」の危うさ

うつ病や双極性障害は、「症状の波」があることが、その本質です。調子の良い時期もあれば、悪い時期もある。その波の中で、私たちは生きています。

しかし、障害年金の更新審査は、原則として、提出された診断書一枚で完結します。
もちろん、医師はその波を考慮して診断してくれるはずです。しかし、診断書には「過去1年の経過」といった長期的な視点で症状を記述する欄はなく、どうしても「診断書作成時点」という「点」での評価に偏りがちです。

「たまたま、調子が良かった1ヶ月」に書かれた診断書が、その後のあなたの数年間の生活を、左右してしまう。その危うさが、今の制度には内在しているのです。

課題②:「良くなる=不支給」という、回復と矛盾する0か100かの判定

症状が少し改善した、という事実が、「支給」か「不支給」かという、あまりに極端な判断に直結してしまう。これも、大きな問題です。

特に、国民年金(障害基礎年金)の対象者にとって、この問題はより深刻です。
障害厚生年金には、比較的症状が軽い場合でも支給される「3級」がありますが、国民年金にはそれがなく、原則「2級」以上でなければ支給されません。

つまり、2級という重い状態から、少しでも回復の兆しが見えると、即「不支給=収入ゼロ」という崖っぷちに立たされてしまうのです。
これでは、自身の回復を素直に認めることなど、到底できません。その恐怖が、回復へのブレーキとなり、社会復帰を遅らせる原因にもなっているのです。

課題③:申立の機会がない!声なき声が届かない、一方的な審査構造

そして、私が最も大きな制度上の欠陥だと考えているのが、この点です。
初めて障害年金を請求する時、私たちは、医師の診断書だけでなく、自分自身で作成する「病歴・就労状況等申立書」を提出します。これは、自分の言葉で、これまでの苦しみや、日常生活の困難さを、審査官に直接伝えることができる、唯一の機会です。

しかし、更新時には、この最も重要な「申立の機会」が、制度として保障されていません
提出を求められるのは、原則、医師が書いた診断書一枚だけなのです。

その結果、どうなるか。
「働いている」という、たった一行の事実。その裏にある、どれほどの苦労、どれほどの無理、どれほどの周囲の支援があるのか。診断書に書ききれない、そのリアルな声を、私たちは伝える術を持たないのです。

これでは、あまりに一方的ではないでしょうか。
当事者の「言い分」を聞く場がないまま、未来が決められてしまう。この構造こそが、私たちの更新への不安を、決定的なものにしているのです。


【第三部:未来への提言】私たちが本当に“安心して”社会復帰できる制度へ

問題点を指摘するだけでは、何も変わりません。
当事者として、そして日々現場で格闘する専門家として、私が考える「あるべき更新制度」の姿。それは、「0か100か」の思考から脱却し、私たちの“ゆるやかな回復と社会復帰のプロセス”そのものを、丸ごと肯定してくれる制度です。そのための具体的な提言を、3つの視点から述べさせていただきます。

提言①:「就労=即不支給」の思考停止をやめ、「継続性」を評価する仕組みへ

現行制度の最大の欠陥は、「就労」という“点”で物事を判断しすぎることです。
そうではなく、その働き方が
「持続可能」なものなのか、“線”で評価する視点が必要です。例えば、少なくとも1年間、安定して就労を継続できているか。その上で、判断を下すべきです。
「お試し」の就労という、尊い一歩を、制度が邪魔してはなりません。もし、数年に一度の見直しでは追いきれないというのなら、就労している場合は1年更新にするなど、その人の状況に合わせた、きめ細やかな対応をすればいいのです。

提言②:オール・オア・ナッシングからの脱却と、「中間的な評価」の創設

「支給」か「不支給」かという、極端な判定をやめるべきです。
例えば、老齢年金の「在職老齢年金」のように、就労による収入額に応じて、年金額がゆるやかに減額されるような仕組みがあっても良いはずです。
特に、3級のない国民年金においては、社会復帰を目指す人々を支えるための、新たな「中間的な等級」の創設が、急務だと考えます。
このような「中間地帯」が保障されて初めて、私たちは「打ち切り」の恐怖なく、「もう少しだけ、働いてみようかな」という一歩を踏み出すことができるのです。

提言③:更新制度に「申立」と「証言」の機会を!

最初の請求時と同様に、更新時にも「病歴・就労状況等申立書」の提出を必須とすべきです。本人の「言い分」を聞く機会がないまま、審査を進めるべきではありません。
さらに、必要に応じて、就労移行支援事業所や、勤務先の上司などからの「証言(意見書)」も提出できる環境が欲しいものです
診断書という「医学の光」だけでなく、申立書という「当事者の魂の叫び」と、意見書という「社会の現実」を組み合わせる
“三位一体の評価”こそが、私たちを安心して社会復帰へと導く、未来の更新制度の姿であると確信しています。


まとめ:安心して「良くなる」権利を、社会全体で考えるために

ここまで、障害年金の更新制度が私たち当事者に与える、複雑なプレッシャーと構造的な課題について、私なりの分析と提言を述べさせていただきました。

この記事を読んで、あなたは何を感じましたか?
「自分だけが不安なわけではなかった」という安堵でしょうか。それとも、「制度そのものが変わらなければ、根本的な解決にはならない」という、ある種の無力感でしょうか。

私自身、この問題について考えを深めるほどに、これは単なる手続き論ではなく、「私たちの社会が、病や障害からの回復というプロセスを、どう捉え、どう支えていくのか」という、より大きな哲学的な問いなのだと感じています。

「良くなること」を、素直に喜べない社会。
挑戦する勇気よりも、打ち切りの恐怖が勝ってしまう制度。

本当に、それで良いのでしょうか。

私がこの記事で提示した「提言」は、まだ小さな声でしかありません。しかし、当事者であり、専門家である私たちが、声を上げ続けること。そして、この記事を読んでくださったあなたが、この問題を「自分ごと」として考え、周りの誰かと共有してくれること。その小さな波紋が、いつか社会全体を動かす大きなうねりになると、私は信じています。

私たちに必要なのは、安心して「良くなる」権利です。

その権利が当たり前になる社会を目指して、私はこれからも、専門家として、そして同じ痛みを分かち合う同志として、考え、発信し続けていきたいと思います。

どうか、更新という大きな不安の波に、独りで飲み込まれないでください。
あなたの苦しみは、あなた一人のものではありません。社会全体で向き合うべき、私たちの共通の課題なのですから。

障害年金は“未来への投資”。うつ病で引きこもった私が、社労士として再生できた本当の理由

2025-10-07

「障害年金をもらったら、もう社会復帰できないのでは?」
「“障害者”というレッテルを貼られ、人生が終わってしまうのではないか?」

そんな不安から、障害年金の請求に、あと一歩を踏み出せないでいませんか。
あるいは、「障害年金をもらうこと」が人生のゴールになってしまい、その先の未来を描けずにいる、ということはありませんか。

かつての私も、全く同じでした。
「障害」という二文字が持つ重さに、プライドが、世間体が、そして未来への恐怖が、心を縛り付けていました。

しかし、今の私なら、断言できます。
私がこうして社会保険労務士として、あなたの前に立てているのは、あの時、勇気を出して障害年金を請求したからに他なりません。

こんにちは。双極性障害の当事者として障害年金を受給し、現在は愛知県春日井市で専門の社労士として活動している渡邊智宏と申します。

この記事は、障害年金が人生の「終わり」や「ゴール」ではなく、あなたの未来の可能性に投資するための、最も賢明な「自己投資」なのだということを、私自身の再生の物語を通じて、あなたにお伝えするものです。

 

〈目次〉

 

はじめに:私が恐れていた「障害年金をもらう」という現実

今でこそ、私は障害年金専門の社労士として、日々多くの方のご相談に乗っています。しかし、かつては双極性障害と診断され、何年もの間、光の差さない部屋で引きこもる日々を送っていました。

そんな私ですが、自分自身が障害年金の対象になるかもしれない、という事実は、この仕事を始めてから比較的早い段階で気づいていました。
社労士として働いているとはいえ、かつての同僚たちのように、毎日フルタイムで、週5日働き続けることは到底できない。日常生活も、同居する両親に頼りきりの部分が多くありました。

同じような病状の方の請求を何人もお手伝いする中で、「今の自分の状態なら、障害厚生年金3級には該当するだろう」という専門家としての確信が、日に日に強まっていきました。

しかし、私は、その事実を知りながら、長い間、自分自身の障害年金を請求しようとはしませんでした。

なぜか。
知識としては、対象になりうることも、受給すれば生活が楽になることも、火を見るより明らかでした。十分に働けず、雀の涙ほどの収入しかなかった当時の私にとって、年金は喉から手が出るほど欲しいものでした。

それでも、ためらいがあったのです。
「障害年金」という言葉に含まれる、「障害」という二文字。
これを受給するということは、自分自身が「障害者」であることを、公に認め、受け入れるということです。そして、これからの人生を「障害者」として生きていく。そのことに、どうしても抵抗感があったのです。

病気である、という意識はありました。しかし、それが「障害」となると、話は全く別次元のように感じられました。
あなたも、今、この時の私と同じ気持ちなのではないでしょうか。

「障害年金をもらう」という現実を受け入れられない。その踏ん切りがつかない。
自分の人生が、どこかで失敗してしまったかのような、深い挫折感。
「普通の人間としてやってきた」という、捨てきれないプライド。
「障害者」として、世間から後ろ指をさされるのではないかという、根拠のない恐怖。

そして何より、「一旦、障害者としての道を歩み始めたら、もう後戻りはできないのではないか」という、漠然とした、しかし強烈な恐れ。

私の躊躇いの根源は、そこにありました。
不十分ながらも、なんとか仕事を再開できた。このまま頑張れば、いつかまた「普通」の生活に戻れるかもしれない。障害年金を受給することは、そのかすかな希望に、自ら水を差してしまうような行為に思えたのです。

あなたも今、同じように、失いたくないプライドと、どうにもならない現実の間で、揺れ動いているのではないでしょうか。

 

【第一部】絶望の淵で見つけた、一本の糸

「もうサラリーマンには戻れない」空白の履歴書が突きつけた現実

引きこもり生活から数年。薄紙を一枚ずつ剥いでいくような、遅々とした歩みではありましたが、私の症状は少しずつ改善の兆しを見せていました。そこで、私は、社会復帰という、当時はあまりに遠く感じられた目標に向けて、重い一歩を踏み出そうと考え始めました。

しかし、いざ「働く」という現実を前にした時、私の目の前に立ちはだかったのは、二つの巨大な壁でした。

一つは、長すぎる職歴の空白期間
仕事を辞めてから、傷病手当金で食いつないだ期間を含め、何年もが経過していました。一般企業に就職しようとすれば、面接官は必ずこう尋ねるでしょう。「この期間は、何をされていたのですか?」と。
「病気で休んでいました」と正直に言えば、雇ってもらえるはずがない。かといって、嘘をつくこともできない。私の履歴書には、取り返しのつかない、大きな欠陥が刻み込まれていました。

そして、もう一つの、より決定的な壁。
それは、「もう、元気だった頃の自分と同じようには働けない」という、紛れもない事実でした。

良くなったとはいえ、万全の状態にはほど遠い。しょっちゅう気分は落ち込み、動けない日もある。理由のない不安に苛まれる朝もある。
毎日決まった時間に起き、満員電車に揺られ、1日8時間、週40時間働き続ける。そんな当たり前のことが、当時の私には非現実的な挑戦に思えました。

この厳しい現実が、私に「もう普通のサラリーマンには戻れない」と、痛いほどに思い知らせたのです。

 

なぜ私は「社会保険労務士」を目指したのか

サラリーマンという道が閉ざされたと悟った時、私は途方に暮れました。
残された選択肢は、いわゆる「自営業」か「フリーランス」。会社という組織に時間を縛られることなく、自分のペースで仕事をコントロールできる。体調の波が激しい自分には、もうそれしかない、と感じるようになりました。

では、何をして生計を立てるのか。
そこで私の頭に浮かんだのが、かつて一度だけ興味を持ち、少しだけ勉強したことがあった「社会保険労務士」という資格でした。専門的な知識を身につけ、専門家として開業する。

引きこもり生活で、有り余るほどあったのは「時間」です。

「これに、賭けてみよう」

それは、絶望の闇の中で見つけた、一本の蜘蛛の糸のような、か細い希望でした。
道が決まれば、やるべきことは一つ。まず、資格試験に合格することです。

とはいえ、すぐに全力で勉強できるような状態ではありませんでした。資格専門学校に申し込む。ただそれだけのことですら、なかなか行動に移せない自分がいました。

それでも、一度申し込んでしまえば、授業は淡々と始まります。週に2回、1回90分。他の受講生は、仕事をしながら通っていました。しかし、当時の私には、その「週に2回、決まった時間に外出する」ということだけで、精一杯でした。

うつ病を経験した方なら、お分かりいただけると思います。この「当たり前」が、どれほど大変なことか。

まずは、学校に通うことだけに集中する。それが何とかできるようになってから、少しずつ、自分で勉強する時間を増やしていく。
そうして、徐々にペースを上げていき、最終的には、仕事をしていないという強みを活かし、1日中勉強に集中できるようになりました。

こうして書くと、当たり前のことを大げさに言っているように聞こえるかもしれません。しかし、病気からの社会復帰とは、これくらいゆっくり、焦らずに進めなければ、すぐに壊れてしまう、脆いものなのです。

その結果、試験には、本当にギリギリでしたが、合格することができました。
何もできなかった自分が、久しぶりに何かを成し遂げた。その事実は、失いかけていた自信を、少しだけ取り戻させてくれました。

 

【第二部】再生の時間を“買う”という選択

開業、そして自分のための障害年金請求という決断

試験合格後、一年間の通信教育を経て、私はついに、念願の独立開業を果たします。
しかし、それは、新たな苦しみの始まりでもありました。

開業したての社労士に、仕事などありません。ホームページを作り、研修に参加し、異業種交流会で名刺を配る。しかし、同期の仲間たちのように、がむしゃらに営業活動をするだけの気力も、体力も、私にはありませんでした。

「自分は病気だから、仕方がない」

その言葉を、言い訳のように心の中で繰り返しながら、仲間たちが仕事を増やしていくのを、焦りと羨望の入り混じった目で見つめていました。
無理をすれば、また壊れてしまう。分かってはいても、収入が不安定な現実は、容赦なく心を蝕んでいきます。

何より辛かったのは、経済的に自立できず、両親に頼らなければ生きていけない、自分自身の情けなさでした。いい年をした大人が、お金を稼げない。家庭の中で感じる居心地の悪さ。それは、病気の辛さとはまた別の、魂を削られるような苦しみでした。

「早く稼いで、自立したい」
しかし、焦れば、再発のリスクが高まる。
この、アクセルとブレーキを同時に踏むような、出口のない板挟みの中で、私は一つの決断をしました。

それが、自分自身の障害年金を請求することでした。

これまで、様々な理由から躊躇していました。しかし、このままでは、焦りから無理をして、全てが元の木阿弥になってしまう。そう感じたのです。

周りの仲間には驚かれながらも、私は、同期の社労士の友人の助けも借りて、なんとか請求手続きをやり遂げました。そして、無事、「障害厚生年金3級」を受給できることになったのです。

 

月5万円の年金が、私に与えてくれた「焦らなくても良いという”心のゆとり”」

障害厚生年金3級の金額は、人によって異なりますが、最低でも月におよそ5万円です。
この、月々5万円という定期収入が、当時の私にとって、どれほど大きな意味を持っていたか。

もちろん、それだけで生活できるわけではありません。しかし、その価値は、金額以上のものでした。

自分の仕事の収入とは別に、「定期的」に、「決まった金額」が、自分の名前で振り込まれる。
この、揺るぎない「安心感」

それは、生活費の足しになるという現実的な意味以上に、私の心に大きな変化をもたらしました。

これまでのように、両親に全面的に依存しなくてもいい。普段の何気ない買い物で、いちいち気兼ねしなくてもいい。この、ささやかな自立感が、失いかけていたプライドを、少しずつ取り戻させてくれました。

そして何より、この月5万円の年金が、私に与えてくれたもの。
それは、「焦らなくても良いという”心のゆとり”」でした。

収入への不安が和らいだことで、私は、目先の仕事を闇雲に追いかけるのをやめました。そして、じっくりと、自分自身と向き合う時間ができたのです。
「自分は、本当はどんな専門家になりたいのか?」
「どんなふうにお客様の力になりたいのか?」

この、障害年金が“つくってくれた”貴重な時間があったからこそ、私は、自分の経験を最大限に活かせる「精神疾患専門」という、今の道を見つけることができたのです。

障害年金があったからこそ、私は自分のペースを守り、無理をせず、着実に専門家としてのキャリアを築くことができた。
そう、障害年金は、私の未来への、何より尊い「投資」だったのです。

【第三部】障害年金は、あなたの未来への「投資資金」になる

私の話は、障害年金が「未来への投資」になった、たった一つの事例にすぎません。
この制度は、単に目先の生活費を補填するだけでなく、あなたの未来の可能性に投資するための、貴重な「資金」にもなり得るのです。

あなたなら、この資金を、何に使いますか?

選択肢①:「学び直し」の時間に投資する

私がそうであったように、新しい資格取得やスキル習得のために、安心して勉強する時間を確保できます。焦らずに自分のペースで学べる環境は、回復途上の心身にとって、何よりの味方となってくれるでしょう。

選択肢②:「心身のリハリビ」に投資する

すぐに社会復帰を目指すのではなく、まずは安定した収入を確保した上で、その先のキャリアをじっくり考える。少し体調に余裕が出てきたら、短時間のアルバイトやボランティアなどから、社会と繋がる練習をする。そんな貴重なリハビリ期間を手に入れることができます。

選択肢③:「新しい挑戦」に投資する

ずっとやってみたかったけれど、収入の不安から諦めていたことに、挑戦することもできます。趣味や創作活動、あるいは小規模な起業。障害年金が、あなたの夢を支える、最低限のセーフティーネットになってくれるのです。

 

まとめ:あなたの可能性を、諦めないために

障害年金をもらうということは、自分自身を「障害者」という枠に、永遠にはめ込んでしまうことではありません。
むしろ、今、あなたを縛り付けている「稼がなければならない」という強迫観念から、あなたを解放してくれる、一条の光となり得るものです。

障害年金は、人生の「終わり」を告げるものではありません。
それは、これまでプレッシャーで塗りつぶされてきたあなたの人生に、「新しいことを考えてもいい時間」という、美しい“余白”を作ってくれる制度なのです。

「これまでと同じようには働けない。けれど、新しい形でなら、まだ輝ける」

どうか、ご自身の可能性を、諦めないでください。
私の仕事は、その未来への「投資」を、あなたが確実に受け取れるよう、お手伝いをすることです。

私がそうであったように、障害年金という光を手に入れ、あなただけの物語の、第二章を始めてみませんか。

 

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【春日井市・体験談】うつ病の私が“本当に信頼できる”精神科・心療内科を見つけるまで|当事者社労士が教える病院探しの全技術

2025-09-29

うつ病や心の不調で、初めて病院のドアを叩く。
その一歩が、どれほど重く、どれほどの勇気がいることか。
そして、その扉の先にある「医師との出会い」が、その後のあなたの人生を、良くも悪くも大きく左右することを、私は身をもって知っています。

こんにちは。愛知県春日井市で、障害年金を専門とする社会保険労務士の渡邊智宏です。そして、あなたと同じように、双極性障害(躁うつ病)という病と共に生きる一人の当事者でもあります。

かつての私も、「どんな先生なんだろう」「何を話せばいいんだろう」「もし、怖い先生だったらどうしよう…」。そんな不安で、予約の電話一本かけることすら、おっかなびっくりだったことを、今でも鮮明に覚えています。

この記事は、特定の病院をおすすめするものではありません。
そうではなく、私自身の苦い経験と、障害年金の専門家として数多くの診断書を見てきた知見から、あなたが「自分にとって、本当に信頼できる主治医」を見つけ出すための、具体的な「探し方の技術」「見極め方のヒント」を、あなたにだけお伝えするものです。

良い医師との出会いは、最高の治療への第一歩です。そして、もしもの時に、障害年金という未来への安心を手に入れるための、最も重要な土台にもなるのです。

〈目次〉

 

はじめに:なぜ「最初の病院選び」が、あなたの人生を左右するのか?

まず、大前提として、私があなたに一番伝えたいこと。
それは、心療内科やメンタルクリニックの治療は、「医師との相性」が全てだということです。どんなに評判の良い名医であっても、あなたが「この先生には、心を許せない」と感じてしまえば、治療の効果は半減してしまいます。

そして、この「相性」は、あなたの病状の回復スピードだけでなく、将来、あなたの生活を守るかもしれない「障害年金」の受給の可否にまで、直接的な影響を及ぼすのです。

「まだ病気になったばかりで、障害年金なんて考えてもいない」
そう思われるかもしれません。私もそうでした。しかし、残念ながら、うつ病などの精神疾患は、長期戦になることが非常に多い病気です。仕事を続けることが、困難になることも珍しくありません。

「すぐに治るはず」という希望とは裏腹に、万が一、闘病生活が長引いた時のことを考えると、障害年金というセーフティーネットの存在を、頭の片隅に置いておくことは、決して無駄ではありません。

実際に、多くの方が、いざ障害年金を請求する段になってから、「最初の主治医選びを間違えたかもしれない・・・」と後悔されています。
なぜなら、障害年金の申請の成否の、実に9割は、その主治医が書く一枚の「診断書」で決まってしまうからです。

だからこそ、最初の病院選びは、絶対に妥協してはいけないのです。あなたの未来のために。

 

【ステップ1:探す】春日井市・近隣エリアで“候補”を見つける方法

ネットの口コミサイト、信じていい?当事者が教える3つの注意点

多くの人が、まずネットの口コミサイトで病院を探すでしょう。もちろん、それは有効な情報源の一つです。しかし、そこにはいくつかのワナが潜んでいます。当事者として、そして専門家として、口コミサイトを見るときの3つの注意点をお伝えします。

  1. 評価の極端さに惑わされない: 絶賛のコメントと、酷評のコメント。両極端な意見は、強い感情に基づいている可能性があります。むしろ、淡々と事実(待ち時間、院内の様子など)を書いている、中立的な意見を参考にしましょう。
  2. 投稿時期の新しさを確認する: 医療機関の情報は、日々変化します。医師が変わったり、方針が変わったりすることもあります。数年前の古い情報よりも、できるだけ最近の投稿を重視しましょう。
  3. あなた自身の症状や求めるものと一致しているか: 「薬をたくさん出す先生」は、ある人にとっては「頼りない」かもしれませんが、別の人にとっては「積極的に治療してくれる良い先生」かもしれません。「話をじっくり聞いてくれる」先生は、待ち時間が長くなる傾向もあります。あなた自身が、医師に何を一番求めているのかを明確にしてから、口コミを読むことが大切です。

 

意外な穴場?「かかりつけ医」からの紹介という選択肢

もし、あなたが信頼している内科などの「かかりつけ医」がいるなら、そこから紹介してもらうのも、非常に有効な手段です。地域の医療ネットワークの中で、「あの先生は、話をよく聞いてくれるよ」「あそこのクリニックは、評判がいいらしい」といった、生きた情報を持っている可能性があります。

何より、あなたが「良い先生だ」と感じている人が紹介してくれる先生です。同じような価値観や考え方を持っている可能性が高く、「相性」の良い医師に出会える確率は、格段に上がるでしょう。信頼できる人からの紹介は、決して侮れません。

 

【地域情報】春日井市から通いやすいのはどこ?エリア別特徴と注意点

あなたの主治医は、これから長い付き合いになるかもしれない、人生のパートナーです。春日井市内に限定せず、少し視野を広げてみることも、良い出会いのために重要です。

うつ状態で長距離を移動するのは、本当に大変なことです。しかし、JR中央本線や名鉄小牧線、あるいは車を使えば、意外とスムーズにアクセスできるエリアがあります。

  • 名古屋市(千種区・中区・金山・名駅エリア):
    JR中央線を使えば、春日井駅から乗り換えなしでアクセスできます。中区も地下鉄の乗り換えは必要ですが、時間もかからずアクセスできます。日本有数の大都市であり、専門性の高いクリニックや、最新の治療法を取り入れている大学病院など、選択肢の幅が格段に広がります。愛知県で最も人口が集中するエリアだからこそ、経験豊富な医師に出会える可能性も高まります。
  • 小牧市:
    名鉄小牧線沿線にお住まいの方や、車での移動がメインの方には、有力な選択肢です。春日井市からもアクセスしやすく、地域に根差した、じっくり話を聞いてくれるクリニックが見つかるかもしれません。
  • 瀬戸市・尾張旭市:
    電車でのアクセスは少し複雑になりますが、車であれば春日井市から比較的近いエリアです。郊外ならではの、落ち着いた雰囲気のクリニックが多い傾向があります。

 

【通院を続けるための、大切な視点】

どんなに素晴らしい先生であっても、あなたが無理なく「通い続けられる」ことが、何よりも大切です。

  • 移動の負担: 人混みが苦手な方が、満員電車に乗って名古屋まで通うのは、それ自体が大きなストレスになります。
  • 予約の取りやすさ: 最近は、初診の予約が数ヶ月先まで埋まっている人気のクリニックも少なくありません。あなたの症状が、そこまで待てる状態なのか、冷静に判断する必要があります。

長期間、定期的に通うことになる、という事実を念頭に置き、ご自身の体調とライフスタイルに合ったエリアで、候補を探してみてください。

 

【ステップ2:見極める】初診の診察室でチェックすべき“5つのサイン”

勇気を出して初診の予約を取り、いよいよ診察室へ。
その、わずか数分から十数分の短い時間で、その医師が「信頼できるパートナー」になり得るかを見極めるための、当事者目線の5つのチェックポイントを伝授します。これは、私自身が多くの病院を見て、沢山の医師と巡り会った末にたどり着いた、実践的なヒントです。

 

サイン①:あなたの「目」を見て、話をじっくり聞いてくれるか

これは、最も基本的で、最も重要なサインです。最近は電子カルテが普及し、パソコンのモニターばかりを見て、患者の顔をほとんど見ずに診察を終える医師も少なくありません。あなたの不安な表情、言葉に詰まる様子、そういった非言語的なサインを汲み取ろうとしてくれるか。目と目を合わせてくれるか。信頼関係は、そこから始まります。中には、カルテ入力を専門のスタッフに任せ、ご自身は患者との対話に集中するという、素晴らしい体制を整えているクリニックもあります。

 

サイン②:薬への不安を理解し、分かりやすく説明してくれるか

初めて精神科の薬を飲む時、多くの人が大きな不安を抱えます。「脳に直接作用する薬」と聞けば、怖くなるのも当然です。どんな効果があり、どんな副作用の可能性があるのか。ネットの不確かな噂に、心をかき乱されているかもしれません。
そんなあなたの不安を理解し、薬について専門用語を避け、分かりやすく丁寧に説明してくれるか。写真付きの一覧表などを見せながら、一つひとつ解説してくれる先生もいます。あなたの不安な立場に立ってくれているかどうかが、ここで分かります。

 

サイン③:治療方針を、あなたと“一緒に”考えてくれる姿勢があるか

「はい、うつ病ですね。お薬を出しておきます」
一方的に診断を下し、治療方針を決めてしまうのではなく、「これから、どうしていきたいか」「薬物治療とカウンセリング、どちらに関心があるか」など、あなたの意向を確認し、一緒に治療のゴールを目指してくれる姿勢があるか。薬が怖いと思っている患者さんに、無理やり服薬を強要するような医師では、信頼関係は築けません。長期的な視点で、あなたの人生に寄り添ってくれるかを見極めましょう。

 

サイン④:診断書など、公的な書類作成への理解があるか

治療に熱心な先生が、診断書などの書類作成になると、途端に後ろ向きになるケースは、残念ながら存在します。初診の段階で見極めるのは難しいかもしれませんが、例えば、医療費の助成制度である「自立支援医療」といった制度について、積極的に教えてくれたり、その申請を快く手伝ってくれたりする先生は、公的な手続きにも理解がある可能性が高いと言えます。

 

サイン⑤:「人として信頼できるか」その直感を信じる勇気

最後は、理屈ではありません。
どんなに経歴が立派で、評判が良い先生でも、「なんとなく冷たい感じがする」「事務的で、流れ作業のように感じる」「話を早く切り上げようとしているのが伝わってくる」・・・。
その、最初に感じたあなたの「直感」を、どうか信じてください。

これからあなたは、この病気の性質上、ご自身の最もプライベートで、繊細な心の部分を、その医師に打ち明けていくことになります。その相手として、人として信頼できるか。その一点を、ご自身の心に問いかけてみてください。

 

【専門家視点】将来、障害年金で後悔しないための“良い医師”を見抜く3つの裏ワザ

ここからは、社会保険労務士としての専門的な視点です。
先ほども述べた通り、治療において良い先生であることと、障害年金の請求において「頼りになる先生」であることは、必ずしもイコールではありません。

闘病生活が長引き、いざ障害年金を考えた時に、「こんなはずではなかった・・・」と後悔しないために。知っておいて損はない、3つの裏ワザをお伝えします。これは、あくまで一つの参考情報ですが、あなたの病院選びの精度を、きっと高めてくれるはずです。

 

裏ワザ①:公的な制度について、積極的に情報提供してくれること

闘病生活においては、様々な公的制度を利用する場面が出てきます。会社を休むなら「傷病手当金」、医療費の負担を減らすなら「自立支援医療」。そうした制度について、こちらから尋ねなくても、「こういう制度がありますよ」と教えてくれる先生は、素晴らしいです。それは、患者の「病気」だけでなく、その先にある「生活」まで、視野に入れてくれている証拠だからです。

 

裏ワザ②:診断書の料金を、待合室などで明確に提示していること

待合室などに、「診断書 〇〇円」「傷病手当金意見書 〇〇円」といった料金表を、きちんと掲示している病院。それは、そうした書類作成の依頼が多く、その経験が豊富である可能性を示唆しています。また、書類作成に前向きな姿勢の表れとも言えます。逆に、そうした掲示が一切なく、料金を尋ねても曖昧な返答しか返ってこない場合は、書類作成にあまり慣れていない、あるいは積極的ではない可能性も考えられます。

 

裏ワザ③:「日常生活」の状況について、具体的に質問してくれること

診察の際、「眠れていますか?」「食欲はありますか?」といった症状の確認だけでなく、「最近、お風呂に入るのが億劫じゃないですか?」「買い物には行けていますか?」といった、具体的な「日常生活」について質問してくれる先生。これは、非常に重要なサインです。
なぜなら、それはあなたの「症状」が、実際の「生活」にどのような影響を及ぼしているのか、という障害年金の審査で最も重視される視点を、医師が持っていることの証だからです。あなたという一人の人間を、「生活者」として捉えてくれている、信頼できる医師である可能性が高いでしょう。

 

まとめ:最高の主治医は、最高のパートナーになる

病院選びは、本当に、孤独で不安な作業です。
しかし、この最初の、そして最も重要なステップを乗り越え、信頼できる主治医という最高のパートナーを見つけることができれば、あなたの治療は、そして、もしもの時の障害年金などの手続きは、大きく前進します。

良い治療も、良い診断書も、医師と患者の共同作業によって生まれるものです。
その共同作業の土台となる信頼関係を築くためにも、どうか焦らず、妥協せず、あなたにとっての「最高の主治医」を探し続けてください。

そして、もし、その長い道のりの途中で、
「今の主治医に、自分の辛さをどう伝えればいいか分からない・・・」
「診断書をお願いしたいけど、どう切り出せばいいか・・・」
そんな風に悩んだ時は、いつでも、私たち障害年金の専門家を頼ってください。

あなたの治療が、そして人生が、より良い方向に進むためのお手伝いをさせていただくこと。
それが、当事者であり専門家である、私の使命です。

 

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【うつ病体験談】働きながら障害年金はもらえる?“無理して出勤する”あなたに、当事者社労士が伝えたい3つの選択肢

2025-09-17
「もう限界だ…。でも、生活のために、仕事を辞めるわけにはいかない」 「周りには元気なフリをしているけど、本当は毎日、心をすり減らしながら出勤している」 あなたは今、そんな風に一人で痛みを抱え、無理をして笑顔の仮面を被っていませんか。 こんにちは。双極性障害(躁う-病)の当事者として絶望の淵をさまよい、現在は愛知県春日井市で障害年金を専門とする社会保険労務士として活動している渡邊智宏と申します。 かつての私も、あなたと全く同じでした。先の見えない不安の中、「働き続ける」ことの苦しさと、「働かなければならない」というプレッシャーの、出口のない板挟みになっていました。 この記事では、「働きながら障害年金を受給する」という選択肢が、いかにあなたの心と生活を守るための賢明な戦略であるか。そして、その先にある新しい働き方の可能性について、私自身の赤裸々な体験と専門家の視点の両方から、徹底的に解説していきます。 障害年金は、仕事を辞めるためだけの制度ではありません。あなたが、あなたらしく働き続けるための、何より力強い「お守り」になるのです。 〈目次〉

【結論】うつ病で働きながらでも、障害年金はもらえます。ただし・・・

まず、あなたの最大の疑問にお答えします。 結論から言えば、うつ病などの精神疾患で働きながらでも、障害年金を受給できる可能性は十分にあります。実際に、働きながら受給している方は、たくさんいらっしゃいます。 しかし、ここには非常に重要で、デリケートな注意点があります。 それは、請求において「あなたの働き方の“実態”を、いかに正しく、そして戦略的に伝えるか」という、専門的な技術が不可欠になる、ということです。 安易に「働いています」とだけ伝えてしまうと、「なんだ、働けるくらい元気なんだな」と判断され、不支給という厳しい結果に繋がる危険性が非常に高いのです。

【私の体験談】「働くこと」に絶望し、再び希望を見出すまで

本題に入る前に、少しだけ、私の話をさせてください。 なぜなら、これからお話しする制度の解説は、この私の原体験と深く結びついているからです。

うつ病と診断されても、辞められなかった会社

私自身もかつて躁うつ病(双極性障害)と診断され、働けなくなるという経験をしました。病気になった当初は、うつ傾向が強く、働く事がとても辛い状況にありました。しかし、うつ病と診断されたからといって、すぐに仕事を辞めるわけにはいきません。生活は、仕事の給料で成り立っている。その大前提がある以上、「辞める」という選択肢は、現実的ではありませんでした。 それに、当時はまだ、この病気がこれほど長く続くものだとは思っていませんでした。「少し休めば、また元通りに働けるはずだ」という、今思えば甘い希望的観測を抱いていたのです。 しかし、病状は待ってくれません。朝、目が覚めた瞬間に襲ってくる、絶望的な倦怠感。「もう今日は、仕事に行けない・・・」そう思いながらも、必死に体を起こし、会社へ向かう。しかし、どうしても耐えられない日もある。そんな日は、「体調不良」を理由に欠勤する。気づけば、欠勤日はどんどん増えていきました。出社しても、強い不安感で仕事に全く集中できない。そんな日々が続いた結果、私は上司に呼び出されました。 「正社員から、アルバイト待遇にならないか」 自由に休まれては困る。アルバイトなら、出勤日を調整しやすいだろう。体調が戻ったら、また正社員に戻ればいい。 一見、温情にも聞こえるその提案が、私には「戦力外通告」のように響きました。しかし、冷静に考えれば、会社側の言い分も分かります。いつ休むか分からない人間を雇い続けるリスク。そして、私自身も、頻繁に休むことで周囲に迷惑をかけているという罪悪感に、押しつぶされそうになっていました。 「もう、この会社にしがみつくのはやめよう」 そう思った日、ちょうど通院日だったので、医師に相談しました。すると、「一旦、休職して仕事から離れることを勧めます」と言われ、そこで初めて「傷病手当金」という制度の存在を知ったのです。働かなくても、一定期間、収入が確保される。その事実が、私の心を決めました。 「一旦、仕事を辞めよう。療養に専念し、元気になったら、また社会復帰すればいい」 そう、単純に考えていたのです。

3日でクビに・・・失われた「働く自信」

実際に退職し、傷病手-当金を受給しながらの療養生活が始まりました。しかし、生活は苦しいまま。社会復帰への焦りだけが募っていきました。 退職から1年ほど経ったある日、知人から「税理士事務所で、簡単なデータ入力のアルバイトをしないか」と声をかけられました。病気のことも知ってくれているし、単純作業なら無理なくできるかもしれない。一縷の望みをかけて、私はその仕事を引き受けました。 しかし、それは、私の「働く自信」を完全に打ち砕く、決定的な出来事となりました。 いざ仕事を始めてみると、簡単なはずの作業が、全く進まないのです。 分からないことにぶつかると、途端に思考が停止し、手が固まってしまう。隣の人に聞けば済む、ただそれだけのことができない。頭の中を、不安と焦りだけがぐるぐると駆け巡る。 自分でも愕然とするほど、仕事ができないのです。 そして、働き始めてから、わずか3日後。 私は呼び出され、「明日から、来なくていい」と、静かに告げられました。 不思議なことに、その言葉を聞いた瞬間、私は心の底から「ホッとした」のです。 こんな状態で働き続けることへの耐えがたい罪悪感から、ようやく解放された。クビにしてくれて、助かった。本気で、そう思いました。 この経験で、私は働くことにすっかり臆病になり、その後、何年にもわたる完全な引きこもり生活へと、沈んでいくことになったのです。

私が選んだ「自営業」という道と、障害年金3級の現実

数年の時が経ち、少しずつ病状が改善してきた頃、私は再び社会復帰を考え始めました。そして選んだのが、今の仕事である「社会保険労務士」です。 なぜ、この仕事を選んだのか。 理由は、「自営業」だからです。 良くなったとはいえ、体調の波は激しい。「今日は動けない」という日が、頻繁にありました。決まった時間に、毎日出社するサラリーマンは、もう絶対に無理だという自覚がありました。
  • 仕事の量を、自分でコントロールできる。
  • 働く時間を、自分の裁量で決められる。
この2点こそが、私が社会復帰するための、絶対条件だったのです。 こうして、私は障害年金の専門家として、仕事を始めました。自分の経験が、誰かの役に立つ。それは、大きなやりがいでした。しかし、働き方は、サラリーマンの兄から「遊んで暮らしている」と揶揄されるような、特殊なものでした。 仕事を始めたばかりの頃は、週に2、3日程度の稼働に抑える。朝、調子が悪ければ、夕方から仕事をする。打ち合わせの予定は、過密にならないよう、自分で調整する。それでも、たまに1週間びっしりと仕事が詰まってしまうと、途端に心身のバランスが崩れ、日常生活がガタガタになりました。 そんな状況の中、私は、自分自身の障害年金の請求を行いました。 働きながらの、請求です。 当然、審査では「就労」の状況が大きなポイントになります。 私は、主治医の先生に、自分の働き方の実情を、ありのままに伝えました。 「社会保険労務士として働いてはいるが、それは自営業だからこそ成り立っている。サラリーマンのようなフルタイムでの就業は、到底不可能です」と。 幸い、先生はその状況を深く理解し、診断書に「フルタイムの就業はできない」という趣旨の一文を書き添えてくれました。 その結果、私は「障害厚生年金3級」を受給することができたのです。 これが、私が病気と共に「働く」ということを、もがき苦しみながら見つけ出してきた、偽らざる実態です。

【専門家解説】なぜ「働いている」と不利になる?審査官が見ている“5つのポイント”

さて、私の体験談からも分かるように、「働きながら」の申請は非常にデリケートです。では、なぜ「就労」の事実は、審査でそれほど厳しく見られるのでしょうか。 それは、障害年金の等級が、「労働がどれくらい制限されるか」という基準で、明確に定義されているからです。
  • 障害厚生年金3級: 労働が著しい制限を受ける程度のもの
  • 障害厚生年金2級: 労働によって収入を得ることができない程度のもの
この定義に照らし合わせた時、あなたが「普通の働き方」をしていると見なされれば、等級に該当しない、と判断されてしまうのです。審査官は、あなたが提出する書類から、以下の5つの客観的なポイントを総合的にチェックし、あなたの「労働能力」を判断しています。

①雇用形態:正社員とアルバイト、その意味の違い

正社員か、パート・アルバイトか、あるいは障害者雇用か。これは、あなたの労働強度を測る最初の指標です。私の例で言えば、「正社員からアルバイトへ」という会社からの提案は、責任の重さや拘束時間の観点から、労働能力が低下していることを示す一つの材料になります。

②勤務状況:タイムカードに映らない「実態」

週何日、1日何時間の勤務か。これは基本ですが、それだけではありません。頻繁な遅刻や早退、欠勤はないか。時短勤務をさせてもらっていないか。雇用条件の数字だけでは見えない「実態」が重要です。私が正社員時代に欠勤を繰り返していた事実は、フルタイムで働ける能力がなかったことの証明になります。

③業務内容:責任の重さと、必要なサポート

責任の重い仕事か、単純作業か。他の人の助けなしに、一人で業務を完遂できているか。私が税理士事務所で挑戦した「単純なデータ入力作業」ですら遂行できなかった事実は、私の就労能力が著しく低下していたことを示す、何よりの証拠でした。

④収入:給与額が示す労働能力

同じ職場で、同じような仕事をしている健常者と比べて、給与額に差はないか。著しく低い場合は、それ相応の働きしかできていない、と判断される材料になります。

⑤職場の配慮:特別なサポートはありますか?

病気のことを職場に伝え、業務量を減らしてもらったり、定期的な面談があったりといった、特別なサポートを受けているかどうかも非常に重要です。これらは、あなたが「配慮なしでは働けない」状態であることを示します。

【最重要】「出勤できている ≠ 問題なく働けている」この違いをどう伝えるか

ここまで、審査でチェックされる客観的なポイントを解説しました。しかし、これだけでは不十分です。 当事者である私が、あなたに最も強くお伝えしたい、この記事の核心。それは、 「会社に出勤できている」という事実と、「問題なく働けている」という状態は、全くの別物だということです。 審査官に伝えなければならないのは、タイムカードや給与明細といった数字の裏に隠された、あなたの「見えない努力」と「ギリギリの状態」なのです。
  • 出勤前の現実: 毎朝、鉛のように重たい身体と戦い、吐き気と闘いながら、なんとかギリギリで玄関のドアを開けているのではないですか?
  • 勤務中の現実: 落ち込んだ気分の中、周りに悟られないよう必死に笑顔の仮面を被り、ボーッとする頭でミスのないよう、人の何倍も神経をすり減らしていませんか?
  • 帰宅後の現実: 仕事で全てのエネルギーを使い果たし、家に帰った途端に倒れ込み、食事も入浴もできず、ただ泥のように眠るだけの日々を送っていませんか?
  • 休日の現実: 平日の無理がたたり、休日は一日中ベッドから出られず、ただ回復のためだけに時間を費やしてしまっていませんか?
これらのリアルな実態を医師に伝え、診断書に具体的に書いてもらうこと。そして「病歴・就労状況等申立書」という書類で、あなた自身の言葉で具体的に書き記すこと。 これこそが、申請の成否を分ける、最も重要な鍵となるのです。 私たちの病気は、伝えなければ、伝わらない。このことを、どうか忘れないでください。

あなたの未来を守る“3つの働き方”という選択肢

障害年金を受給することは、ゴールではありません。 それは、あなたがこれからの人生を、より自分らしく、穏やかに生きていくためのスタートラインです。年金という経済的な基盤を得ることで、あなたの働き方の選択肢は、大きく広がります。

選択肢①:「今の職場」で働き方を変え、年金というお守りを手に入れる

もし、あなたが今の職場を辞めたくない、あるいは辞めることが難しいと考えているなら、「働き方を見直す」ことを条件に、現在の仕事を続けながら障害年金3級を目指す、という道があります。 ここで重要なのは、「これまで通り無理をして働き続ける」のではない、ということです。 そのままの状態で請求しても、「問題なく働けている」と判断され、不支給になる可能性が非常に高いからです。 目指すべきは、会社と相談し、あなたの病状に合わせた「特別な働き方」を実現すること。そして、その「配慮された状態」を客観的な事実として示し、障害厚生年金3級の基準である「労働に制限がある状態」だと認めてもらうことです。 ▼会社に相談・交渉すべき「働き方の見直し」具体例
  • 勤務時間の短縮: フルタイム勤務から、時短勤務(例:1日6時間勤務など)に切り替えてもらう。
  • 業務内容の変更: 責任の重い部署や、顧客対応が多い部署から、より負担の少ない単純作業や後方支援の部署へ異動させてもらう。
  • 労働日数の調整: 週5日勤務から、週3~4日勤務など、出勤日を減らしてもらう。
  • 在宅勤務の活用: 通勤の負担を減らすため、在宅勤務が可能な日を設けてもらう。
  • 明確なサポート体制の確立: 定期的な上司との面談、業務の指示を一つひとつ明確にしてもらう、困った時にすぐに相談できる担当者を決めてもらうなど、職場内でのサポート体制を文書などで明確にしてもらう。
これらの交渉は、決して簡単なことではありません。しかし、障害年金という「月数万円の安定収入」というお守りを手に入れることは、長期的に見れば、あなたの心と生活を支えるための、非常に大きな価値があります。 年金というセーフティーネットがあることで、「もしこれ以上働けなくなっても、すぐに収入がゼロになるわけではない」という絶大な安心感が生まれます。その心の余裕こそが、あなたの病状を安定させ、結果的に仕事を長く続けるための、何よりの力になるのです。 会社にどう相談すればいいか、どのような配慮を求めれば等級認定に繋がりやすいか。それも含めて、あなたの状況に合わせた最適な戦略を、私と一緒に考えていきましょう。

選択肢②:「障害者雇用」で、2級を目指し心と生活を再建する

選択肢①でお話しした「今の職場で働き方を変える」というアプローチ。これを、さらに一歩進め、より強固な会社のサポート体制と、国の制度に則った形で実現するのが、「障害者雇用」という働き方です。 会社との個別の交渉による配慮は、担当者や上司の異動によって、いつ覆されるか分からないという不安が残るかもしれません。それに対し、障害者雇用は、「障害のある社員を、特別な配慮をもって雇用する」ことが、会社側の“義務”として法律で定められている制度です。 つまり、あなたが必要とするサポートが、個人の善意や温情ではなく、会社の正式な制度として保障されるのです。 この「障害者雇用」という選択は、障害年金の申請においても、極めて大きな意味を持ちます。
  • メリット: 会社側があなたの病状を理解し、合理的配慮(時短勤務、業務量の調整、通院への配慮など)を制度として提供してくれます。そして、この「十分な配慮がなければ働けない」という客観的な事実が、障害年金2級(労働によって収入を得ることができない状態)に該当する可能性を、大きく引き上げるのです。一般雇用でフルタイム勤務をしながら2級を目指すのは至難の業ですが、障害者雇用であれば、その道が現実的な選択肢として開かれます。
  • 当事者としての視点: 障害者雇用に切り替えるには、障害者手帳の取得が必要であり、自分の病気をオープンにし、「障害者」であるという事実をご自身が受け入れるという、大きな心理的ハードルがあります。これは、決して簡単な決断ではありません。相応の覚悟が必要になるでしょう。 しかし、それによって得られるメリットは計り知れません。障害者雇用による給与に、障害年金2級という手厚い経済的基盤を加えることで、生活の安定度は飛躍的に向上します。何より、病気への理解がある職場で、再発のリスクを抑えながら安心して働き続けることができる。それは、あなたの人生を本格的に再建するための、最高の環境と言えるのではないでしょうか。
現在の職場で、雇用形態を「一般雇用」から「障害者雇用」に切り替えてもらう交渉をする道もあります。あるいは、一度退職し、社会復帰の第一歩として、新たな職場で障害者雇用枠での就職を目指すのも賢明な選択です。 どちらの道を選ぶにせよ、障害者雇用は、あなたの心と生活を守るための、最も強力な選択肢の一つです。

選択肢③:「自営業」という、私が選んだ道

会社という組織に合わせるのが難しいと感じるなら、私自身がそうであったように、「自営業(フリーランス)」という道もあります。
  • メリット: 自分の体調の波に合わせて、働く時間や量を完全にコントロールできます。これは、生活リズムが不規則になりがちな私たちにとって、何物にも代えがたいメリットです。
  • 専門家としての注意点: ただし、自営業は「働けている」と判断されやすく、障害年金の審査では不利になる可能性も否定できません。だからこそ、私のように「どのような業務を、どれくらいのペースで、どのような制約の中で行っているか」という実態を、専門家の視点から客観的かつ論理的に説明する技術が、より一層重要になるのです。

まとめ:あなたの“働き方”に合わせた、最適な申請戦略を一緒に考えましょう

ここまで、「働きながら障害年金をもらう」ための、3つの具体的な選択肢についてお話ししてきました。 この記事を読んで、あなたはただ「もらえる可能性がある」というだけでなく、それがあなたの未来を主体的に選び取るための、極めて戦略的な選択であることを、ご理解いただけたのではないでしょうか。 改めて、3つの戦略を整理してみましょう。
  • 戦略A:【防衛策】今の職場で働き方を変え、障害年金3級という「お守り」を手に入れる。 会社と交渉し、勤務時間や業務内容に明確な「制限」を設けてもらう。今の生活基盤を守りながら、心のセーフティーネットを構築する、最も現実的な選択肢です。
  • 戦略B:【再建策】「障害者雇用」に切り替え、障害年金2級という「経済基盤」を築く。 会社の制度として、あなたの障害への配慮を確約してもらう。心身の安全を最優先にしながら、より手厚い経済的保障を得て、人生を本格的に再建していくための、最も強力な選択肢です。
  • 戦略C:【自律策】「自営業」として、自分のペースで働き、障害年金3級で生活を補強する。 私自身がそうであったように、働く時間も量も、すべて自分の裁量で決める。自由と責任の中で、病と共存しながら自分らしい生き方を模索する、最も主体的な選択肢です。
どの戦略を選ぶべきか。正解は、一つではありません。 あなたの病状、職場の環境、そして何より、あなたがこれからの人生で何を一番大切にしたいかによって、最適解は全く異なります。 そして、どの戦略を選ぶにせよ、そこには共通の、そして最も重要な課題があります。 それは、「あなたの働き方の実態と、そこに存在する“制限”を、専門的な言葉で客観的に証明する」という、極めて高度な技術が求められる、ということです。 医師への的確な情報提供、審査官を納得させる申立書の作成・・・。 これらを、体調が万全でないあなたが、たった一人で、完璧にやり遂げるのは、あまりにも過酷な道のりです。 だからこそ、どうか一人で抱え込まないでください。 あなたの状況を深く理解し、あなたに代わって戦略を練り、あなたと共に診断書を創り上げていく。それが、専門家であり、同じ痛みを分かち合う同志である、私の役割です。 私が提供するのは、単なる書類作成の代行ではありません。 あなたの人生の、次のステージに向けた「働き方のコンサルティング」であり、あなたが安心して治療に専念できる環境を整えるための、総合的なサポートです。 まずは、あなたがどの選択肢に可能性を感じるのか、あるいは、どの選択肢も選べずに途方に暮れているのか、その正直な気持ちを、私に聞かせてください。 その第一歩が、あなたの未来を、きっと明るく照らしてくれるはずです。

絶望の淵から、あなたの隣へ。私が、うつ病の経験を武器に障害年金の専門家(社労士)になった本当の理由【愛知県春日井市】

2025-09-08

「なぜ、この仕事をしているのですか?」

ご相談に来られたお客様から、時々、そう尋ねられることがあります。その問いに答えることは、私の人生そのものを語ること。それは、一度は社会からドロップアウトし、絶望の淵をさまよった一人の男が、いかにして再び立ち上がり、「かつての自分」と同じように苦しむ誰かのための光になるという使命を見つけたかの物語です。

こんにちは。愛知県春日井市で、うつ病や双極性障害など、精神疾患の障害年金を専門とする社会保険労務士の渡邊智宏です。そして、あなたと同じように、双極性障害(躁うつ病)という病と共に生きる一人の当事者でもあります。

この記事は、単なる私の経歴紹介ではありません。
もしあなたが今、病によって光を見失い、社会から取り残されたような深い孤独の中にいるのなら。この物語は、他の誰でもない、あなたのための物語でもあります。

どうか、少しだけ。私の、そして「あなたの」物語にお付き合いください。

〈目次〉

 

【第1章】失われた光:仲間と追いかけた夢、そして燃え尽きた心

若き日の挑戦と、手酷い洗礼

平成12年8月、私は新卒以来勤めてきた会社を退職しました。理由は、今振り返れば典型的な、しかし当時は逃げ出すことしか考えられなかった、激しいパワハラと過酷な労働環境でした。休みはなく、帰宅はいつも深夜。上司からの執拗な叱責と人格否定的な暴言が、若い私の心を少しずつ蝕んでいきました。

「このままでは、壊れてしまう」

その一心で下した、苦渋の決断は退職でした。しかし、不思議なことに、この経験が直接、今の病気に繋がったわけではないのです。半年もすると、ストレスから解放された心は回復し、再び社会復帰を志す気力が湧いてきました。

公務員試験に挑戦したり、知人の会社でお世話になったり・・・。紆余曲折の末に私が選んだのは、「起業」という、最も挑戦的な選択肢でした。会社員時代の知人と共に、Web関連の会社を立ち上げたのです。

希望に燃えていました。技術力のある協力会社とタッグを組み、自分たちは営業と管理に専念する。完璧な計画のはずでした。しかし、現実は非情です。その協力会社の技術力に、致命的な欠陥があることが判明。事業の根幹が、もろくも崩れ去りました。

行き詰まりは、人間関係をも蝕みます。社内の空気は急速に悪化し、4人いたはずの創業メンバーは、気づけば私を含め2人だけになっていました。

売るべきものがない。仲間もいない。途方に暮れた私たちは、生き残るために、自分たちでWeb制作の技術を1から学ぶことを決意します。デザインだけは外注し、それ以外は全て内製化する。悪戦苦闘の末、なんとか食べていけるだけの売上は立つようになりました。しかし、それは自転車操業のような、苦しい日々の始まりでもありました。

 

避けられなかった挫折、そして心の穴

経済的に苦しい状況は、数年続きました。そして、ついにその時が訪れます。私が手塩にかけてきたWeb制作事業は、私自身ごと、別の会社に移籍(事実上の事業売却)することになったのです。

起業家の端くれから、再び一人のサラリーマンへ。
今思えば、これこそが、私の心の歯車が狂い始める、決定的な瞬間でした。

売上が乏しいとはいえ、それは仲間と悪戦苦闘しながら、ゼロから育て上げてきた、我が子のような会社でした。それを手放した時の喪失感は、私の心に、ぽっかりと大きな穴を開けました。

仕事をすることは、生き抜くための「戦い」だった。それが、ただ漫然と時間を過ごしていれば給料がもらえる「作業」に変わってしまった。目標を失った心は、いわゆる「燃え尽き症候群」のような状態に陥っていました。

 

忍び寄る心の闇、そして不本意な「宣告」

この喪失感が、私の精神を静かに、しかし確実に蝕んでいきました。
追い打ちをかけるように、移籍先の会社での人間関係がこじれてしまったのです。

最初に現れたサインは、朝、目が覚めた瞬間に襲ってくる、強烈な拒絶感でした。
「会社に行きたくない」
いいえ、もっと正確に言えば、「行けない」のです。体が鉛のように重く、心が「もうダメだ」と悲鳴を上げる。起きた瞬間に、出勤できない、と強く感じてしまったのです。

そうして、会社を休む日が増えていきました。
2日連続で欠勤した後、出社した私を待っていたのは、上司からの「メンタルクリニックへ行ってこい」という、冷たい命令でした。

当時の私は、それが適切な配慮であるとは到底思えませんでした。「なぜ自分が・・・」という強い不信感と屈辱感。しかし、逆らうことはできず、不本意ながらクリニックの門をくぐりました。

そして、下された診断。
「うつ状態です」

平成18年の秋。それが、私の長い闘病生活の始まりでした。
当初は、その診断を受け入れられませんでした。しかし、症状は日に日に悪化していく。会社に行けない日が増え、家にいても、どうしていいか分からない。ただ、得体の知れない強い不安感だけが、四六時中、私を支配するようになっていきました。

もはや、自分の病気を認めざるを得ませんでした。

 

【第2章】終わらないトンネル:退職、引きこもり、そして“最後の砦”の崩壊

光の差さない部屋で考えたこと

そんな不安定な生活の中、会社から「正社員からアルバイトにならないか」という提案を受けます。「その方が休みやすいだろう」という、一見、優しさに見える言葉の裏に、「もう君は必要ない」という冷たい響きを感じ取った私は、退職を決意しました。

「これで、全てのストレスから解放される。きっと、すぐに楽になる」

そう、信じていました。
しかし、現実は、あまりにも残酷でした。会社を辞めたその日から、私の気分は奈落の底へと急降下していったのです。重しが外れるどころか、さらに重い鉛を心に抱え込むことになりました。

なぜか。
おそらく、「社会人である」という、社会と繋がる最後の拠り所を失ったことへの、精神的な反動だったのでしょう。そして、毎日決まった時間に起きて出社するという生活習慣が失われたこと、その急激な環境の変化自体が、私の心に大きなストレスを与えていたのかもしれません。

ここから、何年にもわたる、暗い引きこもり生活が始まりました。
毎日、襲い来る強烈な不安感。
何もする気が起きない、底なしの無気力感。
理由もなく、突然胸が締め付けられ、泣きたくなる衝動。

ただ、布団にくるまり、その嵐が過ぎ去るのを耐えるしかない。そんな日々でした。
当時は、その感情の波にどう対処していいか分からず、泣ける映画をわざわざ観て無理やり涙を流してみたりと、無駄な試行錯誤を繰り返していました。

 

収入ゼロという地獄、そして魂の告白(カミングアウト)

ただ、そんな暗闇の中にも、救いはありました。
これまでの人生で築いてきた、友人・知人という名の財産です。喫茶店を開業した友人は、毎日昼食を食べさせてくれました。同じ時期に同じ病気を患った友人は、「辛いよな」と、ただ黙って話を聞いてくれました。学生時代の友人は、気分転換にと、何度も私を外へ連れ出してくれました。

彼らのおかげで、私は完全な孤立からは、かろうじて免れていました。
しかし、うつ病という病は、本当に厄介なものです。そんな彼らの優しさすらも、時には耐えがたいストレスに感じてしまうのです。

電話が鳴るだけで、心臓が跳ね上がる。
「会おう」という誘いが、重いプレッシャーになる。
誰かと繋がることで救われながら、その繋がりそのものが辛い。このアンビバレントな葛藤は、経験した者にしか分からないかもしれません。

そんな生活を支えていた、最後の生命線。それが、健康保険から支給される「傷病手当金」でした。給料の約6割。働けなくても、最低限の生活を維持できる、唯一の収入源です。

最長で1年6ヶ月。
療養を始めた当初、それは永遠にも感じられる長い時間でした。「これだけあれば、きっと治る」と、本気で信じていました。

しかし、症状は一向に改善しない。むしろ、悪化していく。
1年6ヶ月という月日は、あっという間に過ぎ去りました。

「傷病手当金が、切れる」

その事実が、さらなるストレスとなって私にのしかかります。
収入が、ゼロになる。
アパートの家賃が、払えない。
万事休す。ついに私は、アパートを引き払い、実家に戻ることを決意しました。

これまで、病気のことは両親に伏せていました。すぐに治るつもりだったし、何より、うつ病で苦しむ情けない姿を、親に見せる勇気がなかったのです。

しかし、もう、そんなプライドを保っている余裕はありませんでした。
ある日、実家に帰り、両親の前で、全てを打ち明けました。
「病気で、働けなくなった。収入もない。だから、家に帰らせてほしい。助けてほしい」

何を言われるだろうか。根掘り葉掘り聞かれるだろうか。大騒ぎされるだろうか。
様々な不安が、頭をよぎりました。

しかし、両親の反応は、私の想像とは全く違うものでした。
「そうか。分かった。早く帰ってこい。生活のことは、心配するな」
ただ、それだけでした。
あれこれと事情を説明しなくても、ただ受け入れてもらえた。その事実が、どれほどありがたかったか、今でも鮮明に覚えています。

 

【第3章】かすかな光:「社会保険労務士」という一本の蜘蛛の糸

社会復帰への渇望と、高すぎる壁

こうして、実家での引きこもり生活が始まりました。
生きていくことへの直接的な不安はなくなりました。しかし、それと引き換えに、新たな地獄が始まりました。

「自分の名前で、1円もお金が入ってこない」という、耐えがたい現実です。
給料であれ、傷病手当金であれ、「自分の名義」で振り込まれる収入があるうちは、かろうじてプライドが保てます。しかし、それがゼロになると、まるで自分の存在価値そのものが失われたような、底知れぬ不安に襲われるのです。

「自分は、生きていていいのだろうか」

そんな自問自答を繰り返す、無為な日々。
しかし、そんな暗闇の中でも、時間は流れ、薬が効き、少しずつ変化が訪れました。病名は、うつ病から「双極性障害」に変わっていました。

一年かけて、薄紙を一枚ずつ剥がしていくような、遅々とした歩み。それでも、一年前の自分と比べれば、ほんの少しだけ、マシになっている。そんな小さな改善の兆しが、見え始めたのです。

そして、自然と「社会復帰」という言葉が、頭をよぎるようになりました。
とはいえ、気分が落ち込む日が少なくなった、という程度です。フルタイムで働ける状態には、ほど遠い。長いブランクのある履歴書。失われた自信。

「もう、普通の会社員に戻るのは無理だ」

当時の私は、障害者雇用という選択肢すら、頭にありませんでした。

 

運命の「戦友」との出会い

そこで、私が目を向けたのが、「フリーランス」という働き方でした。
幸か不幸か、一度は起業した経験もある。自分でできる仕事を、自分でできる範囲でやる。それしかない、と。

そのためには、「手に職」が必要です。
私が選んだのは、「社会保険労務士」という資格でした。実は、以前、起業がうまくいっていなかった頃に、一度だけ考えたことがあったのです。その時の、古びたテキストが、本棚の隅で私を待っていました。

「もう一度、これに賭けてみよう」

資格専門学校への通学は、週に2回、1回3時間。それでも、引きこもりだった私には、大きな挑戦でした。まずは、休まずに通うこと。そこから始め、少しずつ勉強のペースを掴んでいきました。

そして、一年後。試験の結果は、ギリギリの合格でした。
何も成し遂げられなかった自分が、久しぶりに掴んだ、小さな成功体験。それは、失いかけていた自信を、少しだけ取り戻させてくれました。

合格後、一年間の研修を経て、愛知県春日井市の自宅で、私は開業の日を迎えます。
しかし、それはゴールではなく、新たなスタートでした。

開業当初は、仕事などありません。同期の社労士たちが、精力的に活動し、次々と契約を取っていくのを、眩しい思いで眺めていました。「自分は病気を抱えている。焦るな」と言い聞かせながらも、心のどこかで感じる焦燥感。

そんな中、私の人生を決定づける、大きな出会いがありました。
同期開業組の一人。彼は、ギランバレー症候群という難病を患い、手足に障害を抱えていました。そして、その経験をバネに、「障害年金を専門にする」と、固く決意していたのです。

衝撃でした。
自分自身の障害を、弱みではなく「武器」にする。
その彼の姿は、自分の進むべき道を、一筋の光のように照らしてくれました。

「自分も、双極性障害という、大きな病気を経験している」
「この経験こそ、障害年金の仕事に活かせるのではないか?」

自分と同じ境遇の人間がいる。その発見は、何よりの心の支えとなりました。

 

【第4章】使命の発見:寄り添う、ではない。あなたの痛みを、私は「知っている」

負の経験が「価値」に変わった瞬間

自分の進むべき道が見えてからは、迷いはありませんでした。
障害年金の専門家として、私は自分の経験を、積極的に語るようになりました。

そして、驚くべきことが起こります。
ご相談に来られたお客様、特に、私と同じようにうつ病などの精神疾患を患っている方から、感謝の言葉をいただくようになったのです。

「先生の話を聞いて、救われました」
「同じ経験をしている人に話せただけで、心が軽くなりました」

もちろん、障害年金を受給できることは、何より重要です。しかし、それ以上に、「自分の苦しみを理解してもらえた」という事実に、お客様は価値を感じてくださったのです。

私の、暗く、誰にも話せなかったはずの、負の経験。
それが、ただ話すだけで、誰かの役に立つ。
「自分の人生の“闇”が、誰かの“光”になる」

その事実に気づいた時、私は、これまでの人生が全て肯定されたような、魂が震えるほどの感動を覚えました。苦しかったあの日々は、決して無駄ではなかった。お客様から「救われた」と言われるたびに、私自身もまた、救われていたのです。

 

なぜ私は「寄り添う」と言わないのか

この経験を通して、社会保険労務士としての私の、確固たるスタンスが決まりました。
同業の社労士は、よく「お客様に寄り添います」という言葉を使います。もちろん、それは素晴らしい姿勢であり、決して否定するものではありません。

しかし、私は、あえてその言葉を使いません。
なぜなら、「寄り添う」という言葉には、どこか「他人事」の響きがあるように感じてしまうからです。

私は、あなたの苦しみを、「他人事」だとは到底思えません。

だから、私はこう言います。
「あなたのその痛み、私も“知っています”。だから、同志として、戦友として、一緒に立ち向かいましょう」と。

自分自身が、あの暗闇の中を歩いてきたからこそ、できる関わり方。
机上の知識ではない、血の通った言葉で、あなたと話がしたい。
これこそが、神様が私に与えてくれた、唯一無二の使命なのだと、今は確信しています。

 

結論、そしてあなたへ:絶望は、未来への武器になる

私が今、この仕事をしている理由は、たった一つです。
かつての私のように、暗闇の中で独り震え、自分の価値を見失いかけているあなたを見つけ出し、その隣に立ちたいのです。

障害年金は、単にお金をもらうための制度ではありません。
「自分の名前」で振り込まれる収入がある。その事実が、失われた自尊心を回復させ、もう一度、自分自身を肯定するきっかけになります。収入がないという苦しみ、どうしようもない無力感。私も、痛いほど味わってきました。

私の経験が、あなたが障害年金という助けを手にするための、一つの糸口になればと願っています。

そして、その申請という行動を、ぜひ私と一緒に起こしてほしいのです。
私の全ての経験は、あなたと出会うためにありました。

「あなただけではない」
「私も、その痛みを、知っている」

だから、一緒に、未来への一歩を踏み出してみませんか。
あなたの絶望は、決して無駄にはなりません。それは、あなたの人生を、もう一度始めるための、最も力強い武器になるのですから。

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【春日井市の社労士が告白】私がうつ病の障害年金請求で“他者の力”を借りた、たった一つの理由

2025-09-02

障害年金の請求を前に、あなたの心をがんじがらめに縛り付けているものは、一体何ですか?

「複雑そうな手続きへの、漠然とした不安」でしょうか。
それとも、「本当に自分なんかが受給できるのかという、自信のなさ」でしょうか。

こんにちは。愛知県春日井市で、うつ病や双極性障害など、精神疾患の障害年金を専門にしている社会保険労務士の渡邊智宏と申します。そして私自身も、あなたと同じように、双極性障害という病と共に生きる一人の当事者です。

かつて、私が自分の障害年金を請求しようと決意した時。私の前に立ちはだかった最大の壁は、手続きの複雑さではありませんでした。専門家ですから、知識はありました。では、一体何が、私の足をすくませ、動けなくさせたのか。それは、もっと根源的で、この病気を抱える者なら誰もが直面する、たった一つの問題でした。

そして、その巨大な壁を乗り越えるために、専門家である私が最終的に下した決断。それは、「他者の力を借りる」ことでした。

この記事は、私がなぜ、独りで戦うことをやめたのか。その「隠された事実」を初めて告白し、あなたが今抱えている本当の苦しみの正体と、そこから抜け出すための最も賢明な道筋を示すものです。これは、あなたを過去の私と同じ場所で、同じように苦しませないための、私の心からのメッセージです。

〈目次〉

 

はじめに:専門家でさえ動けなかった、障害年金請求のリアル

少しだけ、私の話をさせてください。
双極性障害と診断され、それまで勤めていた会社を辞めざるを得なくなった私は、長い引きこもり生活を送っていました。数年が経ち、症状が少し落ち着いてきた頃、私は社会復帰の道を模索し始めます。

しかし、フルタイムで働く自信は到底ありませんでした。そこで選んだのが、自分のペースで働ける「自営業」、そして国家資格である「社会保険労務士」という道でした。資格専門学校に週2回通うことから体を慣らし、なんとか試験に合格。それは、長いトンネルの先に見えた、小さな光でした。

社労士の仕事は多岐にわたりますが、私は自らの経験が活かせる「障害年金」の分野に、自然と惹かれていきました。自分の病気の経験が、同じように苦しむ誰かの役に立つかもしれない。そう信じて、春日井市に事務所を構え、障害年金の専門家として歩み始めたのです。

何件か、ご依頼者様の請求をお手伝いする中で、私はある事実に気づきます。
「あれ?一年を通して体調の波があり、人並みに働けない今の自分も、十分に障害年金の対象になるじゃないか…」

専門家として仕事をするまで、自分自身が対象になるなど、考えたこともありませんでした。灯台下暗し、とはまさにこのことです。

さあ、あなたならどう思いますか?
障害年金のプロが、自分の請求をする。これほど簡単なことはない、そう思われるかもしれません。私も、そう思っていました。

しかし、現実は全く違いました。
「よし、自分の請求をやろう」と思い立ってから、実際に行動へ移すまで、実に数ヶ月もの時間を要したのです。駆け出しでしたので、仕事が山積みで身動きがとれなかったというわけではありません。時間は、ありました。それなのに、どうしても第一歩が踏み出せないのです。

 

第一の壁:分かっているのに動けない地獄

他人の請求はできるのに・・・自己嫌悪に陥った日々

社労士として独立し、障害年金の専門家として歩み始めた私が直面した、最大の皮肉。それは、「ご依頼者様の請求手続きはできるのに、自分の手続きの第一歩が、どうしても踏み出せない」という、困った現実でした。

頭の中では、やるべきことは全て分かっています。初診日を確定させ、受診状況等証明書を取り寄せ、診断書の依頼をし、病歴・就労状況等申立書を書き上げる・・・。その一つひとつの手順も、注意点も、全て理解している。

それなのに、体が動かない。
「明日こそ、病院に電話しよう」
「週末に、申立書を書き始めよう」
そんな「明日やろう」を、毎日毎日、呪文のように唱え続ける。そして、何もできないまま一日が終わり、自己嫌悪と共に眠りにつく。そんな日々が続きました。

知識があるからこそ、「やるべきこと」の膨大さと、その一つひとつに潜むリスクが見えてしまう。それが、かえって私の足を重くさせました。

「専門家としての自分」が、「当事者としての自分」を責め立てるのです。
「なぜできないんだ?やり方は分かっているじゃないか」
「他の人のためには動けるのに、なぜ自分のことになるとダメなんだ」

この、プロとしてのプライドと、病気の症状との乖離が、私の心を少しずつ、しかし確実に蝕んでいきました。

 

私が下した、最初の「依頼」という名の約束

ここで、少し恥ずかしい、しかしこの記事で最も重要な事実を告白します。
この、出口のない泥沼から抜け出すために、私が最終的に取った行動。それは、信頼する仲間の社労士に、自分の障害年金の請求をする決意を表明し、「進捗を報告する」という“約束”を取り付けることでした。

私には、同じ時期に開業し、同じように障害年金を専門とする、戦友と呼べる友人がいました。そして、驚くべきことに、彼もまたギランバレー症候群という難病を抱える当事者でした。さらに、彼も私と同様に、「自分の障害年金が対象になる」と知りながら、請求できずにいたのです。

境遇も、悩みも、全く同じ。
私たちは、顔を合わせるたびに「お互い、分かっているのに、できないね」と、苦笑いを浮かべるばかりでした。

ある日、私は彼に持ちかけました。
「二人で、同時に、自分の障害年金の請求をやらないか?」

病気の種類は違えど、当事者と専門家、両方の視点から互いのケースを共有すれば、きっと学びになる。そして何より、互いに進捗を報告し合うという“縛り”を設ければ、後回しにしがちな自分自身の問題に、真剣に向き合えるのではないか。そう考えたのです。

彼は、私の提案に快く乗ってくれました。
こうして、私たちは互いの障害年金請求の進捗を報告し合うことを、固く約束したのです。

実際の作業は、当然ながら全て自分自身で行いました。書類を集め、文章を書き、医師と話をする。しかし、もし、この「他者との約束」という名の“外部エンジン”がなければ、私は永遠に、あのスタートラインにすら立てていなかったでしょう。

専門家でさえ、独りでは動けないのです。
これこそが、うつ病や双極性障害という病気の、本当の恐ろしさなのだと、私は身をもって知りました。

 

【解決策】あなたに必要なのは知識ではなく「外部エンジン」

もしかしたら、この記事を読んでくださっているあなたも、かつての私と同じではないでしょうか。
障害年金をもらいたい。もらわなければ、生活が立ち行かない。そう思っているのに、どうしても動けない。「明日やろう」と思いながら、時間だけが過ぎていく・・・。

それは、決してあなたの意志が弱いからではありません。
病気が、あなたの中から「行動のきっかけ」という、人間が前に進むために不可欠なエネルギーを、根こそぎ奪っているのです。知識の有無は、関係ありません。やり方が分かっていても、最初のスイッチを押すことができないのです。

だとしたら、答えはシンプルです。
その「きっかけ」を、外部に求めればいい。

専門家に依頼するということは、あなたのために計画を立て、あなたのために動き続けてくれる、最も強力で、最も信頼できる“外部エンジン”を手に入れることなのです。あなたを引っ張ってくれる機関車を、隣に置くことなのです。

病気で苦しんでいるあなたが、自分自身の力だけで、この重い列車を動かそうとするのは、あまりにも酷な話です。その最初のひと押しを、私たち専門家に任せてみませんか。

 

第二の壁:専門家になったからこそ知った自己分析という拷問

プロの視点が暴き出す、本当の地獄

「外部エンジン」を手に入れ、ようやく請求準備という名の列車を動かし始めた私。しかし、その先に待ち受けていたのは、予想だにしなかった、さらに深い絶望の谷でした。

それは、「専門家になったからこそ、自己と向き合う本当の地獄を知ってしまった」という、新たな苦しみです。

もし、私が障害年金について何も知らない素人だったら、ここまで苦しまなかったかもしれません。
しかし、専門家である私は、嫌というほど知っていました。等級を左右するのは、病名や症状の重さそのものではない。診断書に書かれた、たった数行の「日常生活の状況」なのだと。

そして、その数行に説得力を持たせるためには、自分自身の人生の「ダメな部分」「情けない部分」「惨めな部分」を、根こそぎ洗い出し、客観的な言葉で、医師に赤裸々に伝えなければならないのです。

これは、自分自身の魂を削るような、壮絶な作業でした。
風呂に入れなかった日々のこと。
ゴミに埋もれて暮らした部屋のこと。
誰とも話さず、社会から孤立していた日々・・・。

それらを思い出し、リストアップするたびに、強烈な自己嫌悪に襲われる。「こんなこともできないのか」「こんな生活を送っているのか」と、自分自身を軽蔑してしまう。

専門家としては、これらを戦略的に診断書に反映させなければならないと分かっている。
しかし、当事者としては、その記憶に触れること自体が、耐えがたい苦痛なのです。

この「自己分析」という名の拷問こそが、私の足を再び止め、請求のプロセスをさらに困難なものにした、第二の壁でした。

 

私が持つ「二重の知見」という、唯一無二の強み

しかし、皮肉なことに、この地獄のような経験こそが、今の社会保険労務士としての私の、最大の強みを形作ってくれました。
この経験を通して、私は、他の誰にも真似できない、「二重の知見」を手に入れたのです。

  1. 当事者として、うつ病や双極性障害の“リアル”な苦しみを知っている。
    あなたが言葉にできない、漠然とした不安。行動できないもどかしさ。自己嫌悪の渦。その全てを、私は理屈ではなく、原体験として知っています。
  2. 専門家として、その苦しみを「等級に結びつく言葉」に翻訳する方法を知っている。
    あなたのその苦しみが、障害年金の審査において、どのような意味を持つのか。それを、法的な根拠と実務経験に基づいて、最も効果的な「言葉」へと変換する技術を持っています。

よく、「患者さんに寄り添って」という言葉が使われます。しかし、私は少し違うかもしれません。私は、あなたに「寄り添う」のではありません。

同じ苦しみを分かち合う「同志」として、あなたの隣に立ちます。
共に、障害年金という難敵に立ち向かう「戦友」として、あなたの痛みを「知って」います。

もちろん、症状の現れ方は、人それぞれ千差万別です。だからこそ、丁寧なヒアリングが何よりも重要になります。私がヒアリングを行う際、それは単なる事務的な質問の繰り返しではありません。

「私の場合、こういうことで本当に苦しかったのですが、あなたの場合はどうですか?」
そんな風に、私自身の経験を一つのものさしとして、あなたの、あなただけの苦しみを、深く、正確に理解することができるのです。

 

【解決策】あなたの苦しみを「等級に結びつく言葉」へ翻訳します

障害年金請求で、最も心がすり減る「自己分析」の作業。
それを、あなたの痛みを本当に理解できる人間に、任せてみませんか?

私が、あなたと一緒に、あなたの人生と向き合います。
そして、あなたの言葉にならない苦しみを、あなたの未来を支えるための、最も強力で、最も的確な請求「武器」請求へと、私が翻訳してみせます。

 

【結論】あなたの苦しみを、あなたの「未来」に変えるために

障害年金の請求プロセスは、多くの当事者にとって、ただ辛く、苦しいだけの道のりです。
しかし、信頼できるパートナーと組むことで、それは「自分の人生を客観的に見つめ直し、次の一歩を踏み出すための、価値ある時間」に変わり得ます。

私が経験した「2つの壁」は、あなたが独りで、歯を食いしばって乗り越える必要は、全くありません。

  • 動けないあなたのための、強力な「外部エンジン」として。
  • 自己分析の苦しみを分かち合う、唯一無二の「同志」として。

私が、あなたの隣にいます。
私の知識、経験、そして何より、この「二重の知見」という強みの全てを、あなたのために使わせてください。

 

春日井市・愛知県で障害年金にお悩みの方へ

あなたが今、本当に戦うべき場所は、複雑な書類や役所の窓口ではありません。
あなたの心と体の中。ただ穏やかに休み、回復することだけが、あなたの最優先事項なのです。

どうか、書類との戦いは、その道のプロに、そしてあなたの痛みが分かる当事者に、任せてください。
あなたが安心して治療に専念できる環境を整えること。それが、私の仕事であり、使命です。

もし、かつての私のように、たった一人で悩み、動けずにいるのなら。
まずは一度、お話を聞かせていただけませんか。初回のご相談は無料です。あなたからのご連絡を、心よりお待ちしております。

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【障害年金・うつ病】うつ病の障害年金|診断書「日常生活」のリアルな伝え方② 対人関係・服薬・社会性編|当事者社労士が解説

2025-08-26

「障害年金の等級は『日常生活』のリアルな姿で決まる」
「だからこそ、その困難を具体的に医師に伝えることが、あなたの未来を左右する」

前回の記事では、診断書の最重要項目である「日常生活能力」のうち、「食事」「清潔保持」「金銭管理」という、生きていく上で根幹となる3つのテーマについて、私の恥ずかしい体験談も交えながら解説しました。

 

▼前回の記事をまだ読んでいない方はこちらから

【体験談】うつ病の障害年金|診断書「日常生活」のリアルな伝え方① 食事・入浴・金銭管理編

 

多くの方から「まさに自分のことだと思った」「何を伝えればいいか分かった」という反響をいただき、改めてこのテーマの重要性を痛感しています。

こんにちは。双極性障害(躁うつ病)という精神疾患と向き合いながら、障害年金の専門家として、かつての私と同じように苦しむ方々のサポートをしている社会保険労務士の渡邊智宏です。

さて、今回は「日常生活」解説の後半戦。
前回よりもさらに一歩踏み込み、社会との関わりの中で生じる、より複雑で、より多くの人が悩むであろう4つのテーマを扱います。

  • (4)通院と服薬
  • (5)他人との意思伝達及び対人関係
  • (6)身辺の安全保持及び危機対応
  • (7)社会性

「ただ病院に行くだけではダメ?」「人と会えないのは当たり前じゃないの?」
そう感じているあなたの疑問に、当事者だからこそ分かるリアルな視点と、専門家としての客観的な視点の両方から、徹底的にお答えしていきます。

この記事を最後まで読めば、あなたの抱える「見えない困難」を言語化し、医師に正しく伝えるための、強力な武器が手に入るはずです。

 

〈目次〉

 

おさらい:あなたの日常を測る“7つのものさし”

本題に入る前に、もう一度だけ確認させてください。精神疾患の障害年金の診断書では、あなたの日常生活能力が、以下の7つの項目について、4段階で評価されます。

【日常生活の7つの項目】

  1. 適切な食事
  2. 身辺の清潔保持
  3. 金銭管理と買い物
  4. 通院と服薬
  5. 他人との意思伝達及び対人関係
  6. 身辺の安全保持及び危機対応
  7. 社会性

この評価が、あなたの障害等級を決定づける最重要ファクターです。そして、その評価の質は、あなたがどれだけ具体的に、正直に、ご自身の状況を医師に伝えられるかにかかっています。それでは、後半戦を始めましょう。

 

【項目④】通院と服薬:「できている」に潜む大きな落とし穴

「定期的に通院できていますか?」

この質問に、あなたはどう答えますか?
おそらく、多くの方が「はい、できています」と答えるのではないでしょうか。特に、うつ病で不眠に悩む私たちにとって、睡眠導入剤は命綱のようなもの。それを手に入れるためには、何が何でも通院しなければなりません。

私自身、引きこもり生活の中で唯一、社会との接点を保っていたのが週に一度の通院でした。だから、この項目については「自分は問題ない」と、ずっと思い込んでいました。しかし、それは大きな間違いだったのです。

障害年金で問われている「通院と服薬」とは、単に「病院に行っているか」「薬を飲んでいるか」という事実だけではありません。その「質」が厳しく問われるのです。

 

体験談:医師の前で「良い患者」を演じていた私

私は、きちんと予約通りに病院の扉をくぐっていました。しかし、診察室の中での私は、どうだったでしょうか。

医師の前に座っても、自分から積極的に話すことはほとんどありませんでした。「最近どうですか?」と聞かれても、「まあ、変わりないです…」と生返事をするだけ。本当は、夜中に得体の知れない不安に襲われて泣きそうになっていることも、一日中ベッドから出られずに自己嫌悪に陥っていることも、恥ずかしくて、情けなくて、とても言えませんでした。

医師のアドバイスも、右から左へ聞き流すだけ。「早くこの時間が終わらないかな…」と、ただうつむいて座っている。そんな患者だったと思います。

これでは、「通院」という行為の目的である「医師とのコミュニケーションを通じた治療」が、全く成り立っていません。ただ病院という場所に物理的に移動しているだけで、それは「適切な通院」とは到底言えないのです。

あなたの通院はどうでしょうか?
医師との間で、治療に必要な情報のキャッチボールができていますか?

また、通院という行為そのものに困難を抱えている方も多いでしょう。

  • パニック発作や不安感で、電車などの公共交通機関に乗れない。
  • 薬の影響で集中力が散漫になり、車の運転が危険。
  • そもそも外出するエネルギーがなく、家族に送迎してもらわなければ病院に行けない。
  • 診察室に一人で入るのが怖く、家族に同席してもらっている。

さらに深刻なのは、予約を守れないという問題です。
「明日は病院の日だ」と分かっていても、当日の朝、鉛のように重い体と心が、どうしても言うことを聞かない。ギリギリになってしまったり、間に合わなかったり、ひどい時には無断でキャンセルしてしまったり…。

もし、あなたが予約の変更や遅刻を繰り返しているのであれば、それは「適切な通院が困難である」ことの、何よりの証拠です。その事実は、カルテには記録されていても、医師が診断書に書く際に意識してくれるとは限りません。「予約を守れないことが多く、ご迷惑をおかけしています」と、あなた自身から伝える必要があるのです。

 

薬との闘い:オーバードーズと自己判断による断薬

次に、この項目のもう一つの柱である「服薬」についてです。
「薬の管理、できていますか?」と聞かれれば、多くの人は「飲み忘れはないか」「時間を守れているか」を問われていると考えます。もちろん、それも重要です。引きこもり生活で時間感覚が曖昧になり、飲み忘れてしまうことは、私たちにとって「あるある」です。

しかし、精神疾患の服薬管理で本当に問題となるのは、それだけではありません。
「処方通りに飲めていない」という、より深刻な2つのパターンが存在します。

  1. 処方以上に飲んでしまう(過量服薬)
    最も分かりやすいのが、オーバードーズ(OD)です。死にたい気持ちから、あるいは現実から逃避したい一心で、大量の薬を一度に飲んでしまう。いけないと分かっていても、衝動を抑えられない。これは、命に関わる非常に危険な状態です。

そこまでいかなくても、「効きが悪いから」という理由で、処方より多く飲んでしまうことはありませんか?
「睡眠薬を1錠飲んだけど、全然眠れない。もう1錠追加しちゃおう…」
「抗うつ薬の効果が感じられない。少し多めに飲めば、効いてくれるかもしれない…」
このような自己判断による増量は、実は非常にありふれた問題です。

  1. 自己判断で飲むのをやめてしまう(断薬)
    そして、その逆のパターン。これもまた、深刻な問題です。
    「この薬、副作用が辛すぎるから飲みたくない」
    「昼間まで眠気が残って、頭が働かない」
    「そもそも、こんな脳に作用する薬を飲み続けるのが怖い」

様々な理由から、医師に相談することなく、自分の判断で薬を飲むのをやめてしまう。実は、私自身がこのケースにどっぷりと当てはまっていました。

私の双極性障害には、抗うつ薬がうまく効きませんでした。効果を感じないどころか、指が震えるといった副作用ばかりが気になる。薬への不信感から、私は勝手に服薬を中断してしまったのです。しかも、そのことを医師に報告しませんでした。

すると、どうなるか。
医師は、私が処方通りに薬を飲んでいると思っています。それでも効果が出ないから、「薬が足りないのかもしれない」と、さらに薬を増やす。増えた薬を見て、私はますます怖くなり、飲むのをやめる…。

まさに、治療の悪循環です。半年や1年、勝手に断薬し、いよいよまずいと思って再開する。そして、またしばらくしてやめてしまう。そんなことを、私は何年も繰り返していました。

このように、「通院と服薬」という短い言葉の中には、非常に多くの、そして深刻な問題が隠されているのです。

 

「通院と服薬」6つのチェックリスト

あなたの状況を整理するために、以下のリストで自己チェックしてみてください。

□ 1. 通院の自立性:
一人で、公共交通機関や自家用車を使って、問題なく病院まで行けますか?(家族の送迎や付き添いが必要ではありませんか?)

□ 2. 医師との対話:
診察の場で、ご自身の症状や生活の困りごとを、具体的に医師に伝えることができていますか?

□ 3. 予約の遵守:
予約した日時に、遅刻やキャンセルをすることなく、通院できていますか?

□ 4. 服薬の管理:
薬の飲み忘れや、飲む時間を間違えることはありませんか?

□ 5. 過量服薬:
処方された量以上に、薬を多く飲んでしまうことはありませんか?(オーバードーズの経験はありませんか?)

□ 6. 自己中断:
医師に相談せず、ご自身の判断で薬を飲むのをやめてしまったことはありませんか?

 

【項目⑤】対人関係:「人と会えない」だけではない、コミュニケーションの質

「他人との意思伝達及び対人関係」。一言で言えば、コミュニケーション能力です。
これは、引きこもりがちな私たち精神疾患の当事者にとって、最も厳しい項目の一つと言えるでしょう。

「人と会うのが億劫」「誰とも話したくない」
これは、うつ状態の基本症状です。人と会う回数が極端に減っている。それだけでも、この項目で困難を抱えていることは明らかです。

しかし、この項目で問われているのは、コミュニケーションの「量」だけではありません。その「質」もまた、重要な評価ポイントとなります。

 

体験談:あらゆる関係から逃げ続けた引きこもり時代

例によって、私のケースをお話しします。
先ほどから何度も話している通り、私は完全な引きこもりでした。誰かと会話するという行為そのものが、ほとんど存在しない日々。定期的に話す相手は、週に一度会う医師と看護師だけ。何日も声を発しないことも珍しくありませんでした。

  • 友人との関係:
    もともと、親しい友人と話すこと自体に大きな問題はありませんでした。しかし、病状が悪化してからは、自分から連絡を取る気力は全く湧かない。友人から電話がかかってきても、話すのが億劫で、出ずに無視してしまう。そんなことを繰り返すうちに、次第に連絡は来なくなりました。
  • 元職場との関係:
    退職後も、引継ぎなどの用件で、元職場から頻繁に連絡がありました。その電話が、私には耐えきれないほどのストレスでした。最終的には、主治医に相談し、「本人への直接の連絡は控えるように」という内容の診断書を書いてもらい、関係をシャットアウトしました。
  • 家族との関係:
    意外に思われるかもしれませんが、私は家族との会話が最も苦手でした。近しい関係だからこそ、自分の惨めな現状を打ち明けられない。心配をかけたくないという思いと、理解してもらえないかもしれないという恐怖。一人暮らしを諦めて実家に戻ってからも、家族とのコミュニケーションはほとんどありませんでした。
  • 社会との関係:
    一人暮らしの時は、電話は基本的に無視。宅配便や来客があっても、居留守を使うのが当たり前。社会とのあらゆる窓を、自ら固く閉ざしていたのです。

こうして振り返ると、我ながら徹底的に人との関わりを避けていたな、と改めて感じます。

 

あなたの場合はどうでしょうか?

コミュニケーションの問題は、単に「人と会わない」だけではありません。

  • 意思伝達の質の問題:
    人と話していても、自分の言いたいことがうまく言葉にできない。相手の言っていることの意味が、すんなり頭に入ってこない。あるいは、人の言うことを何でも鵜呑みにしてしまい、簡単に騙されてしまう。
  • 集団行動の問題:
    1対1なら何とか話せるけれど、3人以上の集団の中に入ると、途端に居場所がなくなり、一言も発せなくなる。忘年会やパーティーのような、大勢の人が集まる場所は、耐えられないほどの苦痛を感じる。
  • 約束の問題:
    友人と会う約束をしても、当日になると気分が落ち込み、どうしても家から出られなくなる。申し訳ないと思いながらも、ドタキャンを繰り返してしまう。

このように、コミュニケーションの困難は、様々な形で私たちの生活に現れるのです。

 

「対人関係」7つのチェックリスト

ご自身のコミュニケーションについて、以下の視点から見つめ直してみてください。

□ 1. 交流の頻度:
家族以外の人と、会って話したり、電話したりする機会はありますか?(週に1回未満、月に1回未満など)

□ 2. 連絡への応答:
電話がかかってきた時に、出ることができますか?LINEやメールに目を通し、返信することができていますか?

□ 3. 意思の伝達:
会話の中で、ご自身の考えや気持ちを、相手に分かりやすく伝えることができていますか?

□ 4. 話の理解:
相手の言っていることを、集中して聞き、正しく理解することができていますか?

□ 5. 集団への適応:
複数人がいる場に参加し、その中で過ごすことができますか?

□ 6. 約束の遵守:
他人との約束(時間や内容)を守ることができていますか?(ドタキャンを繰り返していませんか?)

□ 7. 適切な距離感:
相手に対して、過度に馴れ馴れしくなったり、逆に極端によそよそしくなったりせず、適切な距離を保つことができていますか?

 

【項目⑥】危機対応:うっかりミスから災害、そして“最悪の事態”まで

「身辺の安全保持及び危機対応」。
この項目は、パッと見ただけでは、何を聞かれているのか分かりにくいかもしれません。私も、この項目を説明する時には、いつも少し戸惑います。

これは、大きく2つのことを問われています。

  1. 安全保持: 普段の生活の中で、うっかりミスなどから、ご自身の安全を危険に晒していませんか?
  2. 危機対応: 何か予期せぬトラブルが起きた時に、適切に対応し、乗り越えることができますか?
  3.  

体験談:前方不注意で起こした追突事故

まず「安全保持」について、最も分かりやすい例は自動車の運転です。
うつ病の症状や薬の副作用で、集中力や判断力は著しく低下します。私も、病状が悪化してすぐの頃、自動車事故を起こしてしまいました。渋滞の中で、ボーッとしていて前の車が止まっているのに気づくのが遅れ、追突してしまったのです。幸い、軽い事故で済みましたが、一歩間違えれば大惨事になっていたかもしれません。

運転をしない方でも、

  • 道を歩いていて、車や自転車にぶつかりそうになる。
  • 料理中、ガスの火を消し忘れる。
  • 家の鍵をかけ忘れて外出してしまう。
  • 電車でうっかり乗り過ごし、知らない駅まで行ってしまう。

このような「うっかり」や「ヒヤリハット」の経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。これらは、集中力や注意力が低下していることの、明確なサインです。

そして、この「安全保持」の究極的な問題として、自殺企図があります。
常に死ぬことを考えている「希死念慮」から、実際に手首を切ったり、薬を大量に飲んだりする「自殺未遂」まで。ご自身の命を危険に晒す行為は、この項目で最も重く評価されるべき点です。

 

「助けて」が言えますか?危機に瀕した時の対応能力

次に、「危機対応」についてです。
これは、トラブルが「起きてしまった後」の対応能力を問うています。

先ほどの私の事故の例で考えてみましょう。
事故を起こしてしまった後、私たちは多くの対応を迫られます。負傷者の確認と救護、警察への連絡、相手との連絡先交換、保険会社への報告…。パニック状態の中で、これらを冷静に、的確にこなせるでしょうか。

私たちが病気によって判断力を失っているとき、その場で思考停止してしまい、同乗者や周囲の人に全てを任せてしまう、ということは十分に考えられます。

この「対応力」の中でも特に重要なのが、「困った時に、誰かに助けを求められるか」という点です。

事故の時に保険会社に電話するのも、道に迷った時に交番で尋ねるのも、一種の「助けを求める」行為です。しかし、対人関係に困難を抱えていると、この簡単なはずの行為が、途端に難しくなります。

最も身近で深刻なのは、お金の問題でしょう。
働けなくなり、収入が途絶える。いずれ生活が立ち行かなくなることは分かっているのに、誰にも相談できず、問題を先延ばしにしてしまう。そして、家賃や公共料金の督促状が届いてから、ようやく事の重大さに気づく…。

困った時に「助けて」と言えるかどうか。これは、私たちが社会で生きていく上で、極めて重要な能力なのです。

この危機対応能力が、最も極端な形で試されるのが、災害時です。
地震や台風が起きた時、あなたは一人で自分の命を守る行動がとれるでしょうか。

  • 情報収集: ニュースや防災無線に注意を払い、危険が迫っていることを察知できるか。
  • 判断: 家に留まるべきか、避難所に行くべきか、適切に判断できるか。
  • 行動: 避難すべき時に、ためらわずに行動に移せるか。
  • 避難所生活への適応: 大勢の人がいる避難所で、精神的な負担に耐えながら生活できるか。

ある方は、災害が起きたら、それに流されて死んでしまえばいい、と考えたそうです。自殺は能動的な行為だからハードルが高い。でも、災害死なら、何もしなければいい。そう思うほど、生きる気力を失っていたのです。

「危機対応」とは、まさに「生き抜く力」そのものを問うている、と言えるのかもしれません。

 

「危機対応」6つのチェックリスト

少し重い話になりましたが、ご自身の状況を客観的に評価するために、以下のリストを参考にしてください。

□ 1. 不注意による危険:
集中力の低下などから、事故や怪我につながりそうな「ヒヤリハット」体験はありませんか?(運転、歩行、火の元など)

□ 2. 自殺念慮・自傷行為:
死にたいと考えたり、実際に自分自身の体を傷つけたりしたことはありませんか?

□ 3. トラブル発生時の対応:
予期せぬトラブル(事故、急な体調不良など)が起きた時、一人で冷静に対応できますか?

□ 4. 援助希求:
困った時、家族や友人、公的機関などに「助けてほしい」と相談することができますか?

□ 5. 災害への備えと対応:
自然災害などが発生した際、情報を収集し、避難などの適切な行動を一人でとれると思いますか?

□ 6. 危険の予測:
危ない場所や状況を避けたり、危険を予測して事前に対策をしたりすることができていますか?

 

【項目⑦】社会性:レンタルビデオの延滞から見えた、社会とのズレ

いよいよ最後の項目、「社会性」です。
この言葉も、非常に範囲が広く、何を指しているのか分かりにくいですよね。「社会性がない」と聞くと、何か突飛な行動をする人を想像してしまい、「自分はそこまでではない」と思ってしまうかもしれません。

しかし、診断書で問われている「社会性」は、もっと身近な問題を指しています。診断書の注釈には、「銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能か。また、社会生活に必要な手続きが行えるか」とあります。

つまり、社会のルールや仕組みを理解し、それに沿って必要な手続きや行動を、一人で遂行できるか、ということです。

ここでも問題になるのは、「やるべきこと」が分かっていても、気力や体力がなく、行動に移せないという点です。
例えば、毎年更新が必要な自立支援医療の申請。期限が迫っていると分かっていても、どうしても役所に行くことができず、期限が過ぎてしまった…。私も、そんな経験があります。

また、うつ病や発達障害の特性として、文字や文章を読むのが困難になることがあります。書類を読んでも、内容が全く頭に入ってこない。どこに何を書けばいいのか理解できない。こうなると、手続きそのものが物理的に不可能になってしまいます。私も、調子が悪い時は、本を読んでも同じ行を何度も読み返すだけで、全く内容が理解できない、ということがよくありました。

 

体験談:1万円の延滞料金が教えてくれたこと

この「社会性」という曖昧な言葉を、私が身をもって理解した、忘れられない出来事があります。それは、レンタルビデオ屋での一件です。

調子が良い時に、見たい映画を数本借りました。問題は、1週間後の返却日です。その日、私は絶不調のどん底にいました。ベッドから動けず、ビデオを返しに行くなど、到底不可能です。

「明日、行こう」
そう思って、一日、また一日と先延ばしにする。気づけば、1ヶ月が経っていました。
いよいよまずいと思い、重い体を引きずって店に行くと、店員から告げられた延滞料金は、1万円を超えていました。

たかがレンタルビデオの延滞です。しかし、この些細な失敗の中には、

  • 社会のルール(返却期限)を守れない。
  • やるべきこと(返却)を行動に移せない。
  • 問題を先延ばしにして、事態を悪化させる。

といった、私の「社会性」における様々な問題が凝縮されていたのです。

 

あなたの「日常の困りごと」は全て「社会性」の問題かもしれない

私がこの経験から学んだのは、「社会性」とは、これまでの6項目に当てはまらなかった、あらゆる日常の困りごとや失敗談の受け皿になる、ということです。

例えば、郵便受けの管理
引きこもっていると、郵便物を取りに行くことすら億劫になります。取りに行っても、仕分けができずに放置してしまう。その中に、公共料金の督促状や、重要な手続きの案内が含まれているかもしれません。たかが郵便物の処理ですが、これができないことで、社会的な不利益を被る可能性があるのです。

あなたが日常生活の中で、「これ、できなくて困ってるんだよな」「こんな失敗しちゃったな」と感じていることはありませんか?
一見、些細で、障害年金の評価とは関係ないように思えることでも、それが積み重なれば、「社会生活を円滑に送ることが困難である」ことの、有力な証拠となるのです。

そして、文字通り、社会との繋がりそのものも、この項目で評価されます。
この病気は、友人や職場との関係を、根こそぎ奪っていくことがあります。あなたは今、社会との繋がりを持っていますか?一週間のうちに、誰かと会話をする機会はありますか?誰とも話さず、社会から隔絶した生活を送っているとすれば、それは「社会性」に大きな問題を抱えている、と言えるでしょう。

 

「社会性」5つのチェックリスト

最後の仕上げとして、ご自身の生活を以下の視点から総点検してみてください。

□ 1. 公的手続き:
役所での手続き(自立支援医療の更新、住民票の取得など)や、銀行での金銭の出し入れを、一人で行うことができますか?

□ 2. 書類の理解と作成:
公的な書類や手紙を読み、内容を理解し、必要な箇所に記入することができますか?

□ 3. 日常生活のルール遵守:
ゴミ出しのルールを守る、約束の時間を守るなど、社会生活を送る上での基本的なルールを守れていますか?

□ 4. 社会との繋がり:
家族以外に、定期的に交流のある友人や知人はいますか?社会的に孤立していませんか?

□ 5. その他の困りごと:
上記の項目以外で、日常生活や社会生活の中で、病気が原因で「できなくて困っていること」や「失敗してしまったこと」はありませんか?(些細なことでも構いません)

 

結論:最高の診断書は、あなたの「勇気ある告白」から生まれる

ここまで、7つの項目について、非常に長く、そして詳細に解説してきました。
考えれば考えるほど、多くのことを聞かれている、と感じたのではないでしょうか。ぱっと聞かれて、その場で即座に答えられるような内容ではない、ということも、お分かりいただけたと思います。

もし、あなたが何も準備せずに病院へ行き、医師から「日常生活はどうですか?」と聞かれたとして、これら全ての事柄を、悔いなく伝えきることができるでしょうか。おそらく、難しいでしょう。

だからこそ、私は強くお勧めします。
時間をかけて、ご自身の生活を振り返り、紙に書き出してみてください。

箇条書きのメモで構いません。「こんなこと、関係ないかな?」と思うような些細なことでも、ためらわずに書き出してみましょう。書いているうちに、忘れていた記憶や、気づかなかった困難が、次々と思い浮かんでくるはずです。

そうして作り上げた「あなたの日常の記録」は、最高の診断書を作成してもらうための、何より強力な資料となります。

医師は、科学者です。根拠のないことは書けません。しかし、逆に言えば、患者からの具体的な証言という「根拠」があれば、それに基づいて診断書を書いてくれる可能性は、飛躍的に高まります。

あなたの状況を、あなた以上に知っている人はいません。
恥ずかしい過去や、情けない自分と向き合うのは、辛い作業かもしれません。しかし、その勇気ある「告白」こそが、医師の心を動かし、あなたの未来を支える、正当な評価へと繋がっていくのです。

実際の手続きは、初診日の加入年金で窓口が分かれ、予約・持ち物・段取りが必要になります。
次は、名古屋市の入口ナビで「どこに相談し、どう進めるか」を確認してください。

「まずは話を整理したい」という段階でも大丈夫です。状況に合わせて、何から始めるのが最短か一緒に整理します。

【体験談】うつ病の障害年金|診断書「日常生活」のリアルな伝え方① 食事・入浴・金銭管理編

2025-08-18

「障害年金の等級は『日常生活』で決まる。だから、その状況を正確に医師に伝えることが何より重要です」

前回の記事で、私はそうお伝えしました。この記事を読んで、「なるほど、自分の生活をきちんと伝えなければ」と決意を新たにした方もいらっしゃるかもしれません。

▼前回の記事はこちら

【障害年金】うつ病の等級はどう決まる?認定基準の全貌と「あなたがすべきこと」を社労士が徹底解説

 

しかし、いざ「伝えよう」と思っても、次なる壁が立ちはだかります。
「日常生活って、具体的に何をどう伝えればいいんだろう?」
「こんなことまで話していいのかな…恥ずかしいな…」

そうですよね。その気持ち、痛いほどよく分かります。

こんにちは。双極性障害(躁うつ病)という精神疾患と共に生き、その経験を糧に障害年金を専門とする社会保険労務士として活動している渡邊智宏と申します。何を隠そう、私自身も障害年金を申請した当事者の一人。診断書に書かれる「日常生活」の項目を前に、何をどう伝えれば自分の本当の苦しみが伝わるのか、深く悩んだ過去があります。

だからこそ、この記事は単なる制度解説ではありません。同じ痛みを知る“当事者”として、そして数百件の申請をサポートしてきた“専門家”として、あなたが自分の状態を正しく、そして勇気をもって医師に伝えるための、超具体的なガイドブックです。

今回は、診断書に書かれる「日常生活能力」の7項目のうち、特に多くの人がつまずき、そして伝えるのが恥ずかしいと感じがちな最初の3項目「適切な食事」「身辺の清潔保持」「金銭管理と買い物」について、私の赤裸々な体験談も交えながら、徹底的に深掘りしていきます。

この記事を読めば、あなたが医師に伝えるべき「本当のあなた」の姿が、明確に見えてくるはずです。

〈目次〉

はじめに:あなたの「日常」を評価する“7つのものさし”

本題に入る前に、おさらいです。精神疾患の障害年金の診断書では、あなたの日常生活能力が、以下の7つの項目について、4段階で評価される仕組みになっています。

【日常生活の7つの項目】

(1)適切な食事

(2)身辺の清潔保持

(3)金銭管理と買い物

(4)通院と服薬

(5)他人との意思伝達及び対人関係

(6身辺の安全保持及び危機対応

(7)社会性

【4段階評価】

1.できる(特に問題なく、一人でできる)

2.自発的にできるが、時には助言や指導を必要とする(自分からやろうとはするが、時々手助けがいる)

3.自発的かつ適正に行うことはできないが、助言や指導があればできる(自分一人ではできないが、誰かに促されたり手伝ってもらえればできる)

4.助言や指導をしてもできない若しくは行わない(助けてもらっても、できない・やらない)

 

この「7項目×4段階」の評価が、あなたの障害等級を決定づける、最も重要な基礎となります。しかし、この評価は、あなたが何もしなければ、医師の「推測」で書かれてしまう可能性が高いのです。

なぜなら、医師はあなたの家庭での生活を直接見ることはできないから。だからこそ、私たち患者側から、「私の日常は、実はこうなんです」と、具体的な情報を提供する必要があるのです。

それでは、ここから一つひとつの項目について、それが一体「何」を評価しようとしているのか、私の経験も交えながら、じっくりと見ていきましょう。

【項目①】適切な食事:「食べられる」だけでは不十分な理由

最初にして、多くの方が「自分はできている」と勘違いしがちな項目。それが「適切な食事」です。

「ご飯、食べられますか?」

もし医師にこう聞かれたら、あなたはどう答えますか?
おそらく、多くの方が「はい、食べられます」と答えるのではないでしょうか。私たちが「食事ができない」と聞いて思い浮かべるのは、体が不自由で、お箸やスプーンが持てず、誰かに食べさせてもらう…そんな姿かもしれません。

しかし、思い出してください。この診断書は、精神疾患の重さを測るためのものです。身体的な機能を見ているわけではありません。

ここで問われている「適切な食事」とは、「栄養バランスの取れた食事を、規則正しく、計画的に準備し、後片付けまで含めて、自立して行えているか」という、非常に高度なレベルの話なのです。

体験談:コンビニ弁当とゴミ袋に埋もれた引きこもり生活

私の経験をお話しさせてください。
双極性障害が悪化し、会社を辞めて完全に引きこもるようになった頃、私の食生活は崩壊していました。

まず、食事が絶望的に不規則になりました。
うつ状態の時、経験した方ならお分かりいただけると思いますが、体が鉛のように重く、ベッドから起き上がるという、ただそれだけの行為がとてつもない苦行になります。「お腹が空いた」と感じても、食事の支度をするために立ち上がる、その最初のワンステップが踏み出せないのです。

「何か食べなきゃ…」と思いながら、時間だけが虚しく過ぎていく。結局、空腹が限界に達し、我慢できなくなるまで何も口にしない。そんな日が続きました。

当然、生活リズムは昼夜逆転。明け方に眠り、昼過ぎに起きる。朝食は昼過ぎ、夕食は真夜中。そんな生活でも三食きっちり食べられればまだマシですが、そもそも行動に移せないので、食事は1日2食、ひどい時は1食ということもザラでした。

そして、ようやく動き出すのは、飢餓感がピークに達した時です。すると今度は、反動で異常な量を食べてしまう。精神的なストレスを紛らわしたいという衝動も手伝って、過食に走るのです。一度に二人前くらいの量を詰め込むように食べる。糖尿病の治療中だったにもかかわらず、血糖値は悪化の一途をたどりました。

では、その食事をどうやって手に入れていたのか。
もちろん、自分で調理するなど夢のまた夢。かといって、外食に行く気力もありません。引きこもっていると、身だしなみを整えること自体が億劫になります。伸び放題の髭、何日も着替えていない部屋着。こんな姿で人前に出られるはずもありません。

唯一の選択肢は、コンビニでした。
人目が少なくなる深夜、部屋着のままコンビニへ行き、弁当を買い込む。これも、空腹のピークに行くものですから、一つでは済みません。弁当を2つ買い、さらにポテトチップスや甘いパンを買い込み、お酒で流し込む。そんな暴飲暴食が私の日常でした。

そして、食べ終わった後。
食べた後の弁当の容器は、当然のように放置されます。机の上がいっぱになると、レジ袋に突っ込み、口を縛って部屋の隅に転がしておく。ゴミ出しの日を知っていても、その時間に起きてゴミを出しに行くことができない。やがて部屋はゴミ袋であふれ、夏場には虫が湧く。そんな不衛生極まりない環境で、私は生きていました。

これが、私の「食事」の実態でした。
これを、先ほどの4段階評価に当てはめるとどうなるでしょうか。
レベル1「できる」でないことは明らかです。かといって、レベル4「援助があってもできない」わけでもない。最終的に自分でお金を出して食べているわけですから。

問題は、レベル2「自発的にできるが、時に援助が必要」か、レベル3「自発的にできないが、援助があればできる」か。

「最終的に自分で食べているのだから自発的だ」とも言えますし、「“適切な”食事は全くできていないのだから、自発的にできているとは言えない」とも解釈できます。非常に曖昧ですよね。

最終的に、これらの情報を伝えた上で、私の診断書に付けられた評価は、レベル2でした。正直、これだけ酷い状況なのに…と、少し辛く感じたのを覚えています。しかし、それは私が事前に「これだけ困っている」という情報を、具体的に伝えられていなかった結果かもしれません。

「適切な食事」とは?5つのチェックリスト

私の事例からも分かるように、単に「食事」と言っても、そこには様々な側面が含まれています。あなたがご自身の状況を整理し、医師に的確に伝えるために、以下のチェックリストを参考にしてみてください。

□ 1. 計画と準備:
献立を考え、必要な食材を買いに行き、調理するという一連の行動が一人でできますか?(コンビニ弁当や宅配、総菜ばかりに頼っていませんか?)

□ 2. 規則性:
朝・昼・晩と、おおむね決まった時間に食事をとれていますか?(1日1食や2食になったり、食事を抜いたりしていませんか?)

□ 3. 内容と質:
栄養バランスの偏ったものばかり食べていませんか?(お菓子や菓子パンが食事代わりになっていませんか?)

□ 4. 量の問題:
拒食(食べられない)や過食(食べ過ぎてしまう)の傾向はありませんか?

□ 5. 後片付け:
食器を洗ったり、生ゴミを処理したり、ゴミ出しをしたりすることができていますか?

これら5つの項目すべてを、大きな支障なくできて、初めて「適切な食事ができている」と言えるのです。これは、健康な人でも時には難しい、非常に高いハードルだと思いませんか?

ましてや、うつ病で心と体が動かない状態にある方にとっては、むしろ一つでもできていたら凄い、というのが実情ではないでしょうか。

あなたは今、ご自身の「食事」の状況を、ここまで具体的に把握できていましたか?そして、その困難を医師に伝えられていましたか?もし、できていないのであれば、ぜひ一度、このリストを元にご自身の生活を振り返ってみてください。

【項目②】身辺の清潔保持:「死なないから」後回しになる、一番言いにくいこと

次にご説明するのが、「身辺の清潔保持」です。
簡単に言えば、「身の回りを清潔に保ち、衛生的な生活を送れていますか?」ということです。

そしてこの項目こそ、精神疾患を抱える私たちにとって、最も困難で、かつ、最も他人に打ち明けにくい項目だと、私は断言します。

なぜか。
先ほどの「食事」は、食べなければ命に関わります。どんなに辛くても、生きるために最低限の行動を取らざるを得ません。

しかし、「清潔」はどうでしょうか。
極端な話、お風呂に入らなくても、部屋が汚くても、すぐに死ぬことはありません。そして、引きこもっていれば、誰かにその不潔さを指摘されることもない。だからこそ、限られたエネルギーの中で、真っ先に切り捨てられ、後回しにされてしまうのです。

そして何より、この問題は「恥ずかしい」という感情と直結します。
「食事が作れない」と言うよりも、「何日も歯を磨いていない」と言う方が、何倍も勇気がいると感じませんか?

最も生活に支障が出やすく、最も人に言いにくい。それが「身辺の清潔保持」なのです。

体験談:「次のお風呂は1週間後」が当たり前だった日々

これも、私の恥ずかしい過去をお話しします。
引きこもり生活において、私の衛生観念は完全に麻痺していました。

まず、部屋の片付け
これは多くの方にとって“鬼門”ではないでしょうか。気力も体力もゼロの状態では、部屋を掃除するなどという高尚な行為にエネルギーを割くことは不可能です。いわゆる「汚部屋」「ゴミ屋敷」と呼ばれる状態に、程度の差こそあれ、多くの当事者が陥ります。

私の部屋も、前述の通りコンビニ弁当のゴミ袋で溢れかえっていました。掃除機をかけるなど、もはや異次元の話。何か物を探すときは、ゴミの山をかき分けるような状態でした。

次に、身だしなみ
これが、うつ状態の人間にとっては、本当に難しい。仕事に行く、誰かに会うといった「きっかけ」がなければ、人は驚くほど無頓着になります。

私は、まずヒゲを剃る事ができなくなりました。更に、お風呂に入らず、歯も磨かない。服は、同じ部屋着を着っぱなし。洗濯は、いよいよ着るものが一枚もなくなった時に、仕方なくやるだけ。

特に入浴は、うつ病患者にとってエベレスト登頂並みにハードルが高い行動だと思います。
一人暮らしなら、なおさらです。
湯船にお湯を張り、服を脱ぎ、体を洗い、髪を乾かし、また服を着る。この一連の動作を想像しただけで、どっと疲れてしまうのです。頭がかゆい、体がベタベタして気持ち悪い。そう感じてもなお、「明日でいいや」という先延ばしの誘惑が勝ってしまう。

そうして、「明日やろう」を毎日繰り返し、気づけば1週間が経っている。これは、私にとってごく当たり前のことでした。

人に会う予定がなければ、歯磨きや洗顔も億劫になります。食事すら辛いのに、わざわざ立ち上がって洗面所まで行くという行為が、果てしなく遠い道のりに感じられるのです。

私の場合、週に一度の通院日が、唯一の「リセット」の日でした。その日の朝、ようやく重い腰を上げてシャワーを浴び、歯を磨き、ヒゲを剃り、数少ない外出着の中からマシなものを選んで着る。もし通院が月に一度だったら、私の衛生状態はもっと悲惨なことになっていたでしょう。

入浴をしないということは、服を着替えるきっかけもなくなるということです。一日中ベッドの上で過ごす毎日。部屋着のまま眠り、そのまま起きる。下着すら、1週間替えないこともありました。

今、こうして文章にしながらも、自分のことながら顔から火が出る思いです。これは、到底人に話せるようなことではありません。しかし、これが当時の私の、偽らざるリアルな姿でした。

なぜ医師に伝わりにくいのか?病院に行く日の“ワナ”

ここで、非常に重要な問題があります。
それは、「清潔保持」に関する困難は、特に医師に伝わりにくいということです。

なぜだと思いますか?
答えは簡単です。私たちが病院に行くのは、「一番マシな状態」の時だからです。

普段、何日もお風呂に入らない人でも、病院に行く日となれば話は別です。それは、引きこもりの人間にとって数少ない「社会との接点」であり、一大イベントだからです。その日のために、私たちは残された最後の気力を振り絞って身綺麗にします。

お風呂に入り、歯を磨き、清潔な服に着替える。そして、精一杯の「普通」を装って、診察室のドアを開ける。

医師の目に映るのは、そんな「取り繕った姿」だけです。医師は、あなたが家では何日もお風呂に入れずに苦しんでいるなど、知る由もありません。あなたが自分から言わない限り、医師は「この患者さんは、身だしなみもきちんとされているな」と判断してしまう可能性すらあるのです。

だからこそ、声を大にして言います。
清潔保持に関する困難は、あなたが意識して伝えない限り、絶対に伝わりません。

とても恥ずかしいことだと思います。特に女性であれば、なおさらでしょう。口に出して言うのが辛ければ、この記事で紹介しているように、紙に書いて渡す方法を強くお勧めします。あなたの勇気が、正しい評価につながるのです。

「清潔保持」6つのチェックリスト

ご自身の状況を客観的に見つめ直すために、以下のリストを活用してください。

□ 1. 居室の掃除・整理整頓:
定期的に部屋の掃除ができていますか?(物が散乱し、足の踏み場もない状態ではありませんか?)

□ 2. ゴミの処理:
ゴミを分別し、決められた日にゴミ出しができていますか?(部屋にゴミ袋が溜まっていませんか?)

□ 3. 入浴:
入浴やシャワーを、適切な頻度(せめて2~3日に1回以上)で行えていますか?

□ 4. 洗面・歯磨き:
毎日の洗顔や歯磨きができていますか?

□ 5. 着替え:
毎日、清潔な衣服や下着に着替えていますか?

□ 6. 洗濯:
汚れた衣類を定期的に洗濯できていますか?

【項目③】金銭管理と買い物:「できない」のは浪費だけじゃない

3つ目の項目は、「金銭管理と買い物」です。
「お金の管理」と聞くと、多くの人は「無駄遣いをしていないか」「浪費癖はないか」といった側面を思い浮かべるかもしれません。

もちろん、それも重要な評価ポイントです。特に、双極性障害の躁状態や軽躁状態の時には、気分が高揚して金遣いが荒くなり、返済能力を超えた借金をしてしまう、といった危険性があります。これは診断書でも非常に重視される点です。

しかし、この項目で問われているのは、それだけではありません。
うつ状態においては、むしろ真逆の問題が起こります。つまり、「必要なものを、必要な時に、買うことができない」という困難です。

体験談:支払いを滞納し、必要なものが買えなかった頃

引きこもり生活になると、必然的に外出の機会は激減します。「仕事帰りにスーパーに寄る」「休日にショッピングモールをぶらぶらする」といった、日常的な買い物の機会が失われます。

食料品は、生きるために最低限、買いに行かざるを得ません。しかし、トイレットペーパーや洗剤、シャンプーといった日用品はどうでしょうか。

「在庫が切れた。でも、まあ、なくても死なないか…」
そう、またしても「死なないから」という理由で、後回しにされてしまうのです。わざわざそのために服を着替え、外出するエネルギーがない。そうやって、必要なものが買えないまま、不便な生活を我慢し続ける。そんなことが頻繁にありました。

また、「支払管理」も大きな問題でした。
電話代、ガス代、電気代・・・。毎月やってくる公共料金の支払い。口座引き落としにしていればまだ良いですが、コンビニ払いなどの請求書が来ると、もう大変です。

指一本動かすのも億劫な状態では、お金の管理のような煩わしいことから、つい目を背けたくなります。請求書が届いても、封を開ける気力すらない。気づけば支払期限を過ぎ、督促状が届く。それでも、コンビニまで支払いに行くという行動がどうしてもできない。

私は実際にガスを止められてしまいました。ライフラインの中で、ガスは1番に止められるんですね。最終的には親に金を無心して何とか繋ぐ、という情けない状態でした。

このように、「金銭管理と買い物」の困難は、浪費という「やりすぎ」の側面と、必要な行動ができないという「できなさすぎ」の側面、両方から見る必要があるのです。

「金銭管理」5つのチェックリスト

あなたの状況は、以下の項目に当てはまらないでしょうか。

□ 1. 計画的な買い物:
日用品など、必要なものを計画的に購入できていますか?(在庫が切れても買いに行けない、ということがありませんか?)

□ 2. 支払い管理:
家賃や公共料金などを、期限内に支払うことができていますか?(口座の残高管理や、振込・コンビニ払いなどができていますか?)

□ 3. 浪費・衝動買い:
ストレスなどから、高額な商品を衝動的に買ったり、過度な浪費をしたりしていませんか?

□ 4. 借金の問題:
返済のあてがないのに、借金(キャッシングやローン含む)を繰り返していませんか?

□ 5. 予算管理:
自分の収入の範囲内で、計画的にお金を使うことができていますか?

まとめと次回予告

今回は、障害年金の等級判定で最も重要となる「日常生活能力」の7項目のうち、「適切な食事」「身辺の清潔保持」「金銭管理と買い物」という、最初の3項目について、私の体験談も交えながら詳しく解説しました。

▼今回のポイント

  • 適切な食事: 献立→準備→調理→摂食→片付け、という一連の流れを評価される。
  • 身辺の清潔保持: 「死なないから」と後回しにされがちで、かつ医師に最も伝わりにくい項目。意識して伝える勇気が必要。
  • 金銭管理と買い物: 「浪費」だけでなく、「必要なものが買えない」「支払いができない」といううつ状態特有の困難も重要な評価点。

一見、単純に見える項目にも、これだけ多岐にわたる評価の視点が隠されていることを、ご理解いただけたでしょうか。大切なのは、これらの視点を持ってご自身の生活を客観的に振り返り、そのリアルな姿を医師に伝えることです。メモ書きで良いのです。あなたのその行動が、未来を大きく変える一歩になります。

【次回予告】
さて、次回は残りの4項目、

  • (4)通院と服薬
  • (5)他人との意思伝達及び対人関係
  • (6)身辺の安全保持及び危機対応
  • (7)社会性
    について解説していきます。特に「対人関係」や「社会性」は、多くの方が悩みを抱える部分だと思います。引き続き、具体的なポイントを徹底的に解説していきますので、ぜひご覧ください。

実際の手続きは、初診日の加入年金で窓口が分かれ、予約・持ち物・段取りが必要になります。
次は、名古屋市の入口ナビで「どこに相談し、どう進めるか」を確認してください。

「まずは話を整理したい」という段階でも大丈夫です。状況に合わせて、何から始めるのが最短か一緒に整理します。

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