てんかんによる交通事故から思う「精神障害者の生き様」

今、世間を賑わわせているニュースに、祇園の交通事故があります。

てんかん患者による人身事故という事で、昨年のクレーン車の事故を思い起こさせます。
抗てんかん薬の反応があったとか、意識はあったようだとか、様々に問題はあるようですが、世論として、てんかん患者の運転は危険だから避けるべき、という風潮があります。

てんかんの危険性

実際、てんかんの発作の可能性のある人が自動車の運転や機械操作などに従事する事は、事故の危険性が高く、多くのてんかん患者もそれらはよく解っている事と思います。
交通事故
企業側から見ると、単に安全管理上問題があり、労災リスクが高まります。何より、発作時にコントロールが効かない可能性が高く、重大事故につながりやすいという側面は無視できません。
運送関係や機械操作が伴う業種の場合、入社時においてしっかり確認をとっておく事が大切です。
患者側からすれば、聞かれなければ申告する義務はありません
知らずに雇ってしまった場合、てんかんを理由に解雇するという事は難しくなります。

危険作業がある職場は、入社時にてんかんでないという誓約書なりをとっておく方が良いでしょう。
但し、あくまでも就業上、危険作業に従事するので安全確保のため、という合理的な理由がある場合に限ります。

てんかん患者が運転を自粛すれば問題はなくなるのか?

こうしたことから規制の強化が望まれたり、患者に対する不当な差別が助長されたりする事も別の問題をはらんでいます。

例えば、自動車の運転を一律に規制したとしたらどうでしょうか。

車の運転ができないとなれば、ただでさえ難しい就職がさらに困難になります。また、都心部を除けば、日常生活の移動にも制限を受けてしまいます。
また、単に病気であるという理由だけで権利を奪ってしまって良いのかという議論も出てくる事でしょう。

「てんかんでない事の証明」は可能か?

さらに、運転免許取得時において「てんかんでない事の証明」をとる事が可能か、という問題もあります。

この「てんかんでない事の証明」がとれるのかどうか、少し気になったので調べてみました。

「~である事」の証明は容易ですが、「~でない事」の証明は大変困難です。悪魔の証明とも言われます。

ところが、その証明を必要とする資格がありました。
銃

銃刀法です。

精神障害若しくは発作による意識障害をもたらしその他銃砲若しくは刀剣類の適正な取扱いに支障を及ぼすおそれがある病気」のある人は銃を所持する事ができません。
そのため、精神科の専門医による診断書が必要になるのです。

銃の所持という非常に慎重にならざるを得ない場面では、てんかんのみならず、統合失調症、そううつ病やうつ病などの精神疾患でないという証明も必要となるのです。

殺傷能力という点から考えれば、銃も自動車も同様なのでしょう。しかし、銃と自動車では日常性に天と地との開きがあります。銃規制と同列に扱うべきかどうかは議論の余地があります。

「てんかん」で障害年金はもらえるのか?

この銃刀法のように、てんかんは所謂、精神疾患で、うつ病や統合失調症などと同列に語られます。そうすると、日常生活上の問題は、精神疾患の患者と似てきます。

一番大きな問題はお金でしょう。

うつ病などもそうですが、服薬により症状が抑えられているとしても、病名を告げて応募すれば、一般企業ではまず採用されないでしょう。働く事ができなければ毎日の生活費が出ません。
そこで社会保障の出番となります。

てんかんでも障害年金はでます。

障害年金の認定基準というものがあり、その中に「てんかん」の場合の認定基準も記載されています。

年金

2級の認定基準によれば、

十分な治療をしていても、意識障害や転倒などの重い発作が年に2回以上あるか、転倒まではしない発作が月に1回以上あり、なおかつ、日常生活が著しい制限を受ける者

とあります。

発作の頻度や日常生活でどれほど制限を受けているかを訴える事で受給される可能性は高くなります。
又、てんかんは子供の頃に発症する事が多い病気です。20歳前に発病し、医師の診断を受けていた場合、年金を全く納めていなくても受給できると言う制度もあります。

困っている人は、とにかく専門家に相談する事をオススメします。
当事務所でも障害年金の相談を受け付けております。私も精神障害の経験者です。安心してご相談ください。相談料は無料です。)

とはいえ、「抗てんかん薬の服用や、外科的治療によって抑制される場合にあっては、原則として認定の対象にならない。」とあります。薬で抑制する事でそれほど頻繁に発作が起きる訳ではない、と言う人は受給が難しくなっています。

てんかん、うつ病など精神障害者と社会

このように、軽度の場合、社会保障の対象にはならないにも関わらず、社会からの差別的待遇はあるため、患者は生活苦に追いやられます。

実際、労務リスクという点で、企業が精神疾患の患者を雇わない事は合理的な選択です。私が事業主であってもそうするでしょうし、顧問先にもそう言うでしょう。そして現実として、病名を告げて応募した場合はほとんど採用されていないと思います。

しかし、障害年金が出る程の障害でもない。

それでも生きていかなければなりません。

企業をはじめとする社会の立場と精神疾患患者としての個人の立場とのギャップが大きく存在しています。
この点について、身体障害や知的障害に比べて、精神障害についての対策は全く進んでいないと思います。

てんかんやうつ病などの精神障害が身体や知的障害に比べて避けられている理由は、いつ症状がでるか解らないという不確定性にあります。
いろいろな経営者に聞いてみても、いつ休むか解らないうつ病患者は雇えない、と口をそろえます。てんかんもいつ発作を起こすか解りません。この先の読めないリスクを背負う事が企業にとっては難しいのです。

そして、ずっと続く不景気により、その傾向は一層強くなってきています。

精神障害者の生きていく道とは 雇われずに働く

では、こうした精神疾患の患者はどうして食べていけば良いのか。
生活保護しかないのか。

正直、「正解」は私には解りません。

しかし、一つの解答として、雇われずに働く、という選択肢があると思っています。
「働く」という事は、必ずしも「雇われる」という事ではないのです。

自営業というと、不安定、というイメージが強いと思います。実際、サラリーマンに比べてかなり不安定だとは思います。

ただ、企業に「雇用されない」状態と比べると相当安定してはいる訳です。

病気であるという、どうしようもない現実。
それを知られれば雇われないという現実。
隠す事の後ろめたさ。
隠す事の難しさ。
病気療養のための空白期間、何をやっていたか、と聞かれるだけで破綻する面接。

そうした現実をかいくぐって就職する事に比べれば、手に職をつけて小さく自営業をやる方が現実的なように思えるのです。
私自身、うつ病と診断され、長期間療養したため、雇われる事は無理だと思いました。

自営業であることのメリット 特に精神障害者にとって

自営業は「不安定だ」、という事の裏返しとして、ずっと「安定的に拘束」される訳ではない、という事があります。

企業が精神障害者の雇用を控えるのは、いつでも、いつまででも働けます、という保証がないからです。と言う事は、雇われたら基本的に毎日働かなければなりません。
しかし、自営業であれば、「今日は調子が悪いからパス」、と言えるのです。

もちろん、後日そのツケは回ってきますが、自分の体調のせいですから、それほど腹も立ちません。
カバーしてくれる組織がある訳でもないので大変なのですが、それは実は雇われていたとしても同じ事です。
その日の仕事は誰かがなんとかしてくれるでしょう。でも、会社としてそういう人をバックアップするつもりはないでしょうから、早晩、退職勧奨が待っています。
それに比べれば、少なくとも自営業に退職勧奨はありません。

資金繰り等、困難も沢山ありますが、その分やりがいもあります。一度独立すると解りますが、人から「やらされる仕事」とそうでない仕事ではストレスのかかり具合が全く違います。

今、私自身に、自分の経験を踏まえてアドバイスしろ、と言われれば、迷う事なく自営業を勧めます。

そもそも日本の大企業がいつまでも日本にいるかどうが怪しいという最近の世の中です。障害年金をもらいながら、小さな仕事で補って生活していく、というスタイルがもっとやりやすい世の中になれば精神障害者の生活ももっと楽になるのに、と考えずにはいられません。

 

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