社員の健康をめぐる論点 安全配慮義務


今日は労働法の勉強会に出席しました。
石嵜先生という労働法界隈では大変高名な方のセミナーです。大変アグレッシブな論を展開される先生で、毎回知的好奇心を呼び覚まさせてくれる先生です。

さて、そのセミナーの中で今日もっとも強調されていた事の一つに、社員の健康問題がありました。
今、未払い残業代などが社会問題化しようとしていますが、今後の展開は社員の健康問題に発展していくだろうという予測です。健康問題こそが現代の企業にとっての喫緊の課題であるととらえています。


過労死は月80時間以上の残業で問題化!!

最近では居酒屋チェーンのワタミの従業員過労死問題が話題になっていました。ワタミの件は、会長の渡邉美樹氏のツイッター上での発言が炎上の元でしたが、発端は過労死事件です。

自殺のワタミ社員、労災認定=「長時間労働のストレス」―神奈川

居酒屋「和民」を展開するワタミフードサービス(東京)の社員だった森美菜さん=当時(26)=が2008年に自殺したのは、長時間労働によるストレスが原因だったとして、神奈川労働者災害補償保険審査官が労災適用を認める決定をしていたことが21日、分かった。決定は14日付。

5~7日間連続の深夜勤務など長時間労働で、時間外労働は月100時間を超えた。入社約2カ月後の同年6月、自宅近くのマンションから飛び降り自殺した。

今日の石嵜先生の話にも出てきましたが、やはり月80時間以上の残業は問題となってくるようです。労働基準法の改正により、月60時間以上の残業代が2割5分増から5割増に変わった事から、今後の社会情勢的には週60時間が一つの分水嶺になるとの見解もありました。経営の問題もあるけれど、今なら80時間、将来的には60時間を超す残業は相当にリスキーな事になります。


安全配慮義務違反についての新判例 裁判費用は誰が払う?

こうした社会的な動向に呼応するかのように、新しい判例も出てきています。
安全配慮義務違反の賠償でも弁護士費用は請求可能

プレス機にはさまれて指を切断してしまった労働者が、会社側を安全配慮義務違反で訴えた、という事件です。

この裁判にかかる弁護士費用をどちらが負担するのかという点が問題となりました。長くかかる裁判の費用は無視できない金額、数十万~数百万円規模になります。

安全配慮義務というのは、会社が人を雇う場合、働く環境を安全に保つ義務があるという事です。社員が仕事中に怪我や病気にかかるという事は、この安全な環境が保たれていなかったからだ、弁償しろ!という主張が成り立つのです。社員の安全を確保する義務があるのに、それを果たしていないのだから債務不履行だ、という事です。

この時の裁判費用が損害に含まれるのかどうかというのがこの判例の論点です。

これまでの通説では債務不履行の場合は弁護士費用は損害に含まれないとされていました。
債務不履行が問題になるのはお金の支払い問題であるという前提で法律がつくられていました。お金の問題であれば法定利息というのが決まっていたので、争いに必ずしも弁護士をたてる必要はないだろうという判断があり、弁護士費用は損害に含まれないと考えられていたのです。

しかし、今回の判決では、裁判費用が損害に含まれるとされました。これは、この事件が単純な金銭問題ではなく、弁護士を立てて争わなければ到底解決できない難しい事案だと判断したからです。そして、弁護士を雇わなければ解決できない裁判をしなければならないのは、義務違反をした会社の責任であり、損害に含まれるのだ、という事なのです。

長時間労働による過労自殺やうつ病罹患などで訴えるときも、この判例と同じく安全配慮義務違反で訴えることが多いのです。そうすると、同じ理屈を使う事で、さらに会社側の負担が増える可能性が出てきました。
会社側としては、ますます厳しい情勢となってきています。


社員の過労を防止するためには「睡眠管理」が必要不可欠!

やはりこうした問題は、裁判などの争いになる前に食い止めることが一番大切でしょう。戦ったら負けです。戦わないための施策こそが重要なのです。
そもそもそんな長時間労働をさせないという事が一番大切です。が、それができない場合は、社員の健康管理をしっかりする事が必要になります。睡眠不足は人をうつ病にさせる大きな原因であり、また同時にうつ病の解りやすい症状でもあります。

健康管理というと難しいですが、社員1人1人がよく眠れているかどうかを確認するだけでも違ってきます。単に睡眠時間が確保できているかだけにとどまらず、その睡眠の質も良いのかどうかが問題です。十分な睡眠時間があっても、浅い睡眠しかとれていなければメンタルは壊れてしまいます。朝起きた時の睡眠の充実感が得られているか、疲労は回復しているか、そういったところに重点を置いた睡眠管理が大切です。
週に一回でも、月に一回でも、社員1人1人がきちんと眠れているかどうかを確認してください。眠れていない人がいたら、必要な指導をするなり、メンタル系の病院を受診させるなりの対応をとれます。睡眠導入剤を飲むだけでもだいぶ違います。また、会社が睡眠時間について指導する事で社員も睡眠について注意を向けることになります。

メンタルの管理は第一に睡眠です。そして、メンタルの不調も睡眠に出ます。社員の睡眠に注目してください。

 

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