有期労働への規制は強ければ強い方が良いのか?

今朝、中日新聞を見ていたらこんな記事が。

厚生労働省の検討している有期労働契約への規制が甘すぎるという内容です。
厚生労働省の考えてる規制は、有期労働で雇える期間は5年までとする内容です。これは一回当たりの契約の期間の事ではなく、何回か繰り返して契約した場合でも、上限は5年、という意味です。これに対して十分な規制でない、というのがこの記事の主張です。




有期雇用の新しい規制の問題点とは?

現在の有期雇用に対する規制は、一回当たりの契約期間の上限を3年と定めるだけです。何度もこの契約を更新したからといって必ずしも正社員にしなければならないという規制はありません。もっとも、裁判では状況次第では正社員と同じ無期雇用と認められるケースもあります。そのあたりの事を踏まえて、繰り返し契約でも5年まで、とする規制案となっているのでしょう。
が、その中に、6ヶ月の期間をおいて改めて雇い入れた場合は通算の年数がリセットされるという、いわゆるクーリング期間制度も盛り込まれており、「抜け道」があるとして批判しています。
さらにもう一歩踏み込んだ規制として、有期雇用の誰かを期間満了を理由に雇い止めした場合には、新たな雇用は禁止すべきだ、とまで主張しています。




それで事態は改善するの?

気持ちは解らないでもないですが、この主張通りの法規制が行われたとして、本当に有期雇用労働者の雇用環境が改善するでしょうか。

おそらく全く逆の効果をもたらすと思います。
人を雇うなら必ず正社員でなければならないという主張はよく聞きます。しかし、日本に解雇規制も大変強く働いており、一度雇ったら会社が潰れるほど苦しくなければ辞めさせられないという状況にあります。

そうすると、雇うなら正社員。ひとたび雇ったら定年まで辞めさせられない。年金が払えないから定年はどんどん延長しろ、という状態になっています。人を1人雇えば、そこにかかる費用は賃金だけでは済まず、2億円以上かかるといわれています。絶対に解約できない2億円を50年近い分割払いで契約しろ、と言われているのと同じです。半世紀先の状況など解らないのですから、企業が雇用に積極的にならないのは当たり前です。

では、企業としてはどういう選択をするのか。ただでさえ安い海外の賃金との競争に疲弊しているのです。当然、さっさと海外に移転してしまうことでしょう。折しも家電製造業がソニーを始め軒並み巨額の赤字発表をしたばかりです。もはや日本の製造業には過大な期待を背負えるほどの競争力はないでしょう。
生き残りをかけて海外へ移転し、人材も海外から調達するようになるでしょう。

これまで雇用されていた人々は、日本での居場所はなくなってしまうかもしれません。
それは非正規社員だけの問題にとどまらないと思います。会社機能をほとんど海外に移転するような事態となれば、正社員は正社員で二度と帰ってこられない海外移住か退職の二択を迫られるのではないでしょうか。

有期雇用や派遣などの非正規雇用についての規制を極度に強化してしまうと、日本には企業が残らず、正社員もろとも路頭に迷うという時代が来るかもしれません。




では今のままで良いのか

しかし、そうは言っても正社員と非正社員の格差はとても大きなものがあり、社会のありようとして看過できるものでもありません。このままの状態を放置すれば、社会はより一層不安定となり、没落の道を歩むしかなくなります。

この二律背反をどうすればよいのでしょうか。

現実的な改善案はないでしょう。このまま日本はズブズブとゆっくり沈んでいくのか、あっけなく一気に沈んでしまうのかのどちらかのように見えます。だったらいっそドラスティックな改革をした方がマシかもしれません。
正規社員と非正規社員の格差を改善するために非正規社員についての規制を強化する、というのではあまりにも素直すぎます。逆転の発想で、正規社員を規制してしまってはどうでしょうか。
つまり、正社員制度の廃止です。
そもそも、一回の有期労働契約の上限3年としているのは、長期の労働契約は労働者を縛ってしまうのでよくない、という発想から来ています。であれば、期間の定めがないという正社員の契約はもっとケシカランという事にならないでしょうか。事実、正社員の座に固執するあまりメンタルヘルスになっても会社を辞められず自殺に至るケースというのは後を絶ちません。




劇的な変革を!

だったら全員正社員でなければいいのです。

これは、自分だけで墜ちていくのは嫌だから全員道連れ、というような後ろ向きの考えではないのです。
今、再就職が難しいのはなぜでしょう。景気が悪いから?それもあるでしょう。しかし、一番問題なのは、一度雇われたら、どんなにダメでも、どんなに必要なくても絶対安泰の正社員が社内に居座るからです。そして、そういう状態だから会社は怖くて人を雇えない。
逆にいつでもクビを切れると思えば会社も雇用を増やすはずです。
能力に応じて、景気に応じて、いつでも解雇できる。にも関わらず雇用は改善する。クビになったって他に景気のいい会社があってそこが求人を出しているから気にならない。

むしろ一つの会社に人生を捧げるという会社人間のくびきから脱することで、余暇を、人生を楽しむライフスタイルが実現するような気がします。社会全体も、有能な人が有望な会社に集まる傾向が強まるので競争力も高まります。会社にとっても、労働者にとっても、社会全体にとっても良い。三方良しの状態ができあがるのです。




それができる日本なのか

問題は、そういう改革が実現できるのか、という事ですね。
今の日本では無理でしょう。でも、かつて江戸時代の爛熟文化から一転、欧化政策に邁進し、アジアで最初に近代化を遂げた国でもあります。文明開化の前夜、日本にそんな改革の機運があったでしょうか。おそらくは黒船から始まる巨大な危機感に追い詰められ、どうしようもなくなってできた改革だったのでしょう。追い詰められたネズミ状態になったとき、日本という国は豹変すると信じています。

今はまだ追い詰められ方が足りないだけ。もっと不景気で、もっと混乱した状態。
たとえば国家の財政破綻とか。
そうなったとき日本人は覚醒するのではないでしょうか。

 

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