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【障害年金】うつ病の等級はどう決まる?認定基準の全貌と「あなたがすべきこと」を社労士が徹底解説
〈目次〉
- はじめに:心の病気の「重さ」はどう測られるのか?
- 【結論】等級を決める2つのものさし:「日常生活」と「就労」
- ものさし①:「日常生活」を評価する“7つのチェックリスト”
- ものさし②:「日常生活」を“全体として”評価する5段階評価
- 【核心】あなたの等級が決まるメカニズム:「等級の目安」を読み解く
- 等級に影響する最重要ファクター:「就労」の壁
- 【最重要】等級を左右する「診断書」の真実
- まとめと次回予告
はじめに:心の病気の「重さ」はどう測られるのか?
「障害年金をもらえるなら、できるだけ手厚い等級で認定してほしい」
そう願うのは、病気と闘う誰もが抱く、切実な思いでしょう。経済的な安心は、心の安定に直結します。しかし、いざ申請を考えたとき、大きな疑問が頭をよぎります。
「うつ病や双極性障害の『重さ』って、一体どうやって判断されるんだろう?」

例えば、身体の障害であれば、ある程度は客観的な指標を想像しやすいかもしれません。「腕を失ったら何級」「関節がこれ以上曲がらなければ何級」といったように、目に見える形で基準が示されています。内科的な病気でも、「血液検査のこの数値が基準を超えたら」「レントゲン写真でこの所見が見られたら」というように、科学的なデータに基づいた判断がなされます。
では、私たちの抱える精神疾患の場合はどうでしょうか。
心の痛みは、外見からは分かりません。血液検査やMRIで「気分の落ち込み度」を測定することもできません。がんのように「ステージいくつ」といった、世界共通の明確な判定基準があるわけでもありません。
もし今、誰かに「あなたの病気の重さを、客観的な根拠をもって説明してください」と言われたら、あなたはどう答えますか?
「自分では、もう何もできないくらい辛い。だから一番重いはずだ」
「でも、世の中にはもっと大変な人がいるかもしれない。そう思うと、自分は中くらいなのかな…」
このように、自分の感覚に頼るしかなく、答えに窮してしまうのではないでしょうか。知り合いに病状を説明しようとしても、その辛さを裏付ける「根拠」を示すのは、驚くほど難しいことに気づかされます。この「客観的な根拠のなさ」こそが、精神疾患を抱える私たちが社会から理解されにくい、大きな要因の一つなのかもしれません。
しかし、ご安心ください。障害年金の世界には、この目に見えない心の病気の重さを測るための、明確な「ものさし」が存在します。そして、その「ものさし」が何を測ろうとしているのかを正しく理解することこそが、あなたが正当な評価を受けるための、何より重要な第一歩となるのです。
こんにちは。精神疾患の当事者として辛い日々を乗り越え、現在は障害年金を専門とする社会保険労務士として活動している者です。
この記事では、かつての私のように、先の見えない不安の中で「自分の状態が正しく評価されるのだろうか」と悩んでいるあなたのために、精神疾患の障害年金の等級がどのように決まるのか、その全貌を、どこよりも分かりやすく、そして詳しく解説していきます。
この記事を最後まで読めば、審査官が何を見ているのか、そして、あなたが正当な等級を得るために「今すぐ何をすべきか」が、明確に見えてくるはずです。
【結論】等級を決める2つのものさし:「日常生活」と「就労」
さっそく結論からお伝えしましょう。精神疾患の障害年金の等級を決定する上で、審査官が用いる「ものさし」は、大きく分けて2つしかありません。
- 日常生活能力: 日常生活を送る上で、どれくらい他者の助けが必要か?
- 就労能力: 労働によって、どれくらい収入を得ることができるか?
この2つの視点、特に「日常生活にどれだけの支障が出ているか」という点が、精神疾患の等級判定において、他のどんな要素よりも重視される、最重要キーワードとなります。
審査官は、あなたの心の中を直接覗くことはできません。だからこそ、あなたの「辛さ」や「苦しみ」が、日々の生活や仕事といった「具体的な行動」にどのような影響を及ぼしているのか、その「結果」を見て、病状の重さを客観的に判断しようとするのです。
これから、この2つの「ものさし」が、具体的にどのようにあなたの状態を測り、等級という結果に結びついていくのか、そのメカニズムを一つひとつ丁寧に解き明かしていきましょう。
ものさし①:「日常生活」を評価する“7つのチェックリスト”
まず、最も重要となる「日常生活能力」の評価についてです。
「日常生活」と一言で言っても、その範囲は非常に広いですよね。審査では、この曖昧な「日常生活」を、より客観的に評価するために、私たちの生活を7つの具体的な場面に分解して見ていきます。
これは、実際に医師が記入する診断書に記載されている公式なチェックリストです。
【日常生活の7つの場面】
- 適切な食事
- 身辺の清潔保持(入浴、洗面、着替えなど)
- 金銭管理と買い物
- 通院と服薬(自己管理ができるか)
- 他人との意思伝達及び対人関係
- 身辺の安全保持及び危機対応(突発的な出来事への対応など)
- 社会性(社会的な手続き、公共施設の利用など)
審査官は、この7つの項目一つひとつについて、「他者の助けがどれくらい必要か」という観点からあなたの状態を把握し、等級を判断していくのです。
「食事ができる」の本当の意味とは?

この7つの項目を見て、「あれ?ほとんどできている気がするな…」と感じた方もいるかもしれません。しかし、ここでの「できる」という言葉は、私たちが日常的に使う意味とは少し、いや、かなり異なります。
その違いを理解するために、1番目の「適切な食事」を例に、深く掘り下げてみましょう。
障害年金の審査における「適切な食事ができる」とは、単に「お箸が持てるか」「食べ物を口に運べるか」といった物理的な動作のことではありません。それは、「食事」という行為を取り巻く一連のプロセス全体を、一人で、自発的に、そして適切に遂行できるか、ということなのです。
少し想像してみてください。私たちが「食事をする」までには、実に多くのステップが存在します。
- ステップ1:意欲と計画
まず、「お腹が空いたな、何か食べよう」という意欲が湧かなければなりません。そして、「今日は何を食べようか?」と献立を考える必要があります。うつ病の症状が重いと、この最初の「意欲」そのものが失われ、食事への関心が全くなくなってしまうことも少なくありません。 - ステップ2:準備と調達
次に、冷蔵庫の中身を確認し、足りないものがあれば買い物に行く必要があります。お店まで行き、商品を選び、レジで支払いをする。この一連の行動には、想像以上のエネルギーと判断力が必要です。 - ステップ3:調理
家に帰ったら、買ってきた食材を使って調理をします。野菜を洗い、切り、火を使って煮たり焼いたりする。複数の作業を同時に進める「段取り力」も求められます。 - ステップ4:摂食
そしてようやく、実際に食事をとる段階です。しかし、ここでも「適切に」という点が問われます。一日中何も食べなかったり、逆に過食に走ってしまったり、甘いものやインスタント食品ばかりで栄養が極端に偏っていたりする場合、「適切な食事」とは言えません。 - ステップ5:後片付け
最後に、食べ終わった食器を洗い、キッチンを後片付けする。この最後のステップをこなす気力が残っているかも、重要な評価ポイントです。
どうでしょうか。単に「食事」と言っても、これほど多くの複雑な行動が連鎖しているのです。障害年金の審査では、この一連の流れを「一人だけで」「誰の助けも借りずに」「きちんと」できるかどうか、という厳しい視点で見ているのです。
他の6項目、例えば「身辺の清潔保持」であれば、お風呂に入る気力が湧くか、季節に合った服を選べるか。「金銭管理」であれば、計画的にお金を使えるか、公共料金の支払いを忘れずに行えるか、といったように、すべて同じ考え方で評価されます。
あなたのレベルはどれ?「できる」を測る“4段階評価”
そして、この7つの項目それぞれについて、医師はあなたの状態を以下の4段階で評価し、診断書にチェックを入れることになります。
- (問題なく)できる
- 自発的にできるが、時には助言や指導を必要とする
- 自発的かつ適正に行うことはできないが、助言や指導があればできる
- 助言や指導をしてもできない、若しくは行わない
1番の「問題なくできる」と、4番の「全くできない」は、比較的イメージしやすいかと思います。問題は、多くの方が該当するであろう、2番と3番の違いです。
この二つを分けるキーワードは、ズバリ「自発性」です。つまり、「自分からやろうと思えるか、行動に移せるか」が決定的な違いとなります。
先ほどの「食事」の例で、もう一度考えてみましょう。
- レベル2の状態とは?
自分から「お腹が空いたからご飯を作ろう」と思えるし、行動にも移せる。しかし、調理の途中で手順がわからなくなってパニックになったり、何を作っていいか決められずに立ち尽くしてしまったりして、時々、家族に「次はこれをしたら?」と助けてもらう必要がある状態。これがレベル2です。行動のきっかけは「自分」にあります。 - レベル3の状態とは?
そもそも自分から「ご飯を食べよう」という意欲が全く湧かない。何時間もベッドから出られず、食事のことなど考えもしない。しかし、家族が「ご飯できたよ、ここに座って。さあ、一口食べてみよう」と根気強く促し、手取り足取りサポートしてくれれば、なんとか食事をすることができる状態。これがレベル3です。行動のきっかけは「他人」にあります。
この「自発性」という、非常に微妙でありながら決定的な違いを、医師に正しく理解してもらうことが、適正な等級を得る上で極めて重要になるのです。
ものさし②:「日常生活」を“全体として”評価する5段階評価
7つの項目を個別に評価する4段階評価とは別に、もう一つ、あなたの状態を評価する「ものさし」が診断書には存在します。
それは、「日常生活能力の程度」を、より大きな視点から全体として評価する、5段階評価です。
これは、先ほどの7項目のような細かい分類はせず、「日常生活」や「社会生活」という、より広い範囲での活動能力を、他者からの「援助」がどれくらい必要かという観点で評価するものです。
ここで「日常生活」と「社会生活」という、似たような言葉が出てきましたね。
- 日常生活とは、食事や入浴、家の中での活動といった、主に個人的な身の回りの活動を指します。
- 社会生活とは、会社や学校に行く、友人との付き合い、地域活動への参加など、他者や社会と関わる活動を指します。
この5段階評価では、より広い意味での「社会生活」まで含めて、あなたの能力を総合的に判断します。
【日常生活能力の程度(5段階評価)】
- 精神障害を認めるが、社会生活は普通にできる。
- 精神障害を認め、社会生活には、助言や指導を必要とする。
- 精神障害を認め、社会生活に著しい制限を受けており、時に応じて援助を必要とする。
- 精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、常時援助を必要とする。
- 精神障害を認め、身の回りのことはほとんどできないため、常時援助を必要とする。
レベル1は援助が不要な状態、レベル5は身の回りのこと全般に常時援助が必要な状態です。この5段階評価は、あなたの状態を大局的に捉えるための、もう一つの重要な指標となります。
【核心】あなたの等級が決まるメカニズム:「等級の目安」を読み解く
さて、ここまで2つの「ものさし」を見てきました。
- 7項目 × 4段階 の個別評価
- 1項目 × 5段階 の総合評価
では、これらの評価が、最終的に「障害等級1級、2級、3級」という結果に、どのように結びついていくのでしょうか。ここが、あなたが最も知りたい部分だと思います。
審査の現場では、これら2つの評価を組み合わせて等級を判断するための、「障害等級の目安」という、いわば「判定表」のようなものが使われています。
ものすごくザックリと、感覚的な目安をお伝えすると、以下のようになります。
- 7項目評価で、「レベル2(時に援助が必要)」が多い → おおむね3級の可能性
- 7項目評価で、「レベル3(援助があればできる)」が多い → おおむね2級の可能性
- 7項目評価で、「レベル4(援助があってもできない)」が多い → おおむね1級の可能性
- 5段階評価で、「レベル2~3」 → おおむね3級の可能性
- 5段階評価で、「レベル3~4」 → おおむね2級の可能性
- 5段階評価で、「レベル5」 → おおむね1級の可能性
より正確に言うと、審査官はこれら2つの評価を機械的に組み合わせて、等級の目安を判断しているのです。
「等級の目安」の表を公開!
少し専門的な話になりますが、実際に審査で使われている「等級の目安」の表をご紹介します。これを見れば、そのメカニズムが一目瞭然となります。
【精神の障害に係る等級判定ガイドライン(障害等級の目安)】
|
7項目の平均 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
|
1.0~1.4 |
非該当 |
非該当 |
3級 |
3級 |
2級 |
|
1.5~1.9 |
非該当 |
3級 |
3級 |
2級 |
2級 |
|
2.0~2.4 |
3級 |
3級 |
3級 |
2級 |
2級 |
|
2.5~2.9 |
3級 |
3級 |
2級 |
2級 |
1級 |
|
3.0~3.4 |
3級 |
2級 |
2級 |
1級 |
1級 |
|
3.5以上 |
2級 |
2級 |
1級 |
1級 |
1級 |
〈表の見方〉
- まず、「7項目×4段階評価」について、各段階を点数化します。(1:できる=1点、2:時に援助=2点、3:援助あれば=3点、4:できない=4点)
- 7項目の点数を合計し、7で割って平均点を出します。これが表の縦軸になります。
- 次に、「日常生活能力の程度(5段階評価)」の段階数を、そのまま表の横軸とします。
- 縦軸(平均点)と横軸(5段階評価)が交差するマスに書かれているのが、あなたの等級の目安となります。
【具体例】
例えば、あなたの診断書が以下のような評価だったとします。
- 7項目評価の平均点が「3.0」だった。
- 5段階評価が「3」だった。
この場合、表の「3.0~3.4」の行と、「3」の列が交差するマスを見ると、「2級」と書かれています。つまり、あなたの状態は、この判定表上では「障害等級2級に相当する可能性が高い」と判断されるわけです。
目安はあくまで目安。総合的な判断が下される理由
「なるほど、この表で決まるのか!」と、少し安心されたかもしれません。しかし、ここで非常に重要な注意点があります。
それは、この表はあくまで「目安」であり、この表の結果が100%あなたの等級になるわけではない、ということです。
審査では、この「等級の目安」を基本としながらも、診断書に書かれたその他のあらゆる情報を考慮に入れて、最終的な等級が総合的に決定されます。
例えば、判定表では「2級相当」という結果が出ても、診断書の他の部分に、「天気の良い日は散歩に出かけている」「友人と時々会って話をしている」といった、比較的「元気」だと判断されかねない記述があった場合、等級が3級に下がったり、不支給になったりする可能性も出てくるのです。
では、この「等級の目安」以外に、審査官が特に重視する要素とは何でしょうか。それが、冒頭で述べたもう一つの「ものさし」である「就労」の状況なのです。
等級に影響する最重要ファクター:「就労」の壁
思い出してください。障害年金の等級を決める2つのものさしは、「日常生活能力」と「就労能力」でした。ここまで解説してきた「等級の目安」は、主に「日常生活能力」を評価するものです。
そして、この目安で導き出された等級が妥当かどうかを判断するために、審査官はあなたの「就労」の状況を厳しくチェックします。
なぜなら、障害年金の認定基準には、就労能力について以下のような明確な定義があるからです。
- 1級: (日常生活が極めて困難なため、就労は想定されていない)
- 2級: 労働によって収入を得ることができない程度のもの
- 3級: 労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
この定義を見れば一目瞭然ですね。
もし、判定表で「2級相当」という結果が出ていたとしても、あなたが一般企業でフルタイム勤務をしていたらどうでしょうか。審査官は「労働によって収入を得ることができている。2級の定義には当てはまらない」と判断し、等級を3級や不支給に変更する可能性が極めて高いのです。
これが、「日常生活」の評価が2級レベルでも、働いているというだけで2級が認められにくい、いわゆる「就労の壁」の正体です。
2級を目指すのであれば、最低条件として、
- まず、日常生活能力が「2級相当」であること(必要条件)
- その上で、就労能力も「労働によって収入を得られない」状態であること(十分条件)
この2つの条件を両方クリアする必要がある、と考えるのが現実的です。
「働いている=元気」ではない!正しい伝え方
では、「少しでも働いていたら、もう2級は絶対に無理なのか?」というと、必ずしもそうではありません。大切なのは、その「働き方の中身」です。
例えば、
- 体調が悪く、週に2~3日、1日数時間の短時間勤務しかできない。
- 常に上司や同僚からの特別な配慮(業務量の調整、頻繁な休憩、指示の単純化など)がなければ、仕事を続けることができない。
- 欠勤や早退が多く、安定した勤務が全くできていない。
このような状況は、3級の定義である「労働に制限がある」状態に当てはまります。たとえ働いていたとしても、その実態が「普通の働き方」とはほど遠いことを、診断書や申立書で具体的に示すことができれば、3級に認定される可能性は十分にあります。
一番避けたいのは、「働いている」という事実だけが一人歩きし、「この人は元気で問題なく働けている」と誤解されてしまうことです。
障害者雇用という選択肢が持つ大きな意味
ここで、特に知っておいていただきたいのが「障害者雇用」という働き方です。
もしあなたが障害者雇用枠で働いている場合、一般雇用とは異なり、会社側があなたの障害を理解し、特別な配慮を提供していることが前提となります。そのため、障害者雇用で働いているという事実は、一般雇用の場合よりも、障害の重さを示す有力な材料として考慮される傾向があります。
ガイドラインにも、「障害者雇用制度を利用した就労については、2級の可能性を検討する」と明記されています。
これは、社会復帰を考える上で、非常に大きな意味を持ちます。
例えば、うつ病で退職し、障害年金2級を受給できるようになったとします。その後、体調が少し安定し、「もう一度働きたい」と思ったとき、いきなり一般雇用でフルタイム復帰するのは、再発のリスクも高く、非常にハードルが高いでしょう。
しかし、そこで「障害者雇用」という選択肢を検討するのです。
障害者雇用であれば、無理のないペースで、配慮のある環境で働くことができます。そして、たとえ働き始めたとしても、障害年金2級または3級を受給し続けられる可能性が残ります。
障害者雇用の給与は、一般的に低く抑えられがちですが、そこに障害年金を加えることで、「安定した収入」と「ストレスの少ない労働環境」を両立させ、再発のリスクを抑えながら、着実に社会復帰への道を歩むことができるのです。これは、長期的な視点であなたの人生を立て直すための、非常に賢明な戦略の一つと言えるでしょう。
【最重要】等級を左右する「診断書」の真実
ここまで、等級判定のメカニズムと、日常生活や就労の重要性について解説してきました。そして、これら全ての情報が、たった一つの書類に集約されます。
それが「診断書」です。
あなたの等級は、この診断書に何が書かれているかで、ほぼ全てが決まると言っても過言ではありません。7項目評価も、5段階評価も、就労状況も、すべてはこの診断書に基づいて判断されます。
しかし、ここには大きな落とし穴があります。
医師はあなたの「日常生活」を知らない
考えてみてください。普段の診察時間は、5分か10分程度ではないでしょうか。その短い時間で、あなたは医師に何を話していますか?
「最近、気分が落ち込んでいて…」
「夜、よく眠れなくて…」
「薬を調整してほしいのですが…」
おそらく、症状や薬に関する話が中心で、「家で食事が作れなくて困っています」「お風呂に入るのが週に1回になってしまいました」「お金の管理ができず、支払いを滞納してしまいました」といった、具体的な日常生活の困りごとまで、詳しく話す機会はほとんどないはずです。
つまり、医師は、あなたの日常生活のリアルな実態を、ほとんど知らないのです。
それにもかかわらず、医師は診断書の7項目評価を記入しなければなりません。情報がない中で、医師はどうするでしょうか。患者さんの様子や、わずかな会話から「おそらく、これくらいだろう」と推測して書かざるを得ないのです。
その結果、あなたの本当の状態とはかけ離れた、実態よりも「軽く」見えてしまう診断書が出来上がってしまう危険性が、常に存在します。
「これだけはやって!」納得のいく診断書を書いてもらうための秘策
では、どうすればいいのでしょうか。答えはシンプルです。
「こちらから、医師に正確な情報を提供する」
これしかありません。医師も人間です。そして、科学者でもあります。診断書という公的な書類を作成する上で、「本人の証言」というエビデンス(証拠)は、非常に重要な参考資料となります。
「でも、診察中にそんなに長く話す時間はない…」
その通りです。だからこそ、「書面にして渡す」のです。
A4用紙1枚で構いません。診断書の作成を依頼する際に、あなたの日常生活の状況をまとめたメモを一緒に渡すのです。これは、驚くほど効果があります。私の経験上も、「こういう資料があると、非常に助かる」と言ってくださる医師は、年々増えています。
では、具体的に何を書けばいいのでしょうか。
一番のおすすめは、この記事で解説した「日常生活の7つの項目」に沿って、ご自身の状況を具体的に書き出すことです。
- (1)適切な食事:
- 週に何回、自分で調理できているか。
- 食事の内容は偏っていないか(インスタント食品や菓子パンばかりなど)。
- 家族に食事の準備をしてもらっているか。
- (2)身辺の清潔保持:
- 入浴やシャワーの頻度はどれくらいか。
- 同じ服を何日も着続けていないか。
- 部屋の掃除や片付けができているか。
このように、7項目それぞれについて、「できる/できない」だけでなく、「どれくらいの頻度で」「誰の助けを借りて」「どんな状態か」を、できるだけ具体的に書き出してみましょう。
この「情報提供」という一手間が、あなたの本当の苦しみを医師に伝え、実態に即した、納得のいく診断書を書いてもらうための、最も重要で効果的なアクションなのです。
まとめと次回予告
今回は、精神疾患の障害年金の等級がどのように決まるのか、その全体像と基本的な考え方について、詳しく解説しました。
▼今回の最重要ポイント
- 等級は「日常生活」と「就労」の2つの「ものさし」で決まる。
- 特に「日常生活の7項目」で、どれだけ他者の助けが必要かが重要。
- 「できる/できない」の判断基準は、「自発性」がカギ。
- 等級判定の土台となる「診断書」には、あなたのリアルな生活状況を、こちらから情報提供することが不可欠。
少し難しい話も多かったかもしれませんが、審査の仕組みを知ることで、あなたが今何をすべきかが見えてきたのではないでしょうか。
そして、納得のいく診断書を書いてもらうためには、7つの項目がそれぞれ「何を聞こうとしているのか」を、より深く理解しておく必要があります。
【次回予告】
次回のブログでは、いよいよ「日常生活の7項目」の一つひとつを、徹底的に深掘りして解説していきます。それぞれの項目で、具体的にどのような点が評価されるのか。それを知ることで、あなたは医師に渡す「メモ」を、より的確に、そして効果的に作成できるようになるはずです。
障害年金の申請は、あなた自身の人生を取り戻すための、大切な一歩です。焦らず、一つひとつ、着実に進んでいきましょう。
≪もっと知りたい!!≫
実際の手続きは、初診日の加入年金で窓口が分かれ、予約・持ち物・段取りが必要になります。
次は、名古屋市の入口ナビで「どこに相談し、どう進めるか」を確認してください。
「まずは話を整理したい」という段階でも大丈夫です。状況に合わせて、何から始めるのが最短か一緒に整理します。
電話が苦手でも大丈夫!メール対応可能です。

愛知県(名古屋・春日井等)を拠点に、岐阜・三重を含む地域で障害年金の請求をお手伝いしている社会保険労務士の渡邊智宏です。自身がそううつ病を経験したことから、病気による生きづらさや不安にも自然と目が向きます。その経験を活かし、一人ひとりの事情に耳を傾けながら、障害年金の手続きをサポートしています。初回の出張相談は無料ですので、「よくわからない」「不安がある」という方も、どうぞ気軽にご相談ください。
【障害年金の初診日】カルテがない?大丈夫。うつ病の初診日を証明する全手順を社労士が解説
「障害年金の請求には『初診日』が重要だと分かった。でも、具体的に何をすればいいの?」
前回の記事を読んで、そう思われた方も多いのではないでしょうか。頭では理解できても、体調が優れない中、次の一歩を踏み出すのは本当に大変なことですよね。
こんにちは。精神疾患の当事者でもある、障害年金専門の社会保険労務士、渡邊智宏です。
今回は、「初診日を証明するための具体的なアクション」について、徹底的に解説します。すんなり証明できるケースから、「カルテがない」と言われて絶望しそうなケースまで、あらゆるパターンを網羅しました。
この記事を読めば、あなたが今すぐ何をすべきか、そして万が一壁にぶつかった時にどうすればいいのかが、明確にわかります。一人で抱え込まず、一緒に解決の糸口を探していきましょう。
≪もっと知りたい!!≫
まずは王道!「受診状況等証明書」をもらおう
初診日の病院に見当がついたら、まず試すべき最も確実な方法があります。それが「受診状況等証明書(じゅしんじょうきょうとうしょうめいしょ)」という書類を病院に書いてもらうことです。
「なんだか難しそうな名前…」と身構える必要はありません。これはA4用紙1枚のシンプルな書類で、「いつ、どんな症状で来院しましたか」という内容を証明してもらうものです。所定の書式があり、日本年金機構のホームページでダウンロードできます。
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-20.files/0000012239XWI83snsjt.pdf
▼アクションプラン
- 書類を入手する: 日本年金機構のホームページからダウンロードできます。
- 病院へ依頼する: 初診の病院の受付窓口で「障害年金の申請で使うので、受診状況等証明書を書いてください」と伝えればOKです。
- 待つ: 通常1~2週間ほどで作成してもらえます。
この書類が手に入れば、あなたの初診日は確定します。ようやく、障害年金申請の本当のスタートラインに立てたということです。
【注意!】こんな記載があったら要注意
書類の中に「以前、別の病院を受診」「〇〇病院からの紹介」といった記載があった場合、その「以前の病院」や「紹介元の病院」が本当の初診日と判断されます。その際は、そちらの病院で改めて証明書をもらい直す必要があります。
うつ病でよくある「初診日の勘違い」に注意!
精神疾患の初診日には、多くの方が陥る「勘違い」があります。
例えば、
「体調不良でA内科へ→原因がわからずBメンタルクリニックへ→初めて『うつ病』と診断」
この場合、なんとなく診断が出た「Bメンタルクリニック」が初診日だと思いがちですよね。
しかし、障害年金の世界では「A内科」が初診日になります。
なぜなら、初診日の定義は「その病気や症状について、初めて医療機関を受診した日」だからです。「診断名がついた日」ではないのです。
原因不明のめまい、不眠、動悸などで最初に内科などを受診した場合、そこがあなたの初診日になる可能性が高いことを覚えておいてください。
≪もっと知りたい!!≫
絶望しないで!「カルテがありません」と言われた時の3つの逆転手
「初診の病院に問い合わせたら、『カルテはもう破棄しました』と言われた…」
これは、本当によくあるケースです。法律上、カルテの保存義務は最終受診日から5年。それ以上経っていると、破棄されていても仕方ありません。頭が真っ白になりますよね。
でも、諦めるのはまだ早すぎます。ここからが専門家の腕の見せ所。カルテがなくても初診日を証明する、3つの逆転方法をお伝えします。
逆転手①:最強カード「紹介状の控え」を探せ!
もし、初診の病院から次の病院へ移る際に「紹介状」をもらっていたら、大チャンスです。
紹介状には「〇年〇月〇日に初診」といった経緯が書かれていることが多く、これ自体が初診日の強力な証拠になります。初診の病院にカルテがなくても、紹介先の病院にカルテと紹介状の控えが残っているケースは少なくありません。まずは紹介先の病院に問い合わせてみましょう。
逆転手②:合わせ技で勝負!「第三者証明+客観的な証拠」
紹介状もなかった場合、友人や元同僚など「第三者」(家族は不可)に、「この頃、確かに通院していました」という証明書を書いてもらう方法があります。
ただし、これだけでは証拠として弱いため、
- 日付入りの診察券
- お薬手帳
- 医療費の領収書
- 生命保険の告知書
など、通院の事実を示す客観的な証拠をセットで提出する必要があります。ハードルは上がりますが、諦めずに探してみましょう。
(※初診日が20歳前の場合は、第三者証明だけでも認められやすいという特例があります)
逆転手③:最後の奥の手「保険料納付による申し立て」
あらゆる証拠が見つからなくても、まだ道はあります。これはかなり専門的な方法ですが、
「初診日があったはずの期間、年金保険料を真面目に納めていたのだから、初診日不明という理由だけで不支給にするのはおかしい」
というロジックで申し立てる、いわば「誠実な納付者を救うための最終手段」です。
具体的には、「20歳から、カルテが残っている一番古い病院の受診日まで」といった長期間の保険料納付状況を証明し、その期間ずっと保険料を納めていれば、初診日を認めてもらえる可能性があるという方法です。
ただし、この方法を使うと、たとえ会社員期間が長くても「障害基礎年金」の対象とされてしまう可能性がある、というデメリットもあります。それでも、「全くもらえない」よりは遥かに良い選択と言えるでしょう。
≪もっと知りたい!!≫
初診日が古くなりそうなら:社会的治ゆも検討
【まとめ】一人で抱え込まないで。専門家を頼るのも賢い選択です
今回は、初診日を証明する具体的な手続きについて、かなり専門的な内容まで踏み込んで解説しました。
「自分一人でやるのは、難しそうだ…」
「体調が悪いのに、こんなに動けない…」
そう感じた方も多いのではないでしょうか。当然です。そんな時のために、私たち社会保険労務士(社労士)という専門家がいることを、ぜひ心の片隅に置いておいてください。
社労士に依頼すれば、今回お話しした面倒な手続きのほとんどを代行できます。もちろん費用はかかりますが、多くの事務所では年金が受給できた場合に成功報酬を支払う形を取っており、初期費用を抑えられるケースがほとんどです。
大切なのは、「行動を起こすこと」です。
ぐるぐると一人で悩み続けている間に、5年のカルテ保存期間が過ぎてしまうかもしれません。
- まずは、一番最初に行った病院を思い出してみる。
- もし難しそうなら、専門家に相談してみる。(最初は家族や友人など)
どれも、あなたの未来を切り拓くための、価値ある一歩です。この記事が、あなたの背中を少しでも押すことができたなら、これほど嬉しいことはありません。
≪もっと知りたい!!≫
実際の手続きは、初診日の加入年金で窓口が分かれ、予約・持ち物・段取りが必要になります。
次は、名古屋市の入口ナビで「どこに相談し、どう進めるか」を確認してください。
「まずは話を整理したい」という段階でも大丈夫です。状況に合わせて、何から始めるのが最短か一緒に整理します。
電話が苦手でも大丈夫!メール対応可能です。

愛知県(名古屋・春日井等)を拠点に、岐阜・三重を含む地域で障害年金の請求をお手伝いしている社会保険労務士の渡邊智宏です。自身がそううつ病を経験したことから、病気による生きづらさや不安にも自然と目が向きます。その経験を活かし、一人ひとりの事情に耳を傾けながら、障害年金の手続きをサポートしています。初回の出張相談は無料ですので、「よくわからない」「不安がある」という方も、どうぞ気軽にご相談ください。
うつ病の障害年金|「初診日」を知らないと大損する3つの理由【当事者社労士が解説】
「障害年金を考えているけど、結局なにから始めればいいの?」
「市役所?年金事務所?初診日?…言葉が多すぎて止まった」
ここで一度、頭を整理します。
障害年金の手続きは、最初の一歩さえ間違えなければ、あとは“順番”で進みます。
その最初の一歩が、初診日です。
初診日というのは、単に「初めて病院に行った日」…と思いがちですが、実務ではここに落とし穴があります。
初診日の扱いを間違えると、もらえる年金の種類・金額・そもそも要件を満たすかまで変わってしまうことがあるからです。
このページでは、まず「初診日がなぜ重要か」を3つに絞って解説し、最後に「最初にやること(メモの作り方)」まで整理します。
≪次に読む(入口ナビ)≫
実際の手続きは、初診日の加入年金で窓口が分かれ、予約・持ち物・段取りが必要になります。
次は、入口ナビで「どこに相談し、どう進めるか」を確認してください。
初診日とは?(まず定義だけ)
障害年金でいう初診日は、ざっくり言うと
「その障害の原因となった傷病で、初めて医師の診療を受けた日」
です。
“今通っている病院の初診日”ではなく、一番最初の受診が基準になります。
たとえばこんなケースが起こります。
- 心療内科に通う前に、内科で「不眠・動悸」で受診していた
- 会社の健康診断後に、別の病院に最初に行っていた
- A病院→B病院→C病院と転院していて、どこが起点か曖昧
この“起点”が初診日です。
≪もっと知りたい!!≫
初診日が分からない時の探し方はこちら
初診日を知らないと損する3つの理由
初診日は「ただの日付」ではありません。
障害年金の世界では、この日が“分岐点”になります。
理由1:もらえる年金の種類と金額が変わる
障害年金は、初診日の時点で どの年金に加入していたかで、制度が分かれます。
- 初診日に厚生年金(第2号) → 障害厚生年金の対象になり得る
- 初診日に国民年金(第1号) → 障害基礎年金の対象が中心
- 初診日に第3号(扶養) → 多くは障害基礎年金の対象が中心
- 共済加入 → 共済組合側の手続き
≪もっと知りたい!!≫
ここがズレると、
「窓口も違う」「必要書類も違う」「結果として受給額の設計も変わる」
ということが起こります。
理由2:保険料の納付要件をチェックする“基準日”になる
障害年金は「保険」なので、保険料の条件(納付要件)があります。
この条件をチェックする基準日が、初診日です。
よくある勘違いが、
「最近ちゃんと払ってるから大丈夫」
「今から未納を払えばいけるはず」
「払ってなかった時期があるからもうダメかも」
というものですが、納付要件は基本的に 初診日を基準に判定されます。
つまり、初診日がいつかで「判定結果」が変わることがあります。
納付要件は大きく2ルート(どちらか満たせばOK)です。
- 【原則】加入期間のうち 3分の2以上 が納付(または免除)
- 【特例】初診日の前々月までの 直近1年に未納がない
この判定をするためにも、初診日が必要になります。
理由3:手続き全体の「スタートライン」が決まる
障害年金は原則として、
初診日から1年6か月後(障害認定日) を基準に請求の流れが組まれます。
初診日が分からないと、そもそも
- いつの診断書(どの時点)を意識すべきか
- どの制度(基礎/厚生)で進めるか
- 書類の整合性(時系列)をどう設計するか
が決まりません。
逆に言えば、初診日が見えると、やることが一気に“順番化”します。
≪次の一手!!≫
申立書・診断書まで作り込む
初診日が分からない・転院が多い・昔すぎる人へ
・〔初診日が分からない〕
※「受診状況等証明書の読み方(経過欄チェック)」まで解説しています。
最初にやること:初診日メモ(ここだけでOK)
「正確な日付」まで思い出せなくても大丈夫です。
まずは窓口で話が進むレベルの“ざっくり”でOK。
スマホのメモに、これだけ書いてください。
初診日メモ(テンプレ)
- いちばん最初に受診した医療機関名:____
- 時期(○年○月ごろ/季節でもOK):____
- その頃の働き方:会社員/扶養/自営/無職/学生
- 転院の順番(分かる範囲で):
1)____(__年__月ごろ)
2)____(__年__月ごろ)
3)____(__年__月ごろ)
このメモがあるだけで、「窓口で一般論だけ聞いて終わる」確率が下がります。
≪次の一手!!≫
よくある落とし穴(ここだけ注意)
- 「今の病院の初診日=初診日」だと思い込む
- 受診状況等証明書で 初診日欄だけ見て安心する
→ 経過欄に“他院受診歴”が書かれていることがある
この落とし穴を回避する具体策は、別記事で詳しく説明しています。
・〔初診日が分からない〕(探し方手順+証明書の経過欄チェック)
≪次に読む!!≫
あなたの状況に合わせて、次はここへ進むのが最短です。
- 初診日がだいたい分かる → 〔愛知県版:窓口の分岐・予約・準備(入口)〕
- 春日井市の方 → 〔春日井市版〕
- 名古屋市の方 → 〔名古屋市版〕
- 初診日が分からない/転院が多い → 〔初診日が分からない〕
- 申立書・診断書まで作り込みたい → 〔障害年金申請・完全ガイド〕
まとめ
初診日は、
1)もらえる制度(基礎/厚生)
2)納付要件の判定
3)手続き全体のスタートライン
を決める“分岐点”です。
まずは完璧を目指さず、初診日メモを作る。
そして、必要なら「受診状況等証明書で遡る」手順へ進む。
この順番が、一番手戻りが少なくなります。

愛知県(名古屋・春日井等)を拠点に、岐阜・三重を含む地域で障害年金の請求をお手伝いしている社会保険労務士の渡邊智宏です。自身がそううつ病を経験したことから、病気による生きづらさや不安にも自然と目が向きます。その経験を活かし、一人ひとりの事情に耳を傾けながら、障害年金の手続きをサポートしています。初回の出張相談は無料ですので、「よくわからない」「不安がある」という方も、どうぞ気軽にご相談ください。
【体験談】うつ病で働けず、絶望していた私を救った「障害年金」というお守り
「もう、何もしたくない…」
「家族に迷惑ばかりかけて、自分が情けない…」
うつ病や双極性障害などの精神疾患で苦しんでいると、こんな風に自分を責めてしまうことはありませんか?先の見えない不安、消えない焦り。働きたくても働けない体。私も、全く同じでした。
こんにちは。私は双極性障害(躁うつ病)と共に生き、現在は障害年金を専門とする社会保険労務士として活動している者です。
実は、私自身も障害年金に救われた一人です。収入ゼロで引きこもり、家族に頼るしかなく「自分には価値がない」とさえ思っていた日々。そんな私の人生を立て直すきっかけをくれたのが、「障害年金」でした。
この記事は、同じ苦しみを知る”当事者”として、あなたにお伝えしたいメッセージです。障害年金は、単なるお金ではありません。あなたの心を守り、人生を再スタートするための「お守り」になる制度だということを、どうか知ってください。

障害年金って、そもそも何?【知ることから始めよう】
「障害年金って聞いたことはあるけど、よくわからない…」
そうですよね。まずは基本的なことから、簡単にお話しします。
障害年金には、大きく分けて2種類あります。
- 障害基礎年金:初診日(病気で初めて病院に行った日)に、国民年金に加入していた方(自営業、フリーター、主婦、20歳前の学生など)が対象。
- 障害厚生年金:初診日に、厚生年金に加入していた方(会社員、公務員など)が対象。
どちらに該当するかは「初めて病院に行った日に、どんな働き方をしていたか」で決まります。一般的に、障害厚生年金の方が保障は手厚く、1級・2級に加えて、比較的軽度な「3級」まで対象となるのが特徴です。
誰も「もらえますよ」とは教えてくれない現実
ここで一番大切なポイントをお伝えします。それは、障害年金は「自分で気づいて、自分で動かないと受け取れない」ということです。
病院の先生が親切に教えてくれることもありますが、制度に詳しくない先生も多いのが実情です。市役所や年金事務所から「あなた、対象かもしれませんよ」なんて手紙が来ることも、まずありません。
私もそうでした。制度を知らず、病気になってから5年以上も手続きが遅れてしまいました。だからこそ、今この記事を読んでくださっているあなたには、「知らなかった」で損をしてほしくないのです。
「自分のお金」がある安心感。私が障害年金に救われた経験
私が双極性障害と診断されてから数年間、全く働くことができず、実家で引きこもる日々が続きました。収入はもちろんゼロ。情けないことに、いい大人が親からお小遣いをもらって、なんとか生活していました。
友達とご飯に行くなんて夢のまた夢。コンビニでジュース1本買うことすら、ためらってしまう。そんな毎日が、どれほど惨めで、窮屈だったか…。
そんな時、ようやく手続きした障害年金がもらえることになりました。
口座に振り込まれたのは、月々約5万円。決して、それだけで自立できる金額ではありません。でも、「自分の口座に、自分の名義で、毎月決まったお金が入ってくる」という事実が、どれほど私の心を救ってくれたか、言葉にできません。
それは、「社会から見捨てられていない」「自分にもまだ価値があるのかもしれない」という、小さな自信を取り戻すための、何よりの支えでした。
経済的な安心が、心の余裕につながる【うつ病の治療に専念するために】
うつ病や精神疾患の治療で最も大切なのは、「安心して休むこと」です。しかし、収入がなければ「早く働かなきゃ」という焦りが生まれ、心が休まる暇もありません。
- 家族に頼る生活で、肩身が狭い
- 「申し訳ない」という罪悪感が日に日に大きくなる
- お金がないから、何もできず、どんどん孤立していく
この悪循環は、病状をさらに悪化させます。私も「自分なんて、生きていていいんだろうか」と、暗い気持ちに飲み込まれそうになったことが何度もあります。
障害年金は、この負のループを断ち切るための、強力な武器になります。
毎月少しでも安定した収入があることで、「すぐに無理して働かなくても大丈夫」という心の余裕が生まれます。その余裕こそが、治療に専念し、回復への道を歩むための土台になるのです。
焦りを手放し、未来の選択肢を広げる
病状が不安定な中で焦って仕事を探し、無理をして働き、すぐに再発してしまう…。これは、精神疾患を持つ方が陥りがちな、本当につらいパターンです。
私も障害年金がなければ、きっと同じ道をたどっていたでしょう。
しかし、障害年金というセーフティーネットがあったおかげで、私は「自分に合った働き方とは何だろう?」と、じっくり考える時間を持つことができました。
「サラリーマンに戻るのは難しいかもしれない。でも、自分のペースで働ける自営業なら…」
そうしてたどり着いたのが、「社会保険労務士」という道でした。1年以上の勉強が必要な難しい試験でしたが、障害年金があったからこそ、焦らずに勉強に集中し、合格を掴み取ることができたのです。
障害年金は、「今すぐ働かなければ」というプレッシャーからあなたを解放し、未来の可能性を広げてくれる制度でもあるのです。
【まとめ】障害年金は、人生を立て直すための「お守り」です
この記事で、私が一番伝えたかったこと。それは、障害年金がただのお金ではなく、「経済的な安心」「精神的な安定」「未来の選択肢」という、人生を立て直すために不可欠なものを与えてくれる、希望の制度だということです。
もしあなたが今、うつ病や精神疾患で苦しみ、お金の不安を抱えているなら、まずは「障害年金」という選択肢があることを知ってください。
「自分ももらえるのかな?」
「どうやって調べたらいいんだろう?」
そう思ったら、まずはスマホで「障害年金 精神疾患」「障害年金 うつ病」と検索してみてください。もし手続きが難しければ、私のような専門の社労士に相談するのも一つの手です。
「知らなかった」ではなく、「知っていたから、行動できた」。
この記事が、あなたの人生を少しでも前に進める、小さなきっかけになれたら、これほど嬉しいことはありません。
あなたは、一人ではないのです。

愛知県(名古屋・春日井等)を拠点に、岐阜・三重を含む地域で障害年金の請求をお手伝いしている社会保険労務士の渡邊智宏です。自身がそううつ病を経験したことから、病気による生きづらさや不安にも自然と目が向きます。その経験を活かし、一人ひとりの事情に耳を傾けながら、障害年金の手続きをサポートしています。初回の出張相談は無料ですので、「よくわからない」「不安がある」という方も、どうぞ気軽にご相談ください。
精神障害認定のガイドラインってどんなの?(2)

前回は、診断書裏面に記載される「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」という2つの項目を数値化したうえで、それを表に当てはめて等級判定の目安とする表について解説しました。ただし、この表だけで等級が決まってしまうのでは、個別の事情が全く反映されず、かえって不公平になってしまう事が考えられます。
そこで、今回は、この表以外に考慮すべき点として例示されているものがありますので、就労関係を中心にそれらを見ていきたいと思います。
◆考慮すべき要素とは
まず、考慮すべき要素の例として、以下の5つの項目が示されています。
①現在の病状又は状態像
②療養状況
③生活環境
④就労状況
⑤その他
この中で、④の「就労状況」は、障害年金の請求を考えている人にとってはとても関心の高い事項だと思いますので、今回は④の就労状況で考慮すべき要素について詳しく見ていきたいと思います。
◆仕事場で受けている支援について
まず、大切な事として、「労働に従事している事をもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず」とあり、働いている場合でも、「仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況」などを考慮する事になっています。
実際に就労している場合については、「その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する」事となっています。障害年金の請求に当たって、実際に働いているから諦める、というのではなく、どのような援助や配慮を受けているかを洗い出し、それをしっかりと申し立てる事が重要になります。
◆就労支援や障害者雇用で就労している場合
又、特筆すべき点として、就労支援A型・B型及び障害者雇用制度による就労については、1級又は2級の可能性を検討する、就労移行支援についても同様とする、とあります。
実際の就労があっても、それが就労移行支援制度や障害者雇用である場合には1、2級の可能性がある事が示されています。
実際には障害者雇用でなかったとしても、それに準じたような支援、配慮がされている場合は、それをしっかりと申し立てる事が大切です。単に就労をしているという事実だけをもって3級や下手をしたら等級不該当とされてしまうものが、そうした申し立てを行うことで2級に該当する可能性があると言う事になるからです。
◆就労と日常生活のバランス
「就労の影響により、就労以外の場面での日常生活能力が著しく低下していることが客観的に確認できる場合は、就労の場面及び就労以外の場面の両方の状況を考慮する」となっています。
障害があっても生活の為にはなんとしてでも働かなければならない境遇の人は沢山います。日常生活をほとんど犠牲にしながら必死に働いている人を沢山知っています。
働くことによっていかに日常生活がおろそかになっているのかという事を客観的に申し立てることで、働いていても障害年金がもらえる可能性があります。諦めずに、考えられることを全部申し立てるようにしましょう。
◆継続的に雇用している場合
精神疾患の場合、1年を超えて就労を続けていたとしても、就労の頻度や、就労を続けるために周りから受けている援助や配慮を考慮することになっています。発病後も継続雇用される場合も同様に援助の状態など考慮することとなっています。又、欠勤、早退、遅刻など出勤状況への影響も考慮に入れます。就労している場合は、こういった点に重点を置いて申し立てを行う事が大切になります。
◆まとめ
このように、実際に就労している場合でも、色々な要素について自ら発言していく事で、障害年金が受給される可能性が出てきます。
こうした内容を病歴・就労状況等申立書という自分の手で書ける申立書に盛り込むことは勿論大切な対策になりますが、これらの内容をお医者さんとも共有し、その内容を反映した診断書を作成してもらう事が障害年金受給成功への近道となります。
お医者さんに診断書を書いてもらうとき、単に「お願いします」と言って診断書を渡すだけではなく、就労はしているけれどもこういう状況です。それを診断書にも記載してくださると助かります、と言ったプラスアルファのお願いを入れる事が大切になります。
できるなら、そういった診断書には載らない個別の事情については、書面でお医者さんにお渡しできると情報の共有化ができて良いと思います。
自分の想いと同じ内容の診断書を書いてもらうのは非常に難しいものです。しかし、悔いの残る請求をするよりは、少し頑張って、できるだけ思いの通じる診断書を作ってほしいと思います。
当事務所でも、そういった個別の事情の聴き取りから書面化など、障害年金請求のサポートに力を入れております。ご不明な事があったり、ご相談がありましたら、是非ご遠慮なくお問い合わせください。
精神障害認定のガイドラインってどんなの?(1)

厚生労働省は「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を策定し、今年9月1日から実施する事を発表しました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000130041.html
主な内容は、これまで「総合的」に認定していたものについて、一定のガイドラインを設け、等級判定の公正さを保つものとされています。
具体的には、診断書裏面に記載される「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」という2つの項目を数値化したうえで、それを表に当てはめて等級判定のガイドラインにしようというものです。又、これまで「総合的に判定」と抽象的だったそれぞれの事情について、項目を5つに整理し、それぞれどのような要素を考慮するのかという事を例示しています。
今回と次回の2回にわたり、この内容について解説していきたいと思います。
今回は、大きな枠組みである「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」の数値化についてお話しします。
まずは、等級判定の目安の表について見ていきましょう。
目安の表は下記の通りです。

この表の見方を説明します。
縦軸は、診断書裏面の「日常生活能力の判定」の評価の四段階評価の平均値、横軸は同じく診断書裏面の「日常生活能力の程度」の5段階評価の数値を当てはめます。
縦軸の「日常生活能力の判定」の対象は、下記の7項目です。
(1) 適切な食事
(2) 身辺の清潔保持
(3) 金銭管理と買い物
(4) 通院と服薬
(5) 他人との意思伝達及び対人関係
(6) 身辺の安全保持及び危機対応
(7) 社会性
又、この7項目それぞれについて、以下のような4段階の評価を行います。(評価の文言は、各項目によって若干違いがありますが、全て同じ4段階評価です。)
1 できる
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
3 助言や指導があればできる
4 助言や指導をしてもできない若しくは行わない
7項目について、各1~4点で評価するという事です。
そして、その平均値をとったものが、表の縦軸の数値という事です。
横軸の「日常生活能力の程度」とは、下記の5段階評価の数値です。
(1) 精神障害(知的障害)を認めるが、社会生活は普通にできる
(2) 精神障害(知的障害)を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。
(3) 精神障害(知的障害)を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
(4) 精神障害(知的障害)を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
(5) 精神障害(知的障害)を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。
この2つの数字が交わるところが等級の目安となります。
例を出してみましょう。
「日常生活能力の判定」
・適切な食事
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
・身辺の清潔保持
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
・金銭管理と買い物
1 できる
・通院と服薬
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
・他人との意思伝達及び対人関係
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
・身辺の安全保持及び危機対応
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
・社会性
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
「日常生活能力の判定」
3 精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
この場合、「日常生活能力の程度」の平均は1.85です。
表に当てはめると、縦軸は上から5番目の「1.5以上2.0未満」、横軸は左から3番目となり、等級は「3級」となることがわかります。
この様に、診断書を見ただけである程度の等級が解るという事が今回のガイドラインの大きな特徴となります。
ただし、この表だけで等級が決まってしまうのでは、個別の事情が全く反映されず、かえって不公平になってしまう事が考えられます。
次回は、この表以外に考慮すべき点として例示されているものがありますので、就労関係を中心にそれらを見ていきたいと思います。
障害年金の意味 ~療養生活と社会復帰という視点の違いから
障害年金用のリーフレットの原稿を書いていて解った事があります。
なぜ、私が障害年金を自らの仕事としたのか、とか、障害年金を受給する事の意味とか。
今までも、もちろん自分なりに意識しているつもりではあったのですが、改めてその思いを文書にしようとすると大変に難しい作業でした。ところが、それが少し形になってくると、それまで自分では意識していなかった事が表れてきて、とても面白いものです。
まだ十分に納得がいっているわけでもないですし、このままでは長すぎてリーフレットには使えないのですが、自分が何を考えて障害年金という仕事を手がけているのかが解る面白いものになったので、そのままお蔵入りするのはもったいないと、ここに転載しておこうと思います。
障害年金は「今日」と「あした」のあなたを支えます
普段何気なく送っている日常生活は、実は健康な身体があってはじめて成り立っています。
思いもかけない事故や病気によって、そんな普通の生活を失ってしまうことがあります。メンタルヘルスに関する病気にかかると、同じように日常生活が失われていきます。中でも、うつ病は10人に1人はかかると言われるほどに多くの人が苦しんでいます。
こうした人生を左右するほどのアクシデントに対して、個人で備えておくことは簡単なことではありません。
そこで国による社会保障という制度があるのです。中でも病気や怪我などで働けず、日常生活もままならないという不安定な生活を支えるのが障害年金なのです。
障害年金を受給すると、毎月一定の収入を確保できます。そうすると、その後の生活が安定するだけでなく、さらには社会復帰を目指すときの礎ともなるのです。
うつ病の場合、将来社会復帰が可能なところまで回復する可能性はかなり高いのです。しかし、現実問題として、本当に立ち直り社会復帰するまでには長い時間が必要となります。それは病気からの快復の時間ということもあります。が、何より闘病が長期化したり、再発したり、また、うつ病を前提に社会復帰をしなければならないということもあるでしょう。そうした場合、うつ病そのものを「自分の一部」として受け入れなければならないこともあります。それを受け入れるのには長い時間がかかります。その間の不安定な生活を支えてくれるのは家族や友達だけではないのです。障害年金という社会の制度もあなたを支えます。
そして、やがて社会に復帰する「その時」がきます。けれど長い間の闘病生活で体力は落ちています。また以前と同じようには働ける状態にはないかもしれません。それでも「その時」、家族や友達だけでなく障害年金もあなたの背中を押してくれます。
例えば、障害年金で生活の基礎収入を賄いながら、アルバイトなどの仕事から社会復帰を目指すといったこともできます。障害の程度によっては、働きながらでも障害年金をもらえることがあるのです。
もし、障害年金がなかったら、「アルバイトだけでは生活が成り立たない」と悲観してしまい、前向きな考えもできないかもしれません。
最低限の生活費は何とかなる。そう思えるだけで背中の重い荷物も幾分かは軽くなるかもしれません。
最低限の生活を守り、その後のより良い人生を切り拓くためのもの。「今」と「あした」の生活をこじ開ける武器、それが障害年金なのです。
こんな感じです。
療養中の障害年金とその後社会復帰する時の障害年金では、その意味合いが少し違ってくるのだという事に気づきました。
うつ病で療養していたりすると、生活はかなり惰性になってしまいます。なんとなく日々が辛くって、それでなんとなく毎日が過ぎ去ります。主体的に生活する事は難しいものです。そういう時の障害年金は自分の生活そのものを引っ張っていってくれるような存在なのではないかと思うのです。
生活の糧もなく、生きていく意味も見いだせない暗闇の中にあって、障害年金そのものは自分を直接には助けてはくれないのですが、しかし、わずかなりとも収入がある事でその人の「生」は引っ張られます。もし家族の助けも自らの蓄えも無かりせば、真っ逆さまに落っこちていってしまう「生」も、障害年金という浮き輪がある事で若干の浮力を得るのです。
一方で、ある程度病気も回復し、自分の人生にうつ病を織り込み済みにする事ができる段階になってくると、今度は自分が能動的に生きてみたくなる。なんとか原寸大の自分の力で生きていきたいと思い、また、それで到達できる人生というものにも納得をしてきます。
そうすると、今度は障害年金のわずかな浮力に頼って生きていくというよりは、失速して落ちそうになった時の受け皿という意味合いが加わってくるのです。もちろん、変わらず浮き輪として浮力を与えてくれる存在である事には変わりはないでしょう。
ただ、必死にそれにすがりつくという存在から、安全装置的存在へと変わっていくのです。
そうした変化というのは、病人自身の考え方というか、ものの捉え方の変化があるという事で、考えてみれば当たり前なのですが、今までは特に意識をしていませんでした。
障害者と言っても、いつまでも同じ状態が続くのではなく、特にメンタルヘルスの患者の場合、状況は時間とともに変わっていきます。私自身、いろいろに変化する自分自身というものを見てきました。その時その時のステージによって求めるものも変わってきます。
そういう事も踏まえて障害年金の必要性というものを訴える事ができるのではないか。むしろ自分もうつ病経験者であるのならば、そういった側面をこそ語るべきなのではないか。
自分の仕事の立ち位置というものを少し見直してもいいのではないかと思いました。
今日考えたばかりの事で、まだ消化不良でちゃんとした表現になっていないのですが、また機会があったらキッチリ考えます。が、とりあえず今日はここまでにしたいと思います。
障害年金の時効がなくなる!? 時効の起算点を変える名古屋高裁の判決
ちょっと驚きの裁判例が出ていたので、速報的にご紹介します。
名古屋高裁の障害年金の時効に関する判決です。
名古屋高裁平成24年4月20日判決
この運用によって,10年さかのぼって受給資格の認定を受けながら,5年分しか障害基礎年金を支給されなかった女性が,不支給であった分の支給を求めた訴訟の控訴審判決で,名古屋高裁は請求棄却だった一審判決を取消して,請求を認めました。
この判決の意味するところ 実質時効がなくなる?
過去に障害認定日がある障害年金を請求した場合で、今までは過去にさかのぼって支給されるのは5年まででした。それが、今回の判決ではくつがえり、障害が認定された時点までさかのぼって支給しろ、という事です。
名古屋高裁の理由は,上記のような年金は請求をしないと盛られない仕組みに着目して,認定されてから給付を受けられるので,その時点から時効が起算されるというものです。
年金の時効が始まる時期が、これまで障害があると認められる最初の時点とされていたのが、請求をした時点に変わるという事です。
これは事実上、時効がなくなるという事です。
高裁レベルの判決なので、何とも言えないのですが、これまでの障害年金実務をすっかり変えてしまう破壊力のデカイ内容です。
諸手を挙げて喜びたいが・・・ ますます認定が厳しくなる?
年金受給者側からすると、とても良い判決です。
が、年金制度全体で見たらどうなんだろうという懸念があります。
ただでさえ危機的な状況にある年金財政です。さらなる支払への対応は避けたいところでしょう。
現に、今障害年金界隈で話題となっている事として、障害年金の更新の時、それまでと全く同じ診断書であったのに障害等級が引き下げられたり、ひどい時には支給停止になってしまっていると言う事態があります
この対応は、法律や判決で不都合があるなら、運用でなんとかしよう、というように見えます。
過去5年にさかのぼるだけで、数百万円単位の一時金です。
これが10年、20年まで認められるという事になると一千万円単位の請求になってきます。
現状、支給を絞り始めている年金が、それに唯々諾々と従うとは思えません。
一番手っ取り早い対応は、障害年金の支給の基準を運用上高く設定してしまうという事です。
これまでは認められていた程度の障害でも、認められにくくなってしまう。そういう事になると、障害年金受給者全体で見た時、必ずしも得であるかどうかは解らない、そう思えてしまうのです。
いずれにせよ、まだ名古屋高裁の判決です。今後どのような展開をたどるのか注視したいと思います。
てんかん問題、再考 患者の生きる手段が奪われる!?
てんかんネタ、Again
先日、てんかんについての記事を書きました。
それ以降も、ネットの中ではてんかんについての情報があふれています。特に、てんかん患者自身からの意見には注目に値するものが多くあります。
中でも、とても共感したものは、はてなダイアリーのthir氏の記事、「てんかん患者からの免許はく奪はより深い意味を持つ」です。
ここでは、てんかん患者の運転免許規制をする事で、てんかん患者に与える深刻なインパクトについて書かれています。
てんかん患者の運転免許規制をする帰結としての社会崩壊

てんかん患者の自動車運転免許を規制する事によって、社会にどのような影響を与えるのでしょうか?
それは、「今、なんとか普通に生きている多くの患者の生活が暴かれ、奪い去られる危険」です。
そのことを示す前に、まず、てんかん患者をはじめとする精神疾患患者などがどのような日常を送っているのか、という確認が必要です。
「クローズ」な生き方って知ってますか?

thir氏の記事から引用します。
てんかんに限らず、慢性精神疾患やエイズなど告知によって差別・偏見を受ける疾患は多数存在する。そういった疾患を持つ者は、多くの場面において自らが病気であることを自分から話さない。それは、就職の際にも同様である。告知せずに就職をし、雇用主からクリティカルな質問を受けない限りは病気を隠し続ける——これが「クローズ」(クローズド)という生き方である。
「クローズ」という生き方を選択せざるを得ない人々というのは、現に多数存在しています。
てんかんについて、たいした知識もない私ですが、こと「うつ病」(「そううつ病」も含みます。以後も断りがなければ「そううつ病」も含むと思ってください。)という事になれば、実体験を持っています。大勢のうつ病患者の知人もおります。
それらの中で、おおっぴらに自分が「うつ」だ、と宣言している人はどれほどいるでしょうか?
ごく親しい人には告げることもあるでしょうが、広く一般社会に対して自分が精神疾患であるという事を「開いて」いる人はほとんどいないと思います。
個人的体験としての「オープン」
私自身について言えば、かなりオープンにしている方だと思います。
精神疾患向けの障害年金のセミナーなどでは、まず、自分がそううつ病であるという告白から始めています。
そういうオープンな発言について、自分自身にひっかかりがないかと言えば、全くそんな事はないのです。できる事なら人には言いたくない。なんでもないような顔をして生きていきたいと思っています。
なぜなら、うつ病である、と明かした途端に自分に向けられる眼差しは色を変えてしまうからです。
少なくとも、患者本人の感覚からすると、そういうフィルターがかかるのだろうな、と言う恐れは常に抱いています。
しかし、私は、自分自身の不幸を切り売りする事が、自分の仕事を成功させる上で役に立つという思惑と、うつ病そのものに対する見方を少しでも変えていきたいという思いがあります。
「私もうつ病です」という一言の巨大なインパクト

うつ病を6年近くやっていると、多くのうつ病の人に会う機会があります。プライベートで会う人もいれば、仕事上のつながりで知り合う人もいます。彼らに、「私もうつ病です」と一言告げるだけでとても強い共感を共有する事ができます。
なぜか?
それは、彼らは常に健常者に対して負い目を感じ、自分自身の病気に関する事はできるだけ伏せて生活しているからです。世間とのそういう関係の中にあって、同じ病気の人に出会うと、とても「安心」するのです。
それはとりもなおさず、日常会話の中では、あからさまに語る事のできない様々な悩み、苦労について、偏見を心配することなく、素直に語り合う事ができるからです。
うつ病患者同士であれば、「私もうつ病です」はマジックワードと言ってもいいでしょう。この一言を告げた瞬間、それまでの緊張は嘘のようになくなります。そこからは「仲間意識」すら生まれてくるのです。
「オープン」と「クローズ」の狭間で
事ほど左様にうつ病患者は、自身の病気についてコンプレックスを抱いているのです。
それは健常者には中々理解できない事でしょう。
私はそういう偏見は持っていない、と言う方も大勢いらっしゃいます。幸いな事に、私の身近な人たちも、うつ病について色眼鏡で見ようなどと考えている人は皆無です。皆、とても優しく、気を遣ってくれます。その善意は疑う余地はありません。
しかし、詳細に話したところで解ってくれるとも思えない。変な誤解を生むだけかも知れない。そういう不安を抱えています。

初めて会う人に対して、自分の病気について、話していいものかどうかは本当に心剣に悩みます。
自分の仕事を説明する上で、踏み込んで話をできる場合は、是非もなく話す、という事にしています。この場面では、なぜ自分がこの仕事をやりたいと思っているのか、という思いを相手に伝える事が最も重要な要素だと思っているからです。そして、なぜやりたいのか、と言う理由の根本は、自分のうつ病体験にあるからなのです。
しかし、ちょっとした知り合いに対する態度については未だに迷いがあります。
同業の社労士にはできるだけオープンに話すようにしています。なぜなら、彼らはメンタルヘルスという問題に近しい職業だから、その実態について、是非生の声を聞いておいてほしいと思うからです。
しかしながら、これもいつでもどんな時でも言えるのかというとそうでもないのです。
まず、この話題を出せる雰囲気があるかどうか、と言う事です。親睦会でみんなが楽しくやっている中で、「オレ、うつ病なんです」と切り出した日には、その場が凍り付きかねません。「オレ、腎臓の病気なんだ」と切り出した時は、その場は凍り付く程の気温の低下はないにも関わらず、です。
社会生活を営む上での必須スキル「クローズ」
最も重要な局面としては、就職の面接です。
まさか、「うつ病で2年間療養してきましたが、最近良くなってきたので働こうと思って・・・」と面接で言う訳にはいきません。
と言う事は、自分の病気の事を一切秘匿して就職し、良心の呵責に耐えるという苦行を一生背負わなければならないのです。その上、ばれたら首になる、という恐れもあり、日常の精神活動への気配りは健常者が考えているものとは次元の違う重さがあります。
それでも、そういうリスクを背負ってでも、一般社会に溶け込んで行かなければ、今の日本という国では一ヶ月として生きていく事はできません。
そういう仕組みになっています。もしくは、そう仕組みになっている、と患者は思っています。
障害者の心に福音をもたらすような社会制度はありますか?
もちろん、障害年金という制度があります。
私自身、それを精一杯お手伝いする事で、その人の人生の負担を少しでも軽くしたい、と思っています。
しかし、現実の厚生労働省の対応として、精神疾患の障害年金の支給は少しずつ絞っていこうという傾向が見られます。ただでさえ十分とは言えない年金ですが、それすら受給できなくなる人が多くなりそうです。
年金をあきらめたら、残されるところは生活保護のみです。こちらも各市町村の財政状況が極めて厳しいなか、どれほど受給し続けられるかというのは大きな問題となっています。

何より、それら経済的な問題を解決したとしても、それでも尚、世間体、と言う大きな壁が存在しているのです。
自分が「障害者」である、という事実を受け入れるのには、相当な時間と覚悟がいります。さらに、障害年金で社会からお金をもらって生きるしかない、と悟った時の絶望感というのは何とも言えない悲壮さを漂わせます。それは体験すると、文字通り「死にたく」なにます。
仮に、障害年金又は生活保護を受給できたとしても、その額は微々たるものです。そこから、人生が上向きになる事はない、と知る事。これも精神的に相当苦しいものがあります。
こうした大量の障害を乗り越えて、初めて「オープンな病人」を気取る事ができるのです。
中々できませんよ。
そんな苦労とリスクを背負うくらいなら、ウソついて会社に就職した方が楽ですし、お得です。
クローズにしなければ、人並みの生活はあきらめなければならない、という厳然たる事実がある訳です。
thir氏は言います。
「クローズ」においては、病気にり患している事実を徹底的に隠し続けなくてはならない。ゆえに、一般的な「健常者」が出来る業務は同様にすべてをこなすことが可能であること、履歴書上健常者となんら変わりないことを表明する必要がある。
そうする事でようやく人並みの生活を「目指す」事ができる。それが精神疾患の患者の見ている「世界」です。
てんかん患者運転規制で起きる小さな悲劇

そうした現実を踏まえた上で、免許規制が実施されたらどうなるのか、と言う事を考えましょう。
再びthir氏のブログからの引用です。
当然「運転免許を取得することはできない」ということを雇用主に対して表明しなくてはならない。その表明の際は、おそらく「なぜか」と問われるだろう。この質問に対しては、もはや素直に「てんかんを持っているので…」と回答するしかない。この瞬間に、かぶっていた仮面は剥がされ、崩れ落ちる。
運転免許証を規制した場合、できなくなることは「運転」だけではない。「クローズ」という生き方そのものが危険にさらされる。
たかが自動車免許一つによって、世間の目をごまかしながら何とか通常の生活を獲得しようともがいている人たちの、たった一つの盾はあっさり取り払われてしまいます。
むき出しになった患者は、もはや一般社会に溶け込む事は事実上不可能です。
ユートピアはあるの?
差別のない社会を創ろう、などという美辞麗句を並べる人もいるでしょう。
でも、それは無理なんじゃないですか?
だって、外見では中々解らない病気で、しかも発病したときどんな状態になるのか想像がつかないんです。
どこかが痛いとか、身体の機能が異常を来すとか、そういうものはほとんどなく、行動力がなくなる、とか、感情がかき乱される、とか、当事者以外は「想像で補う」しかない症状なんですね。

人の想像力なんてたかが知れています。
私は親しいウツ友と、「同じウツでも、あんたの苦しみはさっぱり解らん。同じうつ病なのに、ね。人間は本当にわかり合う事はできない。立場を想像するしかないんだよね。」という会話を繰り返していました。
同じような時期に、同じ病気にかかり、ほぼ毎日顔を合わせていた2人が、共通の認識として、「あんたの苦しみは解らん」というものだったのです。
況んや健常者には「想像」する事すら難しい事なのだと思います。
そういう事は、別に「うつ病」だけに限った話ではなく、どんな病気についても同様なんだと思います。
HIVとか、肝炎とか、世の中には沢山偏見にまみれた病気があります。それらのフィルターすべてを取り払ったユートピアというものは想像上の産物でしかないのです。
最後に、もう一度thir氏のブログを引用します。
差別がなくなることが最も良いことである。それは、てんかんという病それ自体への偏見がなくなり、職場についても運転はさせないとか、そういうものである。ただ、私はこの国でそういう文化が根付くのかと言われたら、根付かいと言わざるを得ないと思う。履歴書に一つでもキズがあると渋るような経営者が大多数を占めているこの国の上位層が、「キズ」のひとつである精神疾患・脳疾患にたいして寛容になることはおそらくありえない。私は社会的な差別は一切なくなるべきだと思う。しかしそれは残念ながら理想論だ。私は理想論を語りたいのではない。理想論はあくまでも理想であり現実で今苦しんでいるものにとっては、それ自体が苦痛でしかない。
それでも!それでもだ、そういった「社会的偏見はなくならない」という状況の下で、クローズという生き方を行えば、普通の暮らしがおくれるのだ……これだけは最低担保しておくべきである、それが私の主張である。
社会と個人の軋轢の中にあって

てんかん患者の自動車事故については、深刻な社会問題であることは疑いもない事です。
実際、てんかんが原因で、または原因と思われる事故が発生していることに変わりはありません。それをなんとかせずに放置することは社会正義に悖ります。
その議論が盛んになることは、社会全体としてはよいことでしょう。
しかし、それは社会の構成員である個人として、すべての人に福音をもたらすものではない可能性というものがある。
むしろ、これまで無難に生きてきた基盤を根こそぎ剥ぎ取り、暗闇の世界に追い落とすことにもなりかねない。
そういう事実もあるということも又知った上での議論になってほしいと思っています。
蛇足ですが・・・、改めてネットってすげぇ
最後に、蛇足ながら付け加えると、こうした事件についていろいろ考える上で、やはりインターネットというものの存在はとてつもなく重要な存在になったようです。
20年前の世界であったなら、マスコミ発表の「てんかん患者による悲惨な事故」が主題となり、「かわいそうな罪もない被害者」という対象がクローズアップされ、これからてんかん患者の運転免許の規制についての話をしよう、と世論は一義的に誘導された事でしょう。
今、ブログ、Twitter、Facebookといった各種発信メディアがあるおかげで、マスコミからはにじみ出てこない、様々な立場の専門家、当事者の意見を聞く事ができる世の中になりました。
その結果、世の中は全く単純ではない、という事に気づかされ、安直な結論を導き出そうという風潮が、まさに衆愚政治となりかねない危険を孕んでいる事を痛感させられるのです。
インターネットという未曾有の情報化ツールを得た現在、もっと様々な立場の人の主張をしっかり聞き取れる社会になってほしいと切に願います。
てんかんによる交通事故から思う「精神障害者の生き様」
今、世間を賑わわせているニュースに、祇園の交通事故があります。
てんかん患者による人身事故という事で、昨年のクレーン車の事故を思い起こさせます。
抗てんかん薬の反応があったとか、意識はあったようだとか、様々に問題はあるようですが、世論として、てんかん患者の運転は危険だから避けるべき、という風潮があります。
てんかんの危険性
実際、てんかんの発作の可能性のある人が自動車の運転や機械操作などに従事する事は、事故の危険性が高く、多くのてんかん患者もそれらはよく解っている事と思います。

企業側から見ると、単に安全管理上問題があり、労災リスクが高まります。何より、発作時にコントロールが効かない可能性が高く、重大事故につながりやすいという側面は無視できません。
運送関係や機械操作が伴う業種の場合、入社時においてしっかり確認をとっておく事が大切です。
患者側からすれば、聞かれなければ申告する義務はありません。
知らずに雇ってしまった場合、てんかんを理由に解雇するという事は難しくなります。
危険作業がある職場は、入社時にてんかんでないという誓約書なりをとっておく方が良いでしょう。
但し、あくまでも就業上、危険作業に従事するので安全確保のため、という合理的な理由がある場合に限ります。
てんかん患者が運転を自粛すれば問題はなくなるのか?
こうしたことから規制の強化が望まれたり、患者に対する不当な差別が助長されたりする事も別の問題をはらんでいます。
例えば、自動車の運転を一律に規制したとしたらどうでしょうか。
車の運転ができないとなれば、ただでさえ難しい就職がさらに困難になります。また、都心部を除けば、日常生活の移動にも制限を受けてしまいます。
また、単に病気であるという理由だけで権利を奪ってしまって良いのかという議論も出てくる事でしょう。
「てんかんでない事の証明」は可能か?
さらに、運転免許取得時において「てんかんでない事の証明」をとる事が可能か、という問題もあります。
この「てんかんでない事の証明」がとれるのかどうか、少し気になったので調べてみました。
「~である事」の証明は容易ですが、「~でない事」の証明は大変困難です。悪魔の証明とも言われます。
ところが、その証明を必要とする資格がありました。

銃刀法です。
「精神障害若しくは
そのため、精神科の専門医による診断書が必要になるのです。
銃の所持という非常に慎重にならざるを得ない場面では、てんかんのみならず、統合失調症、そううつ病やうつ病などの精神疾患でないという証明も必要となるのです。
殺傷能力という点から考えれば、銃も自動車も同様なのでしょう。しかし、銃と自動車では日常性に天と地との開きがあります。銃規制と同列に扱うべきかどうかは議論の余地があります。
「てんかん」で障害年金はもらえるのか?
この銃刀法のように、てんかんは所謂、精神疾患で、うつ病や統合失調症などと同列に語られます。そうすると、日常生活上の問題は、精神疾患の患者と似てきます。
一番大きな問題はお金でしょう。
うつ病などもそうですが、服薬により症状が抑えられているとしても、病名を告げて応募すれば、一般企業ではまず採用されないでしょう。働く事ができなければ毎日の生活費が出ません。
そこで社会保障の出番となります。
てんかんでも障害年金はでます。
障害年金の認定基準というものがあり、その中に「てんかん」の場合の認定基準も記載されています。

2級の認定基準によれば、
十分な治療をしていても、意識障害や転倒などの重い発作が年に2回以上あるか、転倒まではしない発作が月に1回以上あり、なおかつ、日常生活が著しい制限を受ける者
とあります。
発作の頻度や日常生活でどれほど制限を受けているかを訴える事で受給される可能性は高くなります。
又、てんかんは子供の頃に発症する事が多い病気です。20歳前に発病し、医師の診断を受けていた場合、年金を全く納めていなくても受給できると言う制度もあります。
困っている人は、とにかく専門家に相談する事をオススメします。
(当事務所でも障害年金の相談を受け付けております。私も精神障害の経験者です。安心してご相談ください。相談料は無料です。)
とはいえ、「抗てんかん薬の服用や、外科的治療によって抑制される場合にあっては、原則として認定の対象にならない。」とあります。薬で抑制する事でそれほど頻繁に発作が起きる訳ではない、と言う人は受給が難しくなっています。
てんかん、うつ病など精神障害者と社会
このように、軽度の場合、社会保障の対象にはならないにも関わらず、社会からの差別的待遇はあるため、患者は生活苦に追いやられます。
実際、労務リスクという点で、企業が精神疾患の患者を雇わない事は合理的な選択です。私が事業主であってもそうするでしょうし、顧問先にもそう言うでしょう。そして現実として、病名を告げて応募した場合はほとんど採用されていないと思います。
しかし、障害年金が出る程の障害でもない。
それでも生きていかなければなりません。
企業をはじめとする社会の立場と精神疾患患者としての個人の立場とのギャップが大きく存在しています。
この点について、身体障害や知的障害に比べて、精神障害についての対策は全く進んでいないと思います。
てんかんやうつ病などの精神障害が身体や知的障害に比べて避けられている理由は、いつ症状がでるか解らないという不確定性にあります。
いろいろな経営者に聞いてみても、いつ休むか解らないうつ病患者は雇えない、と口をそろえます。てんかんもいつ発作を起こすか解りません。この先の読めないリスクを背負う事が企業にとっては難しいのです。
そして、ずっと続く不景気により、その傾向は一層強くなってきています。
精神障害者の生きていく道とは 雇われずに働く
では、こうした精神疾患の患者はどうして食べていけば良いのか。
生活保護しかないのか。
正直、「正解」は私には解りません。
しかし、一つの解答として、「雇われずに働く」、という選択肢があると思っています。
「働く」という事は、必ずしも「雇われる」という事ではないのです。
自営業というと、不安定、というイメージが強いと思います。実際、サラリーマンに比べてかなり不安定だとは思います。
ただ、企業に「雇用されない」状態と比べると相当安定してはいる訳です。
病気であるという、どうしようもない現実。
それを知られれば雇われないという現実。
隠す事の後ろめたさ。
隠す事の難しさ。
病気療養のための空白期間、何をやっていたか、と聞かれるだけで破綻する面接。
そうした現実をかいくぐって就職する事に比べれば、手に職をつけて小さく自営業をやる方が現実的なように思えるのです。
私自身、うつ病と診断され、長期間療養したため、雇われる事は無理だと思いました。
自営業であることのメリット 特に精神障害者にとって
自営業は「不安定だ」、という事の裏返しとして、ずっと「安定的に拘束」される訳ではない、という事があります。
企業が精神障害者の雇用を控えるのは、いつでも、いつまででも働けます、という保証がないからです。と言う事は、雇われたら基本的に毎日働かなければなりません。
しかし、自営業であれば、「今日は調子が悪いからパス」、と言えるのです。
もちろん、後日そのツケは回ってきますが、自分の体調のせいですから、それほど腹も立ちません。
カバーしてくれる組織がある訳でもないので大変なのですが、それは実は雇われていたとしても同じ事です。
その日の仕事は誰かがなんとかしてくれるでしょう。でも、会社としてそういう人をバックアップするつもりはないでしょうから、早晩、退職勧奨が待っています。
それに比べれば、少なくとも自営業に退職勧奨はありません。
資金繰り等、困難も沢山ありますが、その分やりがいもあります。一度独立すると解りますが、人から「やらされる仕事」とそうでない仕事ではストレスのかかり具合が全く違います。
今、私自身に、自分の経験を踏まえてアドバイスしろ、と言われれば、迷う事なく自営業を勧めます。
そもそも日本の大企業がいつまでも日本にいるかどうが怪しいという最近の世の中です。障害年金をもらいながら、小さな仕事で補って生活していく、というスタイルがもっとやりやすい世の中になれば精神障害者の生活ももっと楽になるのに、と考えずにはいられません。
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