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11月から「労働時間適正化キャンペーン」 ダラダラ残業撲滅のチャンスです!

2011-10-20

11月に「労働時間適正化キャンペーン」を実施

厚生労働省では、長時間労働や、これに伴う問題の解消を図るため、11月を「労働時間適正化キャンペーン」(別添1)期間とし、使用者団体・労働組合への協力要請、リーフレットの配布による周知啓発などの取り組みを集中的に実施します。

労働時間の現状を見ると、依然として長時間労働の実態が見られることから改善が必要な状況にあります(※)。長時間労働を抑制し、労働者の健康を確保するとためには、使用者のみならず、労働者や労働組合、産業保健スタッフなど、すべての関係者の理解を得て、労使が一体となった取り組みが行われることが重要です。

引用元: 11月に「労働時間適正化キャンペーン」を実施|報道発表資料|厚生労働省

■ 11月から「労働時間適正化キャンペーン」!! 残業情報も積極的に収集?!

厚生労働省のHPによると、11月は労働時間適正化キャンペーンだそうです。
重点事項は次の通りです。


(1) 時間外労働協定の適正化などによる時間外・休日労働の削減
(2) 長時間労働者への医師による面接指導など、労働者の健康管理に関する措置の徹底
(3) 労働時間の適正な把握の徹底

また、主な実施次項としては次のようなものが上がっています。

(1)使用者団体及び労働組合に対する協力要請
使用者団体及び労働組合に対し、労働時間の適正化に関する積極的な周知・啓発等の実施についての協力要請を行います。

(2)職場の労働時間に関する情報提供の受け付け
職場の労働時間に関する情報を下記URLに設置する「労働基準関係情報メール窓口」で受け付けます。
期間 : 11月1日(火)から11月30日(水)
URL: (11月1日よりアドレスを公開いたします。)

(3)周知・啓発の実施
事業主等へのリーフレットの配布、広報誌、ホームページの活用等により、キャンペーンの趣旨等について広く国民に周知を図ります。

厚生労働省、組合などをあげて情報提供を募集するとの事ですから、普段から残業の多い企業では注意が必要になるかもしれません。

■ 社員の労働時間管理は会社の義務 下手すると訴えられます

さて、このキャンペーンの対象には時間外労働の削減は当然のことながら、長時間労働になってしまった場合の対応が入っています。

深刻な不況が続く中で、慢性的な長時間労働により働く人の心身の健康が問題になっています。
ウツ病などのメンタルヘルスや心筋梗塞など、過労が原因と思われる労災申請も高止まりしています。企業には働く社員の健康についても配慮しなければなりません。これを「安全配慮義務」と言います。これは単なるスローガンではなく、法律上の義務として定められています。

法律上の義務という事は、裁判で訴えられる可能性がある、という事を示しています。
実際、最近では労災申請だけでなく、企業の安全配慮義務違反を訴え、損害賠償を求める裁判が起こっています。

もちろん、社員本人の不摂生による病気という事であれば会社の責任は問われません。しかし、長時間労働が続いており、そのストレスで・・・、という事が認められてしまうと、会社はその人の健康をケアしなかったという事で責められてしまいます。そんなバカな、と思うかもしれませんが、そういう時代なのです。

■ 労働時間管理=健康管理 会社は社員の健康にまで責任を負う時代です

では、具体的に社員の健康管理とはどうすれば良いのでしょうか。

これについて、労働安全衛生法という法律により、長時間労働者への健康を守るために会社がしなければならない事として次のような決まりがあります。

労働安全衛生法 第66条の八

事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。

2 労働者は、前項の規定により事業者が行う面接指導を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合において、他の医師の行う同項の規定による面接指導に相当する面接指導を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。

労働安全衛生規則 第52条の2

法第66条の8第1項 の厚生労働省令で定める要件は、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者であることとする。ただし、次項の期日前1月以内に面接指導を受けた労働者その他これに類する労働者であつて面接指導を受ける必要がないと医師が認めたものを除く。

つまり、1月に100時間以上の残業をしている社員で、疲れ切っている人がいたら、医者に診せなければならないという事です。

また、会社には、社員の労働時間がどれくらいなのかを常に把握する事も求められています。「社員が勝手に残業した。」という言い訳は通用しないという事は覚えておいて下さい。「帰れ!」という命令を下しているくらいでなければ、「残業を黙認していた=残業を命令していた」という図式が成立してしまいます。

■ 長時間労働のリスクを抑えるために まずは「ダラダラ残業」をなくす

社内の体制をいきなり変えようとしても難しいと思いますが、少なくとも社員がどれくらい残業をしているのかを把握しておくことが時短の第一歩です。

社員の残業が多いようなら、「早く帰れ」と普段から声を掛けるように努めましょう。何も言われなければ社員本人も自覚がないままに長時間労働をだらだらと続けてしまいます。
長時間残業している社員には厳しく注意をしましょう。長時間の残業が美徳と勘違いしている人もまだ多いのが日本の現実です。残業に対して罪悪感を感じるくらいが丁度良いのではないでしょうか。

もし長く働く社員が良い社員と思っている社長がいらっしゃるようでしたら少し考えを改めた方が良いでしょう。社員の健康問題は今後の会社の抱える大きなリスク要素になります。その中心テーマは長時間労働です。


まずはダラダラ残業をなくす
これは社長、直属の上司など管理職の意識次第で改善出来るのです。
それでも長時間労働が治らない場合、その時こそ業務の偏りがないか、不必要な仕事をしていないかといった仕事の本質部分を調べてみるべきでしょう。

■ 過労による労災認定の基準 デッドラインは夜10時!

脳・心臓疾患の労災認定については、直前の1か月間に100時間の残業があった場合か、発症前2~6か月間にわたって、1か月80時間程度の残業があった場合は過労と認める事になっています。

脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準

過重負荷の有無の判断

著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したと認められるか否かについては、業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同僚等にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断すること。
具体的には、労働時間のほか前記イの(ウ)のb~gまでに示した負荷要因について十分検討すること。
その際、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間に着目すると、その時間が長いほど、業務の過重性が増すところであり、具体的には、発症日を起点とした1か月単位の連続した期間をみて、

(1) 発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること

(2) 発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること を踏まえて判断すること。

1ヶ月80時間の残業とは、1日に直すと約4時間弱です。

仮に終業時刻が夕方6時とするなら、毎晩9時、10時まで残っている社員は過労と認定されてしまうと言うことです。

この辺りの数字を気にとめて夜の会社を見回してみてはいかがでしょうか?

台風直撃の日本の中で、明日の労働法のトピックスを考えてみた

2011-09-22

■台風、列島直撃!! わが故郷高蔵寺も大打撃

台風が日本列島を縦断するような勢いで、全国各地に混乱を巻き起こしているようです。
私の地元の高蔵寺も、昨日から大変な被害が出ております。

水浸しの高蔵寺駅コンコース
駅構内のエレベータまで浸水!

小学生の頃から住み続けている土地ですが、駅のこんな姿は初めて見ました。
もっとも、近年最大の被害をもたらした東海豪雨の時は、会社から帰る事ができなかったために、地元がどんな状態だったかは全く確認できていませんので、その時以来の被害、という事になるのかもしれません。
駅の近くの普段から頻繁に使用している道が完全に水浸しというか水没というか、車が窓まで浸かっている映像などを見るとなかなかショックなものです。地元高蔵寺駅がこれだけ取り上げられるのもそうそうあることではないので、テレビの中に映る非日常な日常空間が余りにも奇妙な感じでした。

■嵐の中で大変な一晩でした

交通はほとんど麻痺状態で、電車は完全に停止していました。名古屋で働く父は、バスなどを使って名古屋市の外れまでは辿り着いたのですが、名古屋と春日井市を隔てる庄内川を渡る手段がなく立ち往生となってしまいました。救出すべく母と車で迎えに行きましたが、唯一残った橋めがけて車が殺到しており、大渋滞。さらに途中、友人から車がエンコしたので助けてくれ、という悲惨な電話が入ったりとなかなか大変な夜でありました。

今頃は関東辺りが相当大変な事になっている様ですが、進路がそのまま東北に向かっているというのも気に掛かります。紀伊半島といい、今年は本当に大変な事が立て続けに起こるものです。災厄の年とでも言うのでしょうか。

■こんな台風の日には労働法について考えてみよう

さて、こういう台風のような天災が発生したとき、会社は何に注意をしなければならないでしょうか。
まず、真っ先に外回りをしている社員の安全の確保が考えられます。また、これから外出しようという社員にも注意を喚起しなければならないでしょう。オフィスなどで仕事をしていると、テレビのようなメディアからは遮断されてしまうので、社員さんはどれくらい大変な事になっているのか気づかないまま外出してしまう事が考えられます。
仕事中に怪我でもすれば労災事故になってしまいますし、そういう状態の中でなんの対応もとっていないとなれば、安全配慮義務違反を問われかねません。特に建設現場など普段から危険を伴うような作業をしている時は、最優先で対応をするべきでしょう。

ひとまず、外の社員の安全が確保されたとして、では次に何を考えるでしょうか。台風に備えた社屋の対策などもあるとは思いますが、労働法的観点から考えて次に思いつくことは、会社早退時の賃金支払義務ではないでしょうか。
台風がまっすぐ上陸してくる事が予想される場合、社員の身の安全などを考えると、早めに会社の営業を終えて早く自宅へ帰らせるという事は十分ある事でしょう。これも、先の安全配慮義務と関わってくる事柄ですが、いつもと同じ感覚で仕事をさせて、いざ帰る時に台風直撃で社員が怪我、という事になれば、今度は通勤災害となり、またその状況で社員を帰宅させた事に対する安全配慮義務が問われる事もあり得ます。状況がひどい場合には、素早い応対が求められるでしょう。

■災害で早退したときの賃金ってどうなるの?払わなければいけないの?

さて、ここからが今日の本題なのですが、こうして社員を早退させた場合、その賃金の支払義務はどうなるのでしょうか、という疑問が出てきます。5分や10分の事であれば目くじらを立てる人も少ないとは思いますが、これが、1時間、2時間、半日となってくると、揉めるケースがあります。

おそらく、月給制をとっている正社員の方々はあまりもめないように思います。問題は、時給制をとっている、パート・アルバイト労働者です。彼らは自分の命と同義である時間を切り売りすることで所得を得ています。会社に所属するという身分から所得を得ている正社員とは、会社からの扱いも違えば、時間に対する感覚も研ぎ澄まされています。

「台風だから早く帰れ」と言った場合、定時までの時給はどうやって処理すれば良いのでしょうか。

労働者の方からすれば、「会社が帰れ」と命令したのだから、本来もらえるはずだった賃金をもらえる権利があるにちがいない、と考えるでしょう。
一方、会社の経営者からすれば、「台風が来て仕事どころじゃなくなった。社員の身を案じて早く帰してやったのに、その分の賃金をよこせとは図々しい」と思うかもしれません。

■労働法的解決策 『休業手当』は適用か?

これについて、労働法ではどうなっているでしょうか。
労働基準法第26条(休業手当)では、

使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

とされています。

つまり、自分の都合で会社休みにするなら、最低補償の賃金は払わなきゃいかんでしょ、と書いてあるのです。労働は契約でありますから、働く義務があれば賃金をもらう権利もあります。「この条件で働いてくれたらこれだけお金あげるよ」というのが平たく言った場合の労働契約ということになるます。ですから、会社が自分の都合が良いときだけ「早く帰れ」と言ったのなら、労働契約違反となり、その日給料を満額もらうつもりでいた労働者は困ってしまういます。それをなんとかしましょう、というのがこの26条の休業手当です。

■『休業手当』の要件を細かく検分してみよう

少し詳しく条文を見ていきましょう。
まず、冒頭は「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては」という断り書きから始まっています。これは、会社の都合で休むのならこの条文が適用されるけど、そうでなかったら適用しませーん、という意味です。

ここで「使用者の責めに帰すべき事由」と言うものがとても大事になってきます。ここで、この法律が想定しているのは、会社に仕事がないから早く帰ってね、とかしばらく来ないでね、という最近流行の一時帰休のようなものなのです。又は、仕事はあるんだけど、親工場からの資材が来ないから仕事できない、といった場合などもあります。
ものすごくぶっちゃけて言えば、会社がヘマをやらかしおかげで今日やる仕事がない、という状態の事を「使用者の責めに帰すべき事由による休業」と言う訳です。

■今回の台風の事案に当てはめるとどうなるのさ

さて、話を台風に戻しましょう。
この台風、一体誰のせいでしょうか。少なくとも会社の社長のせいで起きた台風ではないですね。企業の方針がこんなだから台風の針路もこっちに来ちゃったとかいう事もあり得ませんね。つまり、台風が来た事は「使用者の責めに帰すべき事由」にはあたらないのです。

従って、台風で早上がりをした人達のもらえるはずだった給料については、現実には全く就労をしていないので支払う義務はない、という事になります。これを「ノーワーク・ノーペイ」の原則と言います。別に外国語で言わなくったって、「働かざる者食うべからず」の方が解りやすいように思うのですが、業界としては、カッコつけて外国語で言うのが流行っているのです。

■ここからが本番!条件を詳しく設定していこう

以上が、台風の時の早上がりの時の賃金支払義務についての「一般論」です。
労働法がややこしいのはこれからです。

例えばパートさんの場合、一般に働いた時間を基準に計算された賃金を得る、というのは常識でありまして、さらに上記のような、「台風は誰のせいでもないからしょうがないじゃん」理論が出てくると、まあ、もらえないんだろうな、と多くの方は諦めます。しかし、世の中にはこれで諦めない人もいますし、また、諦めるのが正しくないという状況が発生し得るのです。

■パートさん「そもそも労働契約で時間きめてるじゃん。払えよ」って言えるの?

ここからはいろいろな場合が考えられますので、代表的な点に絞って話を進めていきます。

大前提として、パートさんはシフト勤務とか定時とか、そういう働く時間を予め定めてその日の勤務に望む場合があります。アットホームな職場で、「一通り終わったから帰って良いよ~」的な牧歌的勤務スタイルのところは別ですが、ある程度人数がする中では、多くシフト勤務を組んでいたりするでしょう。
問題はここにあります。毎日同じ時間勤務であれ、シフト勤務であれ、一番最初に労働契約を結んだときに始業・終業の時間について書面で通知を受けているはずです。

例えば、お昼のⅠ時~5時までの4時間勤務、という定時勤務を想定してみましょう。入社時の労働条件等通知書に13時から17時まで、と書いてあったとします。すると、この労働契約では17時まで働く義務が発生すると同時に、会社側も17時まで使用して賃金を与えなければならないという義務が発生します。そう、台風が来たからって、この労働契約は依然有効です。じゃあ、このパートさんは早上がりの差額をもらえるのか?

一般的に言うと、やっぱりもらえません。

何故なら、就業規則に労働時間は、業務の都合で早くなったり遅くなったりするからよろしく、という文言が大抵入っているからです。しかも、台風接近のための安全配慮義務を尽くすという大義名分がありますから、会社としては、さあ帰った帰った、と追い立てることに後ろめたさはないのです。

パートさん、残念でした。社長さん、良かったですね。

■就業規則、ちゃんと書いてありますか?書いてなかったらアウトですよ。

でも、これはちゃんとした企業の場合のことです。

就業規則、ちゃんと整備されていますか?
パートさん、一度でも目を通したことありますか?社長さん、どこにしまってあるか覚えているんでしょうね。
まさか何十年間、金庫にしまってあって埃が積もってませんか?
そして、その就業規則、適当に人のを写して作っただけだから、そんなこと書いたかどうか解んない、なんてことはないでしょうね?
気になった方は天気が晴れたらぜひ確認してみて下さい。

そして、労働時間の項目についてしっかり調べてみて下さい。業務の都合で時間を変更する事がある、の一言が見つかった社長さんはおめでとうございます。見つからなかったパートさん、喜んで下さい。

この規程があるかないかで会社側に労働時間を変更させる命令権があるかないかが大きく異なってしまうのです。
しかし、これでもまだ決定打にはなりません。
非常時だったからやむを得ない。どちらにせよ会社の都合で帰らせたのではない、という点で争いは残ります。

■本当に自然災害だけが原因だったのか、経営的な判断は入り込む余地はなかったのですか?

そこで、ここにもう1つ要素を加えてみましょうか。

例えば、お店屋さんの場合です。台風が接近していて、表通りを歩くのも困難な状態。いつもなら仕事帰りの人を狙ってタイムセールスなんかをやって最後の一稼ぎを狙っている時間ですが、今日はとてもそんなお客は見込めそうもありません。台風が来て大変とは言っても、ちゃんとしたテナントに入っていて建物は鉄筋コンクリート、滅多なことじゃ吹き飛びません。そもそもその地域は表を歩くのは、辛くはあるけれど、歩けない訳ではない、という状況です。
でも、客が来る見込は絶望的に低い・・・。
こういう時、店を開けていても仕方ないから、早く上がろうか、という事になりがちです。

さて、この時の「さて、早く上がろうか」は一体誰の責めに帰すべき事由による休業なのでしょうか?
半分は台風のためでしょう。でも、のこる半分は、会社としては開けててもコストがかかるばっかりだから閉店したい、という理由じゃないでしょうか。

こうなってくると、正々堂々「使用者の責めに帰すべき事由による休業ではない」とは言えなくなります。明らかに経費と売り上げという企業活動的理由が大きくのしかかってきます。こうなると、パートさんとしては「これは使用者の責めに帰すべき事由に基づく休業である」と争う余地が出てきてしまうのです。

■こうなったら白旗上げた方が楽ですよ

会社には労働時間を裁量的に変更する正統な権利があるとは認められず、さらに、早上がりそのものが不可抗力だけに基づかず、会社の経営的判断によっていた、という事になると、会社側はかなりピンチな状況になります。

実際、パートさんにここまで詰め寄られたら、もう面倒くさいから払っちゃえ、という対応が一番現実的なのかな、という気がしないでもないです。話し合いの時間がもったいないですよ。

■まとめと教訓を

ここで、まとめてみます。

一般的に、台風直撃で早じまいした場合の差額賃金は払われない。
しかし、労働時間変更命令の裁量権の確保が未整備である場合。かつ、早じまいの理由が経営的理由によるところが大きい場合。
こうした場合には、差額の賃金について、平均賃金の百分の六十相当以上の支払が必要になってくる可能性がある、という事です。

ここから得られる教訓は何でしょう。
まずは就業規則の整備です。たかだか始業・終業時刻の設定、と馬鹿にしていると、思わぬところで足下をすくわれます。就業規則では、いろいろな部分で会社に裁量権を与えておかないと後々大変な事に発展しかねない、という事があります。一度、その辺りも含めて見直してみるのも良いのではないでしょうか。

もう1つは、早じまいの理由を明らかにする、という事です。例え売れ行きが悪い事が予想されたとしても、パートさんがその時間まで働くという契約を結んでいる場合、差額の賃金をつけてあげるから早く上がるか、赤字の時間帯を覚悟して仕事をするか、という事を考えておく必要があります。また、そうした時に客観的に判断できるよう災害対策マニュアルのようなものを策定し、こうした危険があるから早く店を閉めます、とはっきり言い切れる規程を作っておく、というのも1つの案だと思います。

■最後に個人的な意見を述べさせて下さい

最後に私見を述べさせていただくならば、多少の損には目をつぶって賃金は払って上げた方が良いでしょう。少しは損しますが、その代わり社員は会社の事を好きになる可能性が高いです。そこまで行かなくても、持たなくても良い不満を持つことがない。これは「企業は人なり」という格言を考えれば安い投資ではないでしょうか。

会社にとって悲劇なのは、良い社員がどんどん流出して言ってしまうということだと思います。

「人は城 人は石垣 人は堀. なさけは味方」
武田信玄先生もそうおっしゃっていることですし、ね。

年金もらえる歳まで、希望すれば例外なく雇用継続しなければならなくなる?

2011-09-13

高齢化社会というものが着々と進行しているようでありまして。

とうとう来るべき次の時代が幕を開けそうな様子なのであります。

 

 

■高年齢者雇用安定法による高年齢者雇用確保措置の選別基準撤廃へ

希望者全員、65歳まで雇用へ 継続の選別基準撤廃 – 47NEWS(よんななニュース)

 厚生労働省は12日、高年齢者雇用安定法を改正し、労使合意の上で65歳までの継続雇用者を選別できる「基準制度」を撤廃する方針を固めた。年金の受給開始年齢が段階的に65歳まで引き上げられることを受け、希望者全員が例外なく、受給開始まで仕事を続けられるようにする考え。

厚生労働省のページはこちら
職業安定分科会雇用対策基本問題部会審議会資料|厚生労働省

これまでは定年延長も、事業主側で客観的な基準を設けておく事で、全員を延長する必要はなかったのでありますが、これからは、どうやら希望したら全員を延長しなければならなくなるようです。

大きな会社は何とかなるにせよ、中小企業にとってはかなり痛いのではないでしょうか。

 

■世代間ギャップの問題と賃金体系

現状でもノンワーキング・リッチと呼ばれる高給を食む中高年者と、ワーキング・プアな若年層との世代間格差が言われており、その問題の一つに、上のポストが空かないからいつまでも若者は下層に甘んじている、というものがあります。

必ずしもそれだけが原因とは思いませんが、実際、いびつな人口構成が続く今後を考えると、大きな問題ではあります。もう定年でいなくなる、と想定していた人達が、やっぱり残ります、となると、当然新規採用は抑制されてしまう訳ですから、失業率にも影響してくるでしょう。

 

また、実際に提供している労働の価値と報酬との乖離の意味も大きくなるように思います。若年時に貯蓄をして、高齢時にその貯金をおろすというサラリーマンの収入構造を本格的に変革しなければ、日本の雇用制度が大変な事になってしまうように思えてなりません。

また、年功序列が崩れたとは言いながら、やはり年齢の高い方はそれなりの地位にあるもので、日本人の文化的にも、仮に地位が低くとも、年長者を無下に扱う事も難しいということもあり、結局、稼働能力そのものに見あっていないポジションをもらっている人が相当数いるのではないかという懸念がより大きくなります。

 

■その事はひいては日本の経済力に影を落とす

この事は、単に世代間格差の問題だけにとどまらず、日本の生産力の低下に直結している問題なのだと思っています。中国に抜かれたとはいえ、日本はまだまだ経済大国、などというのはお為ごかし。すでに一人当たりの生産性は先進国の中では最低レベルにあります。働きバチと呼ばれ、現代でもサービス残業、無償の休日出勤、持ち帰り残業などのカウントされていない時間外労働が相当レベルで横行している中でのこの生産性の低さは絶望的とも思えます。中国をして人海戦術の国と嘲笑していたのも今は昔。現在では、低い生産性を多量の人口で補っているのは正に日本なのです。

 

今の日本の問題点のほとんど全てがこの低生産性にあるのではないかとすら思っています。歳を召した方は、それだけの経験と知識が蓄えられている事は間違いないと思います。ただ、実際に行動する力は残念ながら衰えるものです。であれば、高年齢時の賃金は、論功行賞的な事を一切排除して、持てる知識と経験に基づき、それを如何に現場に落とし込めるのか、という一点のみで評価されるようになるべきなのかも知れません。そして、その事は、一人高年齢者に当てはまる事ではなく、若年者にも当てはまる事です。

 

■いまこそ賃金制度

畢竟、日本人は個人の能力で勝負した賃金というものから逃げすぎているのではないでしょうか。労働の価値に見あった賃金制度。これこそが今の日本に求められている事なのだと思います。

 

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